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澄み渡る空に僕と彼女が目指すものー邂逅篇ー  作者: 小鳥遊箕生


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僕と彼女と冷たい器Ⅲ

そういえば、まひるさんが入っていた容器のある部屋から水晶を使って逃げ出した時も研究員たちを見ていない。言われるがままに逃げていたけど、僕たちは何から逃げていたのか。十四郎さんが僕たちを利用しようと企んでいたら、久坂さん以外にも人を使って捕まえに来てもいいはずだ。

目が覚めて瓦礫の中から他の”生存者”を探し出すことはもう本能で不可能だと感じていたし、腕の輪っかが変に光りだすまで、希世とともに行動することに違和感を感じなくなっていた。

僕は改めて、腕の輪っかをまじまじと見てみた。変わらず黒く鈍く光るばかりで緊急時の時の緊迫感がいつ来るか分からない不安がふつふつとわき始める。

「なァ航大、俺だけの考えじゃなく他の奴らはどう思ってんのか聞きてェんだが」

「それもそうだね、希世と僕はここに生きるすべての人が生き延びられるように行動を考えたい。まひるさんはどうかな?」

「ボクは基本的に、平和主義者でダサイ争いごと嫌だから、どっちかって言うと藍澤寄りかな」

「うん、分かった。ヨーコさんのご意見も聞いていいですか?」

「アタシ?…そうねえ…アタシはここにいる皆で決めたことなら異論はないけど、あえて自分の意見として出すなら衣食住に関わるすべての問題をここにいるメンバーだけでは決められないと思うのよね。それこそ国の機関とか。まあ緊急事態でまともに機能しているかは分からないけど」

「確かに、それは僕も同意見です。一個でも糸口が見つかればいいんですが…」

そこで希世があることを言い出した。

「さっき父に言っていた部屋は何があるの?久坂、」

十四郎さんが怯え始めたきっかけの話は気にはなっていたものの、触れていいか分からずにいた。希世が聞いてくれたことでこれからの議題のヒントを得ようと皆が久坂さんの方を向いた。

