僕と彼女と親友Ⅰ
いきなり携帯が喫茶店の外から投げ込まれた。
その音で我に返ったのか、琉さんはやや下にずれた眼鏡を掛けなおした。
「この携帯は誰のものか分かりますか?」
「し、知らない」
白衣のポケットから小さめなタブレットを取り出し操作すると、投げ入れられた携帯を見比べたあと耳元へ寄せた。
「もしもし、近くにいるのは分かっています。東島航大くん出て来なさい」
え!?あの携帯?!何で投げてきた…?どういうことか分かんないけど三人が戻ってきたんだ!ん?でも待って何で本人じゃなくて携帯なの?
『まさか喫茶店の中に入るとは思いませんでした!』
航大君の声だ!
「何のつもりです?」
『二人とも無事ですか!?』
「今まひるさんと話をしていました。なかなか充実した時間でしたよ」
さっきまで琉さんを包んでいた暗くて悲しい空気が消えた。
かみ合っているようなそうでないような会話が目の前で繰り広げられる。もしかしたら優太くんを逃がすチャンスがあるかもしれない。
『話がしたいんです、希世のお父さんと』
「正気ですか」
『僕は希世に見つけてもらえて、こうしてみんなと話せている』
「無駄ですよ、あの方には何を伝えようとご自身の研究に妥協はしない」
『何を研究しているかなんて僕には分かりません。ぶっちゃけどうでも良かったはずなんですけどね!でも希世が声を掛けてくれた事には感謝してるんです。』
「それを聞いて私が何か手を貸すと思ってるんですか」
『ヨーコ…葉介さんがアンタに用があるって』
微かに聞こえる声で今度は藍澤に代わったみたいだ。三人とも近くにいるのかな?
「…誰ですか?」
一瞬黙った後、琉さんは冷ややかな視線を下げながらこらえるように拳を胸のあたりに寄せる。
『アンタの元カレだってよ。』
「私はノーマルです」
『そんなん言い出した本人に言ェよ』
「知りませんよ、誰ですか」
手にしている携帯に向かって段々と声が大きくなる。
ボクがどうにかスキを作れたらいいんだけど今はなにも…
「…おねえさん、だれ?」
後ろから服の裾が軽く引っ張られる。まさかの優太くん起床―――――!!
でも琉さんは優太くんが目覚めたことに気づいてない。
こういう時ってチャンス到来っていうんだよね…?




