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わたしの可愛い悪役令嬢  作者: くん
83/97

83・対峙

 結局杞憂に終わったサイモンとの邂逅だったけどそれなりに収穫もあった気がする。




 ランディスには大切な友達が出来たし、アイラはサイモンと婚約しなければ断罪はなさそうだし……まぁ婚約なんてさせませんけどね。

 しかもランディスのついでではあるけどわたしも友達認定してもらってしまった。お陰で今後のサイモンの動向だって自然に確認が出来る状況になったのはとてもラッキーな事だ。



 アイラと出会ってから友達も増えたなぁ。まぁ一部は自称『弟子』ではあるけれど。

 それでも、今までの生活を考えたら凄い進歩だよね。以前は引きこもっていたから友達はセルシュだけだったんだもん。わたしも少しは貴族の子息らしくなってきてるかなぁ。なってるといいなぁ。




 このままいけば、アイラの事をわたしは断罪なんて絶対しないだろう。モーリタスとサイモンだってそんな事しないと思う。もしそんな気配が少しでもあれば出来る限りの知恵と知識を総動員して叩き潰すだけの事だ。

 仲良くなってみると二人ともいい子だし、このまま大人になってくれるなら今のところゲームの様な展開にはならないだろう。これから先、わたしがそっちに流れない様に監視をすれば未来はそんなに悪くない方向に向かえそうだよね。

 今のうちに将来への布石を投じればなんとかなる様な気がしている。明るい未来っていいよね。



 今わたしが一番望むのはアイラもわたしも長生きして幸せになる事かな。頑張って米寿のお祝いとか出来るといいなぁ。そんなのこの世界にはないけどさ。

 その時横にアイラがいたら本当に嬉しいんだけど。こればっかりは父上次第だからなぁ。

 父上にアイラの事を話しはしたけど、それがいい事だったか悪い事だったかわたしにはわからない。

 悪い事ならいい方に意地でも持っていく覚悟はあるんだけど。ただ、今のわたしはまだ子供で出来る事が限られている。それでも出来る限りの努力はするつもりだし、いざとなればそれなりに画策だってするだろう。




 ……なんて。今そんな事をたらたら考えても仕方がないんだけどさ。





 今わたしの目の前ではなんでかセルシュとサイモンが睨み合っているのですよ。

 なんなんですかね、これ。



 セルシュが急に我が家に来るのは通常営業なんだけど、今日は何故かサイモンまで急にやって来た。そこまではいいの、そこまでは。

 ただ、二人は知り合いらしくて何故かさっきから見えない火花がバッチバチなんですよねー。




 そんな中でわたしが現実逃避してもバチは当たらないと思うんだ。




「何でお前がこいつと知り合いなんだよ」

「だから言ったじゃない。元々はランディスの友達で僕も友達になったんだってば」

「クルーディスはセルシュ・ロンディールと仲がいいの?」

「そうですよサイモン。幼馴染みで小さい頃からずっと友達なんですよ」

 いやだからさ。こっちとしてはあんた達が啀み合ってる事の方がよっぽど気になるんだけど。ピリピリしたオーラが部屋の隅々まで充満している気がするよ。

 しかもさ、二人とも爵位とか身分とか振りかざす人が嫌いって考え方は同じなんでしょ?何で考え方は同じなのにこんなに仲が悪いんだろう。

「二人は何でそんなにお互いに嫌がってんの?」

 二人が落ち着くまで聞くのは待とうかと思ったけど歩み寄る気配が全くないんだもん。いい加減聞いてもいいよね。

「昔からこいつは自分の肩書きと容姿を楯に胡散臭い笑顔を振り撒いて、人の事見下す様な奴なんだぞ!」

「へぇ、そういう事言うんだ?君こそ時々陰でこそこそしてるけど一体何をしているの?」

 お互いに感情をダイレクトにぶつけ合って歩み寄る気配が全くなさそうだ。

 ああもうキリがない。わたしは頭を抱えて大きくため息を吐いた。

「あのさ、二人とも……啀み合うためにうちに来たのなら帰ってくれるかな」

 もう気にするのも考えるのも面倒になってしまったわたしはこの啀み合いを終わりにして欲しくてそう提案した。

「何で俺が帰らなきゃなんねーんだよ」

「僕も帰らないよ」

 なんなの?なんの意地の張り合いなの?何だかんだでそっくりじゃない二人とも。

「……ここはエウレン家の屋敷です。こちらの方針に従わないなら帰ってもらいます」

「方針?」

 わたしがため息混じりに呟くと二人は怪訝な顔をしてこっちを見た。

「啀み合いは嫌いです。今すぐそれを止めないならシュラフに二人を摘まみ出してもらいます」

 その言葉を言い終わらないうちにシュラフはさりげなく二人の間合いに詰め寄った。

 笑顔で二人を見るシュラフは目が笑っていない。シュラフを知っているセルシュはもとより、初めて会ったサイモンですらシュラフの発するオーラに顔が引き攣っていた。

「うっ……わっ、わかった!こえーよシュラフ!もう止めるから!」

「……僕もわかったよ。もうしない」


 よし!

 渋々だけど了承したね?言質は取ったからね!

 わたしは二人に笑いかけて無理矢理座らせた。やっと落ち着いたところで、普段のにこやかな笑顔に戻ったシュラフがお茶を淹れてくれた。



 自宅で気疲れするなんて全く有り得ないんだけど。せめてお茶でも飲んでひと息入れさせて欲しい……。





読んでいただきましてありがとうございます。

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