論功行賞と同族との出会い
初めての戦闘を終えた紀伊はほっとしていた。
「勝てて良かった〜」
「我が主があの程度の敵に負ける事は有り得ませんよ。それよりも軍の将軍、各部隊長に声をかけるのが良いかと」
「そうだな。よし将軍と各部隊長を呼べ!」
暫くすると六人の猫人が入ってきた
「陛下拝謁致します」
「うん、気楽にしてほしいかな。まだそういうのは慣れてないんだ」
「分かりました。しかし公の場ではさすがに無理な相談ですな」
「うん、分かった。ちょっと遅いけど皆さっきはありがとう。君達のおかげで助かったよ」
「そんな我らは当然の事ををしたまでです」
「ううん、本当に助かったよ。今すぐには無理だけど何かあげないとね」
「それならば我らに名を頂きたく。下のものは召喚された時から名はありますが将クラスになりますと名は召喚者に付けてもらうのが一般的ですので」
「名前かぁ。じゃあ将軍は大和、歩兵部隊長は金剛、長弓兵部隊長は加賀、長槍兵部隊長は山城、騎馬兵部隊長は扶桑、竜騎兵部隊長は赤城とする!!」
「ははっ! 名を頂け嬉しく思います!」
そのような感じで論功行賞やこれからについて話している時に兵士が一人入ってきた。
「会議中のところ失礼します。集落の長と申す者が陛下にお目通りしたいと申しています」
「そうか、では通せ」
暫くして長にしては若いと思われる猫人が一人入ってきた。
「へ、陛下に拝謁致します」
「面を上げよ」
と言うと長と名乗る者はゆっくりと顔を上げ口を開いた。
「この度は集落を助けて頂き感謝の言葉もございません」
「いえ、同族を助けるのは当たり前の事です」
「いえいえそれでも助けて頂きありがとうございます。それと誠に申し訳ないのですが我らの集落はここに来たばかりで何も渡せるものは無いのですが」
「そうですか。なら我らの軍をここに駐屯する許可を貰いたい。それとこの周辺一帯の使用許可が欲しいです」
「その程度のものでよろしいのですか? 我らに指揮下に入れとは望まぬのですか?」
「無理に従えたとしてもそれはのちのち内部で良からぬ事が起きる。それを陛下は望んでいない」
「繰り返しありがとうございます。誠に失礼ながら陛下はどこからいらしたのですか?」
「何故だ?」
「はい、この辺りでこれ程の軍事力を持っている猫人族はおりませぬので」
集落長の疑問は最もであった。この未開拓地では今現在沢山の種族が暮らしているがその中で最も栄えているゴブリン族でも2万程の数である。さらに魔族領とここは国境を接しておらず、人間領ではこれ程の数の猫人族が生きてはいけないからだ。
「この軍は僕が魔法で召喚したと言ったら信じる?」
この時、集落長は何を言っているか分からなかった。
この世界の今の魔法は三笠と長門を除く全ての種が初級第三位魔法までしか使えない。しかしその中には軍隊を召喚する魔法など存在しない。さらにどこからともなく現れたのだ、加えてあの強大さを目の当たりにした集落長の答えは一つだった。
「信じます」
「ありがとう。今からこの地で僕の軍隊は駐屯する。そして周辺での哨戒、開墾、訓練、防衛拠点の構築をさせてもらう。その代わりに僕らは君達を守る、それで良いかな」
「はい、大丈夫です。重ね重ねありがとうございます。それではこれにて失礼致します」
「では各員今の陛下の話は聞いていたな。各員行動に移れ」
そう長門が言うと皆行動に移るためこの場をあとにした。
「じゃあ長門、三笠を迎えに行ってそのあと工作部隊と輸送部隊と特殊作戦部隊や色々と召喚しに行こうか」
エリセーヌ王国 王宮
「これは……どういう事だ?」
未開拓地より王都に届けられた報告は思いもよらぬものだった。
「はい、モルテン団長以下約九千名は戦死されました」
「どういう事だ! なぜたった一千の猫人族にモルテンの一万の兵が敗れた!説明せよ!!」
しかしこの場にいる誰もが答えを口には出来なかった。逃げ帰ってきた騎士達は全員重症を負っておりとても情報を聞き出せる状態では無かった。
「周辺の国になんと言えば良いのだ! 数で勝る我らが数で劣る敵に負けたと周辺諸国に広まれば帝国やその他の少し前に和平を結んだ諸国が押し寄せて来るぞ!」
「陛下ここは情報を統制した方がよろしいかと、今現在我が国の兵力は陛下の直轄の軍である赤、青、緑、黄色の騎士団は赤の騎士団を除く青、緑、黄色は各地を転戦しており消耗しております。さらに各地の貴族軍も消耗が激しく暫くは戦えぬ様です。
加えて赤の騎士団は今回のモルテンの失態によりその数が半減しており精鋭が少ししか残っておりませぬ。ですからここは」
「そんな事は分かっておる!! 直ちに情報を統制せよ。他国にそして民に我らが負けたと知られるな!」
「仰せのままに」
「猫共め絶対に根絶やしにしてやる」
いかがでしたでしょうか? 誤字や脱字があれば教えてください。
それではまた次のお話で