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第二王子の次男は諸国を巡る  作者: すみませばみを
第一章:エルフの国編
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爺やのえげつない技

 朝食を粥でさっと済ませ僕達は旅路を急いだ。

 マリナは粥も気に入ったみたいで「あっさり……」と言いながら四杯はおかわりしていた。

「今日中にはウィルダム村に着いておきたいですな」

「そうだな。マリナも早くご両親に会いたいだろうしな」

「大丈夫……」


 魔法馬車で移動していると、爺やが御者をしながら僕に向かって叫ぶ

「坊ちゃまこの辺りは比較的魔物が多いので……早速来ましたぞ!」

 爺やが慌てて魔法馬車を止める。

「よし! 僕がやる」

 と言いながら僕はふわっと魔法馬車から飛び降りた。


 魔物の方を見るとゴブリンが四体ほど焦った様子でこちらに走ってくる。

 森が近いから火魔法じゃなくて、風魔法の『切り裂く風』を使うか。

『鋭利なる風顕現……切り裂き給え』

 真空波がゴブリン二体を襲いゴブリンの首と胴が離れる、残り二匹に手をかざし『切り裂く風』を使う

 こちらは二体とも「ギィ」と言いながら縦に真っ二つになった。


「準備運動にもならないな」

 とりあえず魔法石だけいただいておこう。ゴブリンの体から魔法石を取り出す。

 残りのゴブリンからも魔法石を取り出していると、

 ウオォォォーと森が震えるような雄たけびが聞こえた。


「坊ちゃまお下がりください。あれはオーガです。爺やが対処いたします」

 爺やの言う通り、のそっとオーガが現れる。ゴブリンの大きさが百センチ位なのに比べ

 オーガは大きさが三メートルはありそうだ。

 片手で持っている棍棒も二メートルはある。

 オーガがこちらを睨み咆哮しながら手に持った大きな棍棒を振りかざしてきた。

 爺やはその棍棒を軽くいなすと懐に入り、ハッと言いながら両手を重ね合わせ腹に当てた。

 当たった途端ドンッと低い音がしたがオーガはピクリとも動かない。

 僕のゴクリと唾をのむ音がやけに響いて聞こえる。

 爺やがこちらに向かって歩き出すと同時に、オーガの全身から緑色の血が噴き出した。

 こちらに振り向きながら白手袋を直すしぐさが妙にかっこいい。


「爺やのその技久しぶりに見たけど、えげつないな」

「オーガの肉はとても美味ですので血抜きも兼ねております」

 そうオーガの肉は一般市民から王族までみんなが大好きな食べ物だ。

 通常一体に付き王城の兵士だと三人で対処するレベルの魔物だが……。

 やっぱり爺やは怒らせない方がいいな。

「爺やも異常……」

 マリナが驚いた表情で固まっている。

 ふっふっふっ僕もあの技は使える……三回に一回くらいしか成功しないけどな。


 爺やが手際よくオーガを解体し僕らは旅を再開した。

 マリナが爺やに詰め寄っている。

「あの技教えて……」

「マリナ様がもう少し大きくなられてからですな」

「むぅ……」

 爺やが爽やかな笑顔で答えていた。

 爺や頼むからマリナにはあんなえげつない技を教えるなよ。



 それから三回程、魔物の襲撃があったが近づかれる前に魔法で倒しながら進んだ。

「魔力量異常……」

 そんなことをマリナに言われながらも順調に旅路を進める。



 辺りが茜色に染まり、あと数時間で日が完全に落ちるだろうという頃にウィルダム村の門が見えてきた。

 村の門には門番が二人おり、門に差し掛かると門番に尋ねられた。

「ここはウィルダム村。何用か!」

「エルフの国に向かう道中の商人見習いです。今晩一泊させていただけないかと立ち寄りました」

 門番が何やらヒソヒソと話をしている。

「小さい子もいるしお連れは爺さんだけだし大丈夫か」

「そうだな」

