僕と彼女と親友Ⅱ
携帯電話に気づかれて何とか会話ができたもののやっぱり難しいよなぁ…と少し思い悩み始めたころ、藍澤くんがいた場所に希世が震える足で近づいてきて僕の腕の輪っかに触れた。
「久坂、」
か細い声で、でもしっかりとした目つきで僕をチラリと見てから少し頷いて、声を発した。僕は頷き返してその勇気を見守る。
「父さんに繋げて、」
『何をするおつもりですか?』
「これ以上人を巻き込んだ研究は止めさせるの」
『あなたにそれができると?』
「…分からない。でも話がしたいの」
『何も手立てがない状況であなたには不可能だと思いますが、』
「腐っても親子だわ、話を聞かないなら航大くんは渡さない」
…どうして僕がそこに出るんだ?
『汚い手に出ましたね』
「どっちが。そこの彼女たちにも指一本触れないこと、それが私の戻る条件よ」
大きなため息が通話越しに聞こえる。
「希世…」
僕は思わず震える希世の名前を呼んでいた。
こちらを見る希世には少し笑みすら浮かんでいた。
『私が、あなたに期待することはありません』
「おあいにく様、私もよ」
プツ、と切られた。いやむしろ切ってやったみたいだ。
「航大くん、私がチームになろうって言ったのはあなたを利用しようというヤツから掻っ攫うため。そのヤツに会いに行くわ」
「希世の親父さんだな、大丈夫なのか?」
藍澤くんは喫茶店の方を気にしながらも、希世にさらっと聞く。
「街をここまで滅茶苦茶にしたかもしれないのよ。私はその父の娘として理由を問う責任があると思う」
「ちょっと聞いてもいいかな、僕は希世のお父さんにとっての何かの材料なの?」
「…何度も理由を話すタイミングを失ってたわね。ごめんなさい」
「俺の弟もろとも連れ出されたのも理由があんだろォ?」
「えぇ、それもまとめて父から聞き出しましょう。詳しいこと聞けるのは確か会議のないはずだから明日ね」
「じゃあ明日会いに行くことにして…ひとまずまひるさんたちを久坂さんから引き離さないと。行こうか、」
「えぇ、」
「優太、目が覚めたのか!?」
少しずつ歩いて喫茶店へ近づいていくと、割れた窓と破れてしまって役目を失っているカーテンの隙間からかすかに見えるまひるさんの後ろにサラサラの色素薄目な髪がひょこりと動いている。
「久坂は気づいてないのかしら、」
「気づいてたら何かしらのアクションはあるかも、だけど」
もしかしたらまひるさん優太くんを逃がそうとしてるきっかけを探そうとしているのかも!
声を掛けるか迷っていると、中で話し声が聞こえて耳を澄ましてみた。




