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僕と彼女と懐かしき日々Ⅰ

「酷いですね、そんなに避けなくても」

僕の後ろに隠れた希世はいつもの冷静さを欠いていた。強く僕の服の裾を握りしめて、細い眼鏡を光らせた白衣の男の視線から逃げている。

「あのー、どなたですか?」

「名乗るほどの者ではありませんよ」

「うざってエ、さっさと名乗れや」

完全威嚇の藍澤くんに少しビビりながら白衣の男の方を見ると、男は眼鏡をくいと掛けなおしつつニヤリと笑った。気持ち悪い!おっと本音が!

「あなたを連れ戻しに来ましたよ、希世」

「!!」

「あなたがいなければ齋田主任が困ります。勝手な行動は控えてもらえると嬉しいのですが。さあ帰りましょう」

希世の怯えように藍澤くんも何か察知したみたいに僕ごと希世を背後へ寄せた。

「俺たちのこと監視してたのかァ」

「勿論ですよ藍澤隆大くん。」

「…チッ…気色悪ィ…」

ずっと粘着質な声でねっとり話す男は僕を一瞥した。

「君は東島航大くん…ですね?」

「えと、はいそうなんですけど…」

チラリと藍澤くんの方を見てみると、はち切れそうな怒気を孕んでいるのが分かる。

どうにかしてこの場を離れないと!…でもどうすれば!?

「失礼します!!」

パチンっ…

「っ!!」

白衣の男が突然のフェイントにたじろいだ瞬間を作る。その方法はこれしかないと思った。

秘技、猫だまし!!(ただ手のひらを短く相手の目の前で叩いただけ)強く掴まれた服の裾から希世の気持ちが伝わってくる分、僕の神経も張り詰める。

「行くよ!希世」

「…、」

短く頷いた希世の弱弱しい手を握り返しながら、藍澤くんの家の方向へ走る。察してくれた藍澤くんがほぼ同時に走り出す。

「大丈夫か、抱えんぞ」

太い腕が僕と反対の方の腕を取ると、希世を肩に担いだ。そのままスピードを緩めることなく、藍澤くんが前に出る。

逃げても無駄なのかもしれないけど、希世の様子が変だ。それをとにかく何とかしないと!


「逃げられちゃいました、なんて報告したらどう言われてしまうか…」

標的たちが逃げて行った方向を見つめながら、深いため息をつく。そんな余裕さえないのは本人が一番わかっているのだが。

白衣のポケットに入っている端末を取り出し、内線を飛ばす。

「久坂です。取り逃がしました」

『見ていたよ。まんまと騙されたな』

「すみません。後を追います」

怒られはしなかったが声のトーンが低かった。ブツリと切られた端末を元のポケットにしまう。彼らが行った方向を見ながら進む。途中、辺りの瓦礫は進む道を邪魔して、引っかかった白衣の裾が切れてしまっている。





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