 門番が頷き合っている、話がまとまったようだ。

「よし! 通っていいぞ」

「宿は奥にある裏門の近くだ。同じ宿に高貴なお方が宿泊予定なので、もし出会っても失礼の無いようにな!」

 高貴な方とな、それでピリピリしていたのか。

「はい。ご丁寧にありがとうございます」

「爺や、マリナ行こうか」

 二人を連れて村の門を潜り宿を目指す。


 目的の宿は小さい村の割には中々大きい宿だった。

「結構大きいし見た感じは綺麗だな」

「こちらはの村は、グロリオーサ王国とエルフの国を結ぶ街道にございますから、利用者が多いのでしょう」

 なるほど結構需要があるから大きいのか。


 宿屋に入ると一階は酒場兼食事処のようだ、奥に受付がある。

「三人で一部屋一泊、泊まりたいのですが」

 受付で恰幅のいいおばさんが説明してくれる。

「一人五銀貨だよ。食事は別料金だよ一階で食べてもいいし他所で食べてもいいし」

 この国の貨幣価値は価値が低い順に

 銅貨

 10銅貨=1銀貨

 100銀貨=1金貨

 1000金貨=1白金貨

 となっている。

 王都だと普通の宿屋で一泊十銀貨なのでここはかなり安い。


「では一泊お願いします」

「あいよ。カギはこれだ。出かける時はここにカギを預けて行っておくれ」

「ありがとうございます。所で高貴なお方が宿泊予定と聞きましたが?」

「ああ、エルフの巫女様だよ。風妖精の山へ巡礼中だそうだよ」

 エルフの巫女様がいらっしゃったのか、エルフの巫女様がエルフの国の外にいるのは珍しいから、

 門番がピリピリしていた理由はこれか。

「エルフの巫女様ですか、なるほどありがとうございます。」


 受付を離れると食事処のテーブルに着く。

「爺や今日はもう夕食を食べたら寝るか、街中で鍛錬はできないしな」

「そういたしましょう。わたくしはこのアマーゴの塩焼き定食コメにいたします」

 決めるの早いな。今、座ったばかりなのに……。

「私もそれ……」

 マリナに至ってはメニューを見ていない……。

 ちなみにこの村はヒューマンの村だがエルフの国にも近いので定食の場合コメかパンか選べる。

「ふ、二人ともアマーゴが好きだな。僕は……オーガの焼肉定食コメにする」

「すいませーん」

 パタパタとウェイトレスがやってくる。

「はーい。お待たせしました。お決まりですか?」

「三つともコメで、アマーゴの塩焼き定食二つに、オーガの焼肉定食一つお願いします。」

「かしこまりましたー。三つともコメですねー。全部合わせて六銀貨です」

 ウェイトレスに六銀貨渡すと、ありがとうございましたー。と威勢のいい声で厨房に消えていった。



 十分ほど待つとすべてのメニューがテーブルに揃う。

「それじゃあ、いただこうか」

 鉄板に乗ったオーガの肉がうまそうな音を立てている。

 ナイフを肉に当てるとすっと切れる。さすがオーガの肉だ柔らかい。

 オーガの肉の人気の秘密はこの柔らかさだ。

 あんなに筋肉質なのに火を入れると途端に柔らかくジューシーになる。

 一切れ口に放り込むと何とも言えない肉汁が口の中に広がる。

 いやぁやっぱりオーガの肉はうまいな。さすが一般市民から王族まで好きと言われるだけある。

 安い、うまい、多い最高だな。

 そうオーガの肉は高級品ではなく庶民の力強い味方なのだ。


 僕の隣では爺やとマリナが無言でアマーゴの塩焼きとコメを頬張っていた。

 すごい勢いだな。

 あ、マリナがアマーゴの塩焼き単品で五本追加した。

 爺やも負けじと三本追加している。

「二人ともアマーゴ好きだな」

「まぁまぁ……」

「そうですね。坊ちゃまのアマーゴの塩焼きほどではございませんが、この店のもそこそこいけます」

 おかわりしといてよく言えるな。と僕は内心苦笑しながら聞いていた。

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