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わたしの可愛い悪役令嬢  作者: くん
71/97

71・告白2(アイラヴェント視点11)

 帰る時、俺はうちの馬車に無理矢理クルーディスを乗せた。リーンフェルト様も笑顔で送り出してくれたので拒否権は与えなかった。




「さぁて、クルーディスの『言い訳』とやらを聞いてやろうじゃないか」




 あれは一体どういう事なのかちゃんと説明してもらわなきゃ怒りも治まらない。



 クルーディスがナンパをしたわけではないけれど、その事に関わっていたのがイヤだった。クルーディスも誰かに微笑みかけていたかもしれない。そう思うだけでも苦しくて辛かった。俺以外の誰かにクルーディスのあの笑顔が向けられるのがイヤだった。



「はい……あの、何処から話せばいいかな」

「最初から」

「う……わかりました」



 クルーディスは俺の怒りに怯みながらも最初から丁寧に説明してくれた。

 クルーディスはヒューレットとは初対面で、初めて会うヒューレットに自分を見下された事はそんなに気にしてはいなかったという。それよりもモーリタス達がバカにされた事に怒ったらしい。別室ではヒューレットが王子に説教され、セルシュ様に諭されたと言った。



 ヒューレットがそんな風になったのはクルーディスとばかり遊んでいるセルシュ様が自分から離れていった様で寂しかったからだったという。




 俺にはヒューレットの気持ちがわかってしまった。




 俺も今クルーディスが離れていってしまったら……。

 きっとヒューレットの様にとても辛いし苦しくなると思う。寂しくなってしまって、どうしていいのかわからなくなるだろう。

 だからってヒューレットの様にその相手に怒りをぶつけるなんて出来ないしする気もないけれど。




 その苦しい気持ちだけは理解できるよ。




「……あのさ、突っ込みどころ満載で何を言っていいのかわかんないんだけどさ」

「うん」

「その、『笑顔振り撒き作戦』だっけ?何でクルーディスがレクチャーする訳?」



 その後クルーディス達はヒューレットの噂を消すために『笑顔振り撒き作戦』をやろうとしたらしい。なんだよその作戦。

 やっぱりただのナンパじゃん!



「まぁ皆より女性の気持ちもわかるし……何か成りゆきで」



 ……まぁそうだろうけどさ。

 元々大人の女だった訳だし?こんな可愛い性格ならそれなりにモテてただろうし?別に俺とは友達な訳だし、クルーディス的にはそんな事気にもならないだろうけどさ。

 でもさ、俺的にはやっぱり気分はよくないよ。





 それにしても……噂を消すなら他にもいくらでもやりようがあったんじゃないか?結局ヒューレットはプレイボーイ的な事させられたんだよね?あいつそんな事よく出来たなぁ……実はそういうタイプとか?

 まぁ攻略対象なだけあって元々顔がいいしサマにはなるけどさ。何だかんだで最後の方は少しムカついたけど本人も楽しそうだったしな。



 でもクルーディスが本気で怒るのを初めて見たよ。怒った理由は本当にクルーディスらしい。そんなところが好きなんだよな。

 だから余計にあんなに揉めていたヒューレットとの関係が心配になる。



「……クルーディスはもうヒューレットとはわだかまりは無いんだね?」

「それはもう大丈夫だと思う。セルシュがヒューレットと仲良く出来てれば僕にはもう怒る事もないんじゃないのかな」

「そっか……ならもういいよ」




 クルーディスが大丈夫ならそれはもういい。あのナンパはあんまり気分のいいものではないし、ヒューレットの事だって関わらなければどうでもいいんだ。

 ただ俺はクルーディスが心配で仕方がなかったんだから。



「でもすっごい心配したんだからな!ヒューレットは真っ赤になって怒ってるし、クルーディスはキレちゃってるし!」

「う……ごめんなさい。あの時はほんとに頭にきちゃって……」

 俺が怒るとクルーディスはしゅんとして謝った。うん。悪いと思っている気持ちもちゃんとわかったよ。

「……クルーディスが怒った気持ちはわかったから。……もうこんな事するなよ。本当に心配したんだからな」

 俺はクルーディスの手を握りしめて自分の胸元に寄せた。クルーディスがちゃんとここにいる事を確認したかった。




 俺はこの手が好きだった。

 この手で俺に触れてもらうと温かい気持ちになる。その時のクルーディスの幸せそうな顔を思い出すと俺も一緒に幸せな気持ちになるんだよ。




 どうしよう。もっとクルーディスに触れたい。触れてもいいかな。




「……ぎゅってしていい?」




 気持ちが溢れてどうしようもなかった。

 俺はクルーディスの返事も聞かずにクルーディスを抱きしめた。クルーディスは俺にされるまま動かなかった。

 あれ?ちょっとクルーディス!?イヤだったらちゃんと断ってくれよ!何でイヤがらないの?断ってくれないと困るよ。



 ちょっとだけ……期待しちゃうじゃない。




「今日さ…俺多分ずっと嫉妬してたんだ」

「しっと?」




 クルーディスは何を言われてるかわかんないよね。

 嫌がられて、避けられるかもしれない。もううちにも来てくれないかもしれない。

 それでも今クルーディスに伝えたかった。気持ちを知ってもらいたかった。



 俺は泣きそうになっている自分の顔を見られたくなくて、クルーディスがどんな顔をしてるのか知るのが怖くて、抱きしめたまま話を続けた。

「俺は前の人生は男で、今は女の子で、しかもあのゲームの悪役令嬢のアイラヴェントで……」

 クルーディスには俺の緊張がわかるのか、宥める様に俺の背中を優しくさすってくれる。

 こんな時も優しいな。その優しさがとても嬉しい。




「色々中途半端なんだけど……」

「うん」

「俺きっとクルーディスの事が好きなんだ。だからずっと一緒にいたい」




 うわっ!言っちゃった!言ってしまった!

 クルーディスが驚いてこっちを見たけど、顔を見られるのが恥ずかしくて俺は慌ててそれを押し退けた。

「うわっ!こっち見んな!」

「ぶっ!」

 勢いよく押してしまったので俺の手はクルーディスの顔面に思いきり当たってしまった。しまった!やっちゃった!

 でも慌てる俺にクルーディスは大丈夫だと言ってくれた。痛かったよね、本当にごめん。







読んでいただきましてありがとうございます。



次回の更新は4月1日になります。

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