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第二王子の次男は諸国を巡る  作者: すみませばみを
第四章:竜人の国編
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グロリオーサ王国へ

 イワマルから魔力の放出が徐々に収まると竜化した姿が露わになる。竜化したイワマルは物語の中から飛びだしてきたような見た目で首が長く四足歩行で羽と尻尾が生えている。全身は黒い鱗に覆われており元は竜人とはとても思えないほど姿形が変わってしまった。


「あ、あれが竜化……まさに竜」

 竜化という言葉からどうなるかある程度は想像していたが、実際にその姿を見るとその存在感に圧倒される。


「ああなってしまっては気絶させるか、魔力を枯渇させるか、最悪殺すしか元に戻す方法はないでござる」

 竜化したイワマルの大きさは元の大きさの何倍もあり生半可な攻撃は効きそうに無い。さらに内包している魔力の量も竜人の時とは比べ物にならないくらい多いので魔力の枯渇も期待できそうにない。


「あと一つ現実的な方法として逆鱗と呼ばれる逆さまに生えている鱗を破壊できれば竜化は解けるでござる。ただし逆鱗は普通の鱗より硬く破壊するにしてもなかなか厄介でござる」

「逆鱗の場所はどこですか?」

「あごの下でござる」

 あごの下か、結構厄介なところにあるな。


「拙者が引きつけている間に何とかあごの下に入って逆鱗の破壊をお願いするでござる」

「了解しました。何とか潜り込んでみます」

「それでは行くでござる!」


 フジマルさんは正面ではなく尻尾のある方に回ると手刀で尻の辺りを切りつけている。

 竜化したイワマルは尻尾の方に首を向け尻尾の動きを確認する様にフジマルさん目掛け尻尾を振るっている。

 そうか。元は尻尾が無いから確認しないと尻尾を振るえないのか……。

 すぐに慣れるかもしれないが尻尾に気が回っているうちに逆鱗を破壊しよう。


 僕はイワマルの隙をついてあごの下に潜り込むが途端に噛みつき攻撃が来る。

 やっぱりそんな簡単にはやらせてくれないか。


『灼熱の炎よ顕現……輪……』

 灼熱の輪を閉めずに顔に向けて展開させる。これで目くらましになればいいけどどうかな。

 イワマルがうっとおしそうに吠えると『灼熱の輪』が霧散する。

 魔力をさほど込めていないとはいえ吠えるだけで僕の魔法を霧散させるとはさすがは竜といったところか。


「言い忘れていたでござるが~~~! 竜化した竜人には魔法は効きにくいでござる~~~! 竜神流武闘術の方が効くでござる~~~!」

 フジマルさんがイワマルの注意を引きながら大声で僕に助言してくれた。

「了解です!」

 そういうことはもっと早く言って欲しい。



 竜神流武闘術か……魔力活性は体得できたが時間が無くて技は何にも習っていないんだよな。魔力活性を使う技といえば爺やのえげつない技くらいしか使えないけど相手が巨躯すぎてとても効くとは思えないしな……。


 どうしようか考えているとふと魔竹が目に留まる。

 魔竹か……そうだ!

 魔竹の場所を探るために地中に意識を集中すると魔竹の生えている場所がわかった。

 よし!何とかいけそうだ。


「フジマルさん! あそこまでイワマルを連れてこれませんか?」

「何か考えがあるでござるな。承ったでござる」

 フジマルさんが僕が指定した場所までイワマルを誘ってくる。

「そこで少し引きつけてください」

「まかせるでござる」


 ここからはタイミングが大事だ。

 僕は魔力を活性させながら魔力を溜めタイミングを伺う。


 よし今だ! 僕は溜めた魔力を地面に向けて放つ。


「テ、ティム殿なぜそのような離れた場所に?」

 フジマルさんの不思議そうな声が聞こえたが、今は説明している暇はない。

 溜めた魔力をすべて放ち様子を見ていると、僕が魔力を放った地面が光りながらボコボコと音を立ててイワマルに向けて進む。


 イワマルの顔の下まで進むと光の筋はぴたりと止まった。

 固唾を飲んで見守っていると地面からドーンと音がし勢いよく光竹が飛び出し逆鱗を破壊した。

 逆鱗を破壊されたイワマルはピタリと動きを止め光を放ち始める。光は徐々に小さくなっていき光が消えた後には元の姿に戻ったイワマルが倒れていた。


「よし! 上手くいった!」

「なるほ! 魔竹は地下で繋がっているでござるからそこから狙ったでござるか。それにしてもうまく逆鱗を破壊できたでござる」

「逆鱗を破壊できるようにと願いながら魔力を練りましたからそのおかげかもしれません」

「何にせよ被害を出さずに竜化が解けてよかったでござる」



 その時会場にゆっくりとした拍手の音が響く。

 拍手がした方を見るとそこには黒いローブを着た人物が立っており、傍らには以前戦ったギルベルトが跪いている。

 ローブ姿の人物を見た瞬間僕の鼓動が早まる。あれはまずいぞ! あれは普通の存在じゃない。


「いやはや素晴らしいね! なかなかスマートなやり方だった。お見事!」

「お、お前は一体!」

「おっとこれは失礼。俺はマリス・レヴィナス。裏ギルドを牛耳っている者だ」

「う、裏ギルドのボス!」


「ふっふっふ、初めまして。それにしても実際に会ってみるとなかなか良い! 魔力の練り具合も素晴らしいが何よりその纏っている気配が良い。これなら幹部がやられたのもうなずけるな」

