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ドラゴン討伐してみた。

盗賊トリオに目を向けると『リザルト画面』という表示が現れた。少しばかりのお金とアイテムが入手できたらしい。まあこれ以上ここにいてもどうしようもないので、次の目的地を目指すことにする。んだけど・・・

「ところで、街に行きたいんだけどどうすればいいかしら?」

と唯一訊ける相手に問いてみるも

「ごめんなさい。ぼく、この辺は詳しくなくって」

さっき助けた子は恐る恐る呟いた。

改めて見ると、綺麗な子だなぁと思う。肌も白いし、服も白のワンピースだし、耳が長くて頭のてっぺんに小さな角がある以外は間違いなく美少女だった。気弱な声と態度もいかにも世間知らずのお嬢様っぽい。

「そっか。それじゃあおねーさんと一緒に行く?」

そんな少女一人を残していくほど薄情じゃないので、誘ってみたんだけど。

「え、でも・・」

「大丈夫よ。魔族とかよくわかんないけど、私はそんなことで差別しないから」

「・・・はい」

少女はどこか後ろめたそうに、でもはっきりとそう答えた。

『パーティーが結成されました』

視界にそんな表示がされて、少し嬉しくなった。やっぱり一人よりも誰かと一緒の方が楽しいしね。

「それじゃ、しゅっぱーつ!」

私たちは元気よく前に進むことにした。

「って、おねーさん街の場所わかるんですか?」

勢い良く言ってみたけど、全くわかりません。ツッコんでくれてありがとう。

「どーしようねぇ・・・」

悩みながら歩いてると、崖っぷちに出たようで。

「行き止まり、かな」

さてここからどうしようかと立ち止まり下を覗くと、真っ赤なドラゴンがいるじゃありませんか。

「あ、あわわわ。スカーレット、ドラゴンっ!?」

少女は膝をガクブル震わせながら泣きそうな表情で私の裾を掴み、思いっきり怯えてた。

「なにそれ?」

この世界の知識がない私にとってはなんかでかいのがいるなーくらいにしか思えないんだけど。

とりあえず、スキル使って観てみよう。というわけで『真理眼』!


種族:スカーレット・ドラゴン Lv97

火属性。滅茶苦茶強い。


えぇ・・・。無理ゲーじゃん。

さて他の道を探そうと思ったところで、(あれ、でも流石にこの崖は駆け上ってこないよね?)という考えが閃いた。


とあるネトゲをしてた頃なんだけど、一時期『崖打ち』という方法で敵を狩ってたことがある。

意味としては、ええっと・・・敵から反撃を受けないような場所から弓や魔法を使って敵を攻撃する行為。だっけ。

あまりにもトラブルが多く、禁止行為に指定されてたけど・・でもこの世界じゃ関係ないよね!


というわけで、さっそく実行!火っていうことは水が有効なのかな?と思い、大量の水を魔法で作り、真下のドラゴン目指してぶっかける。

「『スプラッシュ』!!」

「あ、え、うぇえぇぇ!?」

少女は「何してるのこの人!?」とでも言いたげな表情で私とドラゴンを交互に見ているけど、そんなことは気にせずにどんどんぶっかける。

ドラゴンはダメージを受けつつも、周りに火炎放射をかましてた。まぁ向こうからは死角になってるから気付かないんだろうけど。

・・・5分くらい続けても変化がないので飽きてきた。ドラゴンは相変わらず元気だし。

こういう時何かいい策は・・・と、あれでいいかな?

「ねぇ、ドラゴンって毒って効くかな?」

「え、はい。多分・・・?」

安全なのはわかったけどそれでも怖いのか、私の後ろで呆けながら少女は答えてくれた。

んじゃ、えっと・・・毒の雨を降らせてみよう!

