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澄み渡る空に僕と彼女が目指すものー邂逅篇ー  作者: 小鳥遊箕生


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僕と彼女と冷たい器Ⅰ

つい勢いで、というのは誰しも経験があると思う。

例えば思ってもないことを口が勝手に言葉にしてしまったり、それがそのまま売り言葉に買い言葉でもしかしたら言い争いの火種になる場合だってある。

だから僕もその『つい勢いで、』十四郎さんを引っ掴んでヨーコさんのいる方へ投げ飛ばした。すると胸倉に手をやっていた久坂さんも遠心力で隆大くんへダイブしてしまった。

「航大!!いきなり何すんだァ!!」

隆大くんの驚きの言葉はもちろん大声がその場にいる全員の耳をキーンとさせた。

「航大くんナイス!!」

ノリのいいまひるさんはさっきの暗い笑みが消えて満面の笑みで親指をぐっと突き出してきた。

「隆大くんそのまま久坂さん押さえこんどいて!」

「はァ!?」

「ヨーコさん!その扉から十四郎さん連れて出てください!!」

「航大くん…!!」

ずっと立ちすくんだままだった希世は僕と目を一瞬交わしながら、部屋の外へ連れていかれる十四郎さんの腕を取って一緒に扉へ駆けていく。

「アタシ、ヒール高めなんですけど!?」

「ヨーコさんごめんなさい!とにかく出て!」

文句を言いつつも足取り軽やかにヨーコさんは十四郎さんの腕を自分の肩に回しながら白い廊下へと出た。扉を開け放したまま久坂さんと十四郎さんとの距離を取るように隆大くんはヨーコさんと視線だけで会話した。

「航大たまに無茶するし言うよなァ!?」

「ちょ、離しなさい!」

久坂さんは隆大くんに腕を背にまとめられて身動きが取れない。

「そうでもしないと久坂さん、アレなことやりかねないから…」

「馬鹿力な藍澤くんに私を締め上げさせておいて、あなたは何をするつもりですか?」

久坂さんが息苦しそうに問いかける。『つい勢いで、』やってしまったことには僕自身も驚いていた。

まさか思い付きで行動した分この後のことをどうしようか本気で悩んでいるとは言い出せない雰囲気だ。

「希世、どうしよう」

「そこで私に聞くの…!?」

「十四郎さんをヨーコさんに守ってもらうとしか…」

「君は行動力あるんだか無いんだか分からないわね、」

「はは、僕もそう思う」

久々に希世の困り笑いを見た気がする。それに僕は少し安心した。


 そうして希世は僕だけにしか聞こえない声で囁いた。

「まひるさんがどうして研究員と組めたのか、君は分かる?」

「それがさっきいい考えがあるとか言った後だったから、僕も隆大くんも動揺しちゃってさ」

「あれは恐らくブラフよ」

「ブラフ?」

「見せかけのはったりってこと。」

「嘘ってこと!?」

「シッ声が大きいわ抑えて!」

「ご、ごめん」

「あの大きな眼鏡には何も仕掛けられてないし、盗聴先の相手なんていないわ」

「どうして希世はわかるの?」

「ここの研究室の地下で会った時まひるさん言っていたこと覚えてる?」

「えー…と、確か…」


僕はまひるさんと会った時のことを脳内で思い返してみた。

まひるさんは三人の白衣着たやつら、と言っていた。

「もし知り合いで何らかの関係を持っているならそんな情報言わないはずだもの。言ったとしても私たちの方が明らかに侵入者扱いだし、助けなんて求めないと思うの」

「確かに…?」

「何か利点があるとすれば、自分が捕まっている状況を打破するために仲間だと申し出る。後からどちらに付くかを決める。そんな狡いこと、あの子はしないと思うわ」

「そうだね、むしろ嫌がりそう」

「私のあくまで推測の域を出ない話ではあるけどね。…航大くん、ここまで付き合わせてごめんなさい」

「いいよ、むしろ僕は感謝してる。目覚めたときに希世が居たからここにいられるんだと思うし。」

「…ありがとう。一つ疑わざるを得ないのだけど、久坂はそれに気づかない男じゃないわ」

「わざと嘘に乗っかったってこと?ブラフ?とかいう」

「それほどまひるさんに気持ちが寄っているのかもしれないわね」


僕と希世が話している間、隆大くんは締め上げている手を緩めることなく頑張っていたが、そろそろ持続が難しくなってきていた。

「航大、どうする?」

「ありがとう隆大くん!もう少しだけお願いできる?」

「分かった、なるべく急いでくれェ」

「ちょっとアタシには聞かないの~?」

ヨーコさんは余裕そうに肩に回した腕をがっしり掴んで十四郎さんを支えてくれていた。

「ありがとうございます!あと少しお願いします」

ヨーコさんはわざとらしい大きなウィンクで返してくれた。

僕はようやく次に何をすればいいのか分かった気がした。


「ここに捕まっている人たち全員の解放、十四郎さんにはその指揮をとってもらいます。」

「無駄ですよこの人に最後までついて行けるのは私しかいないんですから。いつも置いてけぼりを食わされる羽目になると分かっていて話しかけてくる連中じゃありません。誰も聞いてはくれませんよ」

「だからこそです。十四郎さんが辞めるといわない限り研究は続くんでしょう?止める誰かを希世は探して、そうして僕たちはここへ来たんです。僕たちがここに来たのは誰も悲しむ状況など望んでいないってことを伝えに。これまでの人もこれから生きていかなければならない人もみんなが望む未来を考えに。一緒に。」


強く頷きながら希世は思わず零れる雫をぬぐい損ねた。


























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