未開拓地と猫人族
今回も楽しんで貰えると嬉しいです!
紀伊一行は未開拓地に向かい隠し通路を進んでいた。
「1つ疑問があるのですがお答えして頂いてもよろしいですか?」
「なに?」
「はい、何故紀伊様は森に来たのです? この森は昔から木の実や薬草などは育たぬ土地。それにそのお召し物はどこで手に入れられたのです? 私には人間にも魔族にもそこまで上等の物は作れぬと思うのですが」
長門の疑問は当たり前の事であった。いつも学校で着ていた制服を着ており、こちらの世界との差は歴然であるからだ。
「これはね……自分の魔法で創ったんだよ」
しかし異世界から来たと言えば変な目で見られると思い嘘をついた。
「なんと!! そこまでのお召し物を創れるとは、それではもう一つその……ドラゴン、三笠はどこでテイムされたのですか? ドラゴンはそうそう会えるものでもありませんし」
「三笠はね召喚したんだよ」
「召喚にございますか! まさか私と同等の魔獣を召喚するとは……いえ私を従えたという事は私と同等の者を召喚も出来るということですな」
「長門と三笠が同等って言ってたけどさ、その上はあるの?」
「いえございませぬ」
この言葉を聞いた時紀伊は少なからず驚いた。何せ自分の相棒の三笠や支配下に入った長門の上はないということは世界の頂点に君臨している者達なのだ。これが驚かずにいられようか。
「紀伊様は少し世界のことに関して疎いのでございますか?」
「うんちょっとね。わかんない事があったらその時聞くからよろしくね」
「かしこまりました。しかし猫人族でその強大な魔力感服せざるをえませんな。それと紀伊様出口が近づいてまいりました」
確かに長門の言う通り光が見えてきた
「これが未開拓地!」
「えぇ、ダンジョンが多数存在しそれより離れたところにいくつもの種族が集落を作り生活しています」
「あの煙は……何?」
紀伊が指を指した方角を見てみると確かに煙が上がっていた。そしてよく見ると何らかの種族が陣形を作り
人間と争っていた。
「あれは猫人族と人間が戦っていますな。人間の方は私があの森で勢力を持っていた時が100年前、それより国が変わっていないのなら人間至上主義を掲げるエリセーヌ王国の軍隊ですな。その数は一万程かと。対して猫人族は一千程ですな」
猫人族は深く堀を掘っているためまだ集落の中には攻め込まれていないが、誰の目から見ても戦局は圧倒的にエリセーヌ王国側が有利だった。
「助けよう、それに僕と同じ種族だ」
「しかし人間の数が多いですな。私はともかく御身と三笠は多数の相手と戦闘経験はお有りですか?」
戦闘経験と言えば先日の長門との戦いであったがそれも戦闘と言うには程遠いものであった。
「ない」
「左様にございますか。いくらドラゴンと言えども戦闘経験豊富で無いとあの数の人間に当たるのは少し厳しいかと」
「ではどうする?」
長門には今までその事象が無かったため出来るかどうか分からないが一つ案があった
「紀伊様私に一ついい案がございます」
猫人族 集落
「クソォ何でよりにもよって人間が攻めてくんだよぉ!」
「俺たちは住むところが無くてここに来たのによぉ!」
彼ら猫人族は未開拓地に魔族領から移り住んで来たのだがゴブリン族が大繁栄をしており土地を沢山使っていた。更に他の種族も暮らしているため、新しくこの地に移って来たこの一族は住む場所が無かった。そのため危険と言われていた人間領に近い場所に集落を作った。そして今人間に攻められていた。
「僅か一千の人間もどき共に何を遅れをとっている!一刻も早く殲滅せよと各部隊長に伝えて来い!!」
「はっ! 直ちに」
「モルテン騎士団長に報告します!」
「どうした!」
その騎士はこの周辺の哨戒していた騎士であったが、その顔は青ざめており何か言いたくなさげだった。
「どうした! 早く言え!!」
「は、はい!!」
その騎士の報告は非常に信憑性のないものだった。
なんと猫人族の大軍がこの地に迫っていると言うのだ。しかし猫人族の他の集落はこの地より遥か遠く
更に数も同じくらいでありとても大軍にはなり得ない。モルテンは何か蜃気楼でも見たのだろうと思い笑った。
「ほ、本当にございます!! 歩兵一万五千、長槍兵一万、長弓兵七千、騎馬兵五千、竜騎兵八千程と見られる大軍があと2里まで迫っております!! これは私の他にも見ているため嘘でも何でもございませぬ!!」
モルテンもここまで本気で言われると信じずには居られない。更にもしこれが事実であるならばそれはこの騎士団の約三倍にも値する軍が迫ってきていることになる。しかし準備が出来ているのなら、その猫共は簡単に追い払えると考えた。
「分かった。まずは複数名哨戒にだす。本当に居たのならばすぐさま集落から離れたところで陣形を整えよう」
「分かりました」
しかしその言葉と同時に前線の方から悲鳴が聞こえてきた。
「何事だ!!」
「申し上げます! どこからか猫人族の大軍が現れ我が軍は分断前線の者達は包囲されております!」
「ぐぁ! 助けてくれ!」
「この猫どもがぁ!」
「嫌だ嫌だ嫌だ!」
「死にたくなぁい! あぁ!」
モルテンは状況の把握が出来ずにいた。
「何故だ、何故私の騎士団がこんなことになっている」
考えている間にも騎士達の悲鳴が聞こえてくる。
「貴方がこの騎士団の団長ですね?」
モルテンは声のした方を見るとドラゴンに乗った若い猫人がいた。
「誰だお前は」
「私はこの軍の指揮官で紀伊と言います」
その若い紀伊と名乗った者はモルテンの殺気を受けても、ものともしなかった。
「それではこちらは答えたのでもう一度聞きます。貴方がこの騎士団の団長ですね?」
「誰ぞこの不届き者を殺せ」
「あれ気づいていなかったのですか? 貴方の部下は一部を除いて死にましたよ」
モルテンが辺りを見回して見ると誰一人として立っている者は居なかった。
「貴様らは何者だ!」
「私はこの土地の魔王となる者である」
「魔王だと?」
モルテンの疑問は最もであった。何せ魔王がいるのはこの未開拓地の隣の魔族領であり、この未開拓地はダンジョンがありそしていくつかの種族がいるために国を作ろうとして容易ではない。
「フン、どうせ魔族領で当代の魔王に負けこの地で魔王とやらを称するつもりであろう」
「貴方と話していても意味がありませんね。最上級第三位魔法、生命掌握」
紀伊が魔法を唱えた瞬間モルテンは地に伏した。
「皆、勝鬨を上げよ!」
「おぉぉぉぉ!」
「俺たちの勝ちだ!」
「人間なんて余裕だぜ!」
紀伊の軍勢の勝鬨は遠く離れた敗走した騎士達にも聞こえたと言う。
いかがでしたでしょうか? 誤字や脱字があれば教えてください。
ではまた次のお話で