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澄み渡る空に僕と彼女が目指すものー邂逅篇ー  作者: 小鳥遊箕生


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僕と彼女と来訪者Ⅱ

僕が希世に出来ることはどんなことだろうか?

改めて心の中で考えてみても、具体的にできることは限られてくる。

そんなことは既に百も承知な訳で。


ふと隆大たかひろくんがヨーコさんの腕から逃れつつ僕に耳打ちしてきた。

航大こうだい、今のうちにここにいる奴らは放っておいて希世連れて捕まってるやつが居ないか確かめに行かねェか」

「うん、僕もそうしたい…でも久坂さんを置いて行ってはいけない気がするんだよね」

「ねえ、ボクに提案があるんだけど…ノってみる気はある?」

「まひるさん?どんな提案か気になるけど物凄く嫌な予感もする…!!」

大きな眼鏡を得意げに掛けなおしながら、まひるさんはニヒヒと笑った。


「はーい、怖ーい顔してる大人たちにボクから重大発表がありまーす!」

床に項垂れている十四郎さんはそのままに、USBを持っている久坂さんの肩がビクリとする。なかなかの声量で後ろから声を掛けられれば誰だってそうなるだろう。

 久坂さんはまひるさんと何か話をしていたあの時、詳しくは聞けていないけど、確実に久坂さんの穏やかな表情を導き出したのはまひるさんとの会話だったと思う。

「あなたは人を驚かせる天才のようですね…」

「まあね!褒められても何も出ないよ!」

胸を張って堂々と発した言葉は塊となって久坂さんの頭を小突いたように見える。

「嫌味のつもりだったんですが…」

はぁとため息をつきながら久坂さんはまひるさんの提案を聞く姿勢に入った。


「希世ちんのお父さんがやりたかったことはひとまず置いといて―」

「置いておけるものではないんですよ、げんにあなただって…」

「うんそう、でも一旦ボクが思うに…ここに連れてこられたボクと優太くんは連れられてきたのは覚えてるんだけど、誰にここまで連れられてきたかまでは分からないんだよね。」

「おい、そりゃァ俺だって…」

隆大くんも口を挟もうと言葉を探しながら頭に手を当てて考え始めた。

「ここにいるメンバーが白衣着た人たちに何もされてない保証はないのかなーってさ」


「私の所属している部署の研究開発チームは父の研究を引き継いだ優秀なメンバーばかりですが…私と齋田のことは何一つ知りませんよ」

「そうなんだ?じゃあ特に邪魔してくる人間はいないってことだね」

「おそらく、君が何を企んでいるのか分かりましたよ」

「えーまだ何も言ってないよー?」

はぁ、とまた大きく息を吐くと久坂さんは急にまひるさんの耳に手を掛けた。

「この眼鏡の接続部の小型カメラ、どこかで誰かが見ているのでしょう。おおかた、私の同僚かその全員が」

「ちぇ、バレたか」

「…まひるさん?」

ここの研究施設に来て、まひるさんと初めて会った時からしていた大きな眼鏡に小型カメラが付いていたなんて。ということは…?


「変な実験に巻き込まれるのはごめんだったし、なんとか切り抜けられないかーって思いついたのは研究者側に回ること。それが最善かなって」


「待ってよまひるさん…それじゃ僕たちどうしてここまで一緒に…」

「生存者、たった五人でここまで壊れた世界で生きていけるほど甘くないよ。だからボクは生きるための方法を選んだ。それだけ」


さっきまで頼りがいのある表情だったはずのまひるさんが見たことのない暗い笑みを浮かべながら、大きな眼鏡を外すと小さな部品に話しかけ始めた。

「ねーここまででいいよね?ボクもう疲れた~」


どこから信じていいのかこれもまひるさんの作戦のうちなのか分からないまま僕は隆大くんと目線を交わして首を傾げた。


「あなたがここの研究員と手を組んだところで、特になんの障害にもなりはしません。ただ、父との思い出を聞かせてくれたお礼に教えましょう。」

久坂さんは十四郎さんのうなだれている横の棚からあるファイルを一冊取り出した。


「ここに連れてこられた少年少女のデータが綴じられています。これには東島くんのデータはありませんでした。綴じる必要が無かったのか不明ですが、不思議なことに彼の手首にはめられているのは施設内のロックを解除できる仕様のもの。いったい誰が渡したのか何のために利用しているのか…まあそれは追々希世が話してくれることでしょう」

 僕も知りたかった。記憶が曖昧だという理由だけでここまで来てみたものの、僕がこの手首の輪っかを何故持っていたのかまだわからない。

「あの、久坂さん」

「私はこの男に父が殺されたと憎み続けてきたんです。それを誰かに言いたかっただけなのかもしれません」

「久坂さんのお父さん、久坂さんに似てますか?」

僕が投げかけた疑問は、その場にいた全員をキョトンとさせた。

「東島航大くんなぜそれを…今このタイミングで?」

「僕、親の記憶も曖昧で…久坂さんのお父さんはどんな人だったのかなって単純に気になって」

ド直球に聞いたからか目を大きく開いたまま久坂さんはふと考えた。

「似ていた…かどうかは分かりません、」

ぽつりと脳裏に浮かぶのは優しく微笑みながらこちらを振り向く父の姿。手を伸ばすにはあまりにも距離が離れていて、もどかしく行き場を失った手。

今、その手に持つのは父の仇である齋田十四郎を失墜させるデータが入ったUSB。

長年努めてきたのはこの時のためだと決意を固め、座り込む十四郎の胸倉を掴んで立たせると、言葉を吐き捨てた。

「あの場所へ行きましょう。いつまでも座り込んでいられては困ります」

「離しなさい、あそこへは行かない…!!」

震えた声で十四郎さんはその場に留まろうとするが、久坂さんの腕力は意外にも強かった。
























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