「一体何をしに現れたんだ」

「何をしにか。これもそうだが」

 そういいながら王家の秘宝の短剣を掲げると鞘から短剣を抜いた。

「ティム、お前にも一度挨拶をしたくてな。それとあともう一つあるけどそれはまた今度会った時だな」


「さて! ティムへの挨拶も済んだ所で長居は無用だな。また会おう!」

 そう言うとギルベルトと共に消えた。


 気配が無くなったのを確認した途端に自分がすごく汗をかいていたことに気が付く。あれが裏ギルドのボスか……内包する魔力もすごかったがそれよりもそこにいるだけで感じる凄味がすごかった。僕としたことが冷静さを欠いてしまった。あのギルベルトが跪いていた訳も分かるな。




「坊ちゃま~」

 遠くから爺や達が心配そうに駆けてくる。

 避難したはずの女王様やゲンゾウ様もやってきた。


「フジマル、イワマルはどうなったんじゃ?」

「ゲンゾウ様! ご無事でよかったでござる。あやつはティム殿の機転で殺されずに竜化が解けたでござる」

「そうか! 竜化の気配が無くなったのでな、死んだかと思ったが生きておるか。破門したとはいえ元弟子じゃからのぉ安心したわい」


「坊ちゃまご無事で安心いたしました。どこか怪我などはされておりませんか?」

「フジマルさんが奴の気を引きつけてくれたから僕は何ともないよ」


「ティム、無事でよかったわ」

 リリアがそういうと僕に抱き着いてきた。

「ずるい……」

 そういいながらマリナは後ろから腰に抱き着いてくる。

「うっふっふ~ティム君モテモテね~けどみんなの気持ちもわかるわ。あんな凶暴な相手と戦うなんてどれだけ心配したか……」

「イーナさんごめん。けどフジマルさんも居たしいけるかなと」

「まぁ無事だったし終わりよければ全てよし! かな」



「皆無事でよかったの。所で王家の秘宝の短剣が見当たらんがどこに行ったんじゃ?」

「姫様申し訳ござらん。先程裏ギルドのボスという者が現れまして持って行ってしまったでござる」


「そうか。まぁそれは仕方がないのぉ。しかし裏ギルドのボスに狙われるとは……まさかそやつは王家の伝承を知っているのでは……しかしあの短剣は抜けなければ意味はないからの」

「抜けなければ?……姫様そやつは短剣を鞘から抜いていたでござる」


「え…………えぇぇぇぇ!!!」

「姫様これは一大事じゃ!」

「うむむむむむ」

 何やらゲンゾウ様と姫様が頭を抱えてしまった。



「姫様これは坊にも話すべきじゃと思うがどうじゃ? 坊はヒューマンの国の王子でもあるしの」

「そうじゃの。このままでは妖精の国が危機に陥るかもしれん。皆の者これはここだけの話じゃ」

 そういって女王様が話してくれた内容は……。


 竜人の国の王家と竜神流武闘術の最高師範にのみ伝わる伝承がある。それは竜人の秘宝の短剣は妖精の国への扉を開く鍵である。妖精の力が悪しき者へ渡れば世界は悪しき世界へ。妖精の力が正しき者へと渡れば世界は希望に満ちた世界へ変わるであろう。正しき者へと短剣を渡し妖精の国の扉を開け。扉を開く資格のある者は短剣を抜くことができるであろう。資格のある者を探すのが竜人の使命。資格のある者が現れた場合ヒューマンの国へ導くべし。

 ……といった内容だった。


「女王様、今の話ですとヒューマンの国に妖精の国への扉がありそうですが、僕はそんな扉の話は聞いたことがありません」

「わらわ達の様に代々の王にのみ伝えているのかもしれんの」

「なるほどあり得る話です。とりあえず先に通信石で王に知らせておきます。相手は転移魔法を使えますから僕達は間に合わないかもしれないですが、転移魔法にも限界があるはずなので僕達も急いで向かいましょう」

「そうじゃのそれが良い。わらわ達は国から離れられんが、ゲンゾウ!」


「はっ! 姫様あれですな。坊よ皆は儂が運ぼう」

「ゲンゾウ様が?」

「うむ、実は二百歳を超えた竜人は代償無しで竜化出来るんじゃ。もちろん理性も失わん。竜化して飛べばヒューマンの国へは半日もあれば着くじゃろう」

 ゲンゾウ様がチャーミングな笑顔で親指をぐっと突き立てる。


「おお! それはすごいですね」

「じゃが儂は魔力を使い果たしてしまうので戦力にはならん。若い者に全てを押し付けるようで心苦しいが後は頼むぞ」

「お任せください何としてでも世界を悪しき方へは向かわせません」

「師匠! 拙者も行きたいでござる」

「乗せる人数が多すぎると儂の魔力が持たん、お前はクニヒコと共に姫様を守るんじゃ」

「むぅぅ、わかり申した仕方が無いでござる」


「それでは早速ヒューマンの