壁に背中を預けたまま項垂れていた久坂さんはこちらを一瞥すると、軽く左右に首を振りながら答えた。

「私の復讐を邪魔したあなたたちが何故そこを気にするんですか?」

「これから何人も生き残ろうとするのに何かヒントがあるんじゃないかと思ったの。答えて」

短くため息を吐くと、久坂さんは口角をわざと上げて吐き捨てた。

「私の情報をそんな簡単に教えるわけないでしょう。」

「琉さん!どうしてもダメなの?」

「まひるさんを使っても駄目です。私にはこの男が破滅すれば後のことはどうにでもなれと思っていますので」

「チっダメか~」

口を尖らせた後、まひるさんは顔の前で手を合わせて希世の方に謝る仕草を見せた。

それを見て僕はあることを閃いた。

「久坂さん、僕が腕に付けているこれ、その部屋で使う物じゃないですか?」

「!?…どうしてそう思うんです?」

「僕がここに来たのは希世の後ろをついてきただけでしたけど、僕じゃなくこの腕の輪っかが目的だとしたら納得がいくんです」

「もしそうだとしたら奪うまで。でもそうしなかったのは…」

希世が僕の腕を取りながら久坂さんの方を向いて確信めいた瞳を少し揺らせながら問いた。

「僕自身が発動させるきっかけ、違いますか?」

掛けていた眼鏡を一度光らせると、久坂さんは再び左右に首を振る。

「どこまで分かって言ってるんだか…」

ずっと黙っていた十四郎さんがボソリと言った次の言葉で僕の不安は的中した。


「久坂、あの部屋の鍵はマスターキーでしか開かない。開けるには腕輪のことを話さねばなるまいよ」

「私は別に話したところで特に支障は無いですが、復讐の邪魔をされるのは勘弁願いたいですね」


「もう…今更あがいたところで何も変わりはしない。いいだろう、あの部屋へはいつか行ける日が来るだろうと。それがいつなのかようやく決断する日が来たようだ。」

「ちょっと、ふらついたまま動くの危ないわよ!」

ヨーコさんは立ちあがる十四郎さんの腕を支えつつ、隆大くんにも腕を持つように合図した。

「ここにいる人全員が生き続けるのは理論上、不可能だ。私が設計したシステムではとうに”生存者の定数”を超えている。」

「”生存者の定数”ってなにそれ…もうみんな助からないってこと!?」

まひるさんが大きな眼鏡を掛けなおしながら、十四郎さんの言葉の続きを促した。


「私たちが理想として作ってきた世界は、有ることを目的にしていました。復讐を決行することを察してから、ある部屋にある存在を隠したと知ったんです。」

久坂さんが再び話し始めて、十四郎さんが僕の腕の輪っかを指で指し示した。

「ここの通りを進むと右手側にそれる中庭がある。その中庭の小さな噴水の手前に三角の水晶が並んでいる。そこにこれを翳してみろ。」

「それをするとどうなるんですか…」

「私が一緒に行くことを条件でなら、教えますが」

またニヤリと久坂さんが意味ありげに笑った。

「行きましょう、何か手掛かりがあるならどんなものでもあっていい。」

「希世は止めておいた方がいいのでは?」

「久坂…どうして」

「希世が行きたいなら僕は一緒にいてくれた方が心強いけど、希世が居てはダメなんですか?」

ふふ、と苦笑しながら久坂さんは中庭がある方へ歩き出した。

「…私は、皆で生き残るすべが知りたい。たとえ何があっても」

 希世の強い信念が僕の心に自信を持たせてくれた。それでもこの時に止めておけばよかったんだ。今になってそう考えても、もう遅い。



 分かれた道から伸びる中庭中央へは白い石畳となっていて、そこを僕たちは進んでいった。三角の水晶が三つ、高さの違う台座に乗せられている。そこへ着いてすぐ、僕は自分の腕の輪っかを順番に翳していった。

「翳す順番はありません。タイミングさえあえば」

ゴゴゴゴゴゴ………

轟音とともに噴水の水があふれ出して、目の前が水浸しになった。噴水が真ん中で割れて、透明な扉が現れる。透明なのに、向こう側の景色が見えない。むしろ鏡のように僕たちの姿を映している。不思議な扉になかなか触れるのは怖くて、息をのんだ。

「航大くん、腕輪の何か反応は?」

「今はなにも…久坂さん、この扉を開けるのはどうしたら?」

「一定時間を過ぎるとタッチスクリーンが出てくるのでそこにまた腕輪を翳してください」

「なーんか怪しいよねぇ造りがチープというか」

まひるさんがまた眼鏡を掛けなおして、近くに寄ろうとする。

「まひるさん!それ以上進まないで!」

それまで淡々と話していた久坂さんがまひるさんの腕を掴んで引き留めた。


ピィーー――――――――

【部外者探知システムが作動しました!詳細を確認しております】


けたたましいアラームが鳴った。

「うわ、やっぱりこの音苦手だ~」

「オレはもう慣れてきちまいそうだァ」

隆大くんが十四郎さんを支えつつ、苦笑いした。


【噴水付近でマスターキーシグナル検知、探知システム終了します】


「航大くん以外が先に進もうとそばに行くとセキュリティが作動するようになっているんです」

「それ先に言ってよー」

「言う前に貴方が先に動いたのではないですか」

「まぁ引っ張ってくれたしいっか!」

「…まったく。あなたは付いて来ないでほしかったですよ」

「ボクが居なくても特段困るってことは無いにしても、航大くんや希世ちゃんのそばに居たいんだよね」

久坂さんがまひるさんの見つめる瞳から視線を外れた時に、今までにない反応が頭に響いてきた。

「いた、痛い…」

「航大くん…?」

希世の呼ぶ声が遠のく意識にぼんやりと広がる。

「航大!!」

隆大くんの声もする。そこで僕の意識が途切れた。

























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