「『スプラッシュ』、猛毒入りバージョンっ!」

あ、なんかいきなり様子が変わった。真理眼で見たら劇毒状態とか書かれてるし。

HPが減ってきたからか『龍の怒り』とか、『逆鱗』とかいうスキルが発動してるのが見えたけど、一方的にタコ殴りにできるので無視して作業を続ける。

・・・んでまた10分経過したところで、ようやくドラゴンが倒れた。とほぼ同時に、『スカーレット・ドラゴンを倒しました』との表示が。

「ふぁ、疲れたー」

流石にずっと水出しっぱなしだったし、集中し通しだったので結構しんどかったのはあるけど、それ以上に何とも言えない達成感があった。

「ほ、ほんとに倒したの?」

といいつつ崖から身を乗り出し下を見た少女の向こうには、光の粒となって消えゆくドラゴンの姿が見えた。

「ふぇえ・・」

どこか呆れたような、驚いたような、微妙な表情をされてもねぇ。と、それはさておき。

「レベルとドロップはどうなったかなぁ~」

こんだけ頑張ったんだからいいことがあっても・・・って

「レベル・・・95?結構高いの、これ?」

この世界の基準がわからないから、とりあえず訊いてみたけど、

「えっと、超一流の武人と言われる有名人でそのレベルだった。はずですけど」

明らかに一般人の範囲超えてるし!

「ドロップはプラチナの塊が10個、虹輝石3個、ミスリルのナイフ?が1個・・・これどうなの?」

わからないものは訊くしかないよね。

「・・・土地でも買います?」

いや、えぇ・・。スケールがとんでもないってことはよくわかった。

「まあ冗談はさておき、とりあえずは衣食住を安定させないとね。そのためにも早く街に行かないと」

ドラゴンのいた向こう側は森と、その先には大きな山の上に城壁が見える。

「あそこの街ってなんだか立派そうね」

城壁の方を見つつ呟くと、少女はそれに付け加えるように解説してくれた。

「あれは、聖地オリンポスですね。王都に次ぐ世界二位の大都市です。ちなみに麓からバスが出てるって聞いたことがあるので、それに乗ればいいかと」

あ、流石に登山するわけじゃないんだ。あれでもさっき土地勘ないって・・・。

そんな考えが顔に出てたのか、少女は少し不機嫌な顔で、

「流石のぼくでも世界の主要都市くらいは見ればわかりますぅー」

「あはは、ごめんごめん。別にバカにしたわけじゃないから」


と、そんなわけでドロップ品とかお金とかは自動的にアイテムボックスに仕舞われたようなので、さっさと麓まで『空間跳躍』で行くことにした。・・・遠目に見ただけの場所だし行けるのかなとも思ったけど、やってみたらできちゃった。

そしてバスに乗って高い高い山に登っていく間、私はふと考えていた。

(この世界ってまんまゲーム、だよねぇ)

スキルとかアイテムボックスとかレベルとか、おまけに魔法まであるし。

普通の世界じゃダイヤログが視界に表示されることもないし。

あの声の人、神様?は「転生」って言ってたし、仮にこの世界がゲームだとして、クリアしたら私はどうなるんだろう?そもそもクリア条件とかあるのだろうか?

「おねーさん?」

深刻な顔で考え込んでたせいか、少女は心配そうな顔でのぞき込んできた。

「そういえば、自己紹介がまだだったわね。私は美春。よろしくね」

なんだかんだ勢いで突っ切ってきたからお互い自己紹介するのも忘れてたことを、今更思い出した。

「ぼくはハヅキ、ハヅキ・ミウです」

「はづきちゃんか。じゃあはーちゃんだね」

さっそくあだ名で呼ぶとはーちゃんは恥ずかしそうに顔を背けた。

「あだ名って、ぼくそんな風に呼ばれたの初めて・・」

ふふっ。ういやつよのう。

「見た目にぴったりで、女の子っぽくていいでしょ」

自信たっぷりにそう言ったけど、はーちゃんは呆気にとられた顔でこんなことを言い出した。

「・・・でも、ぼく、男ですよ?」

え、なんだって?

「男、です」

・・・嘘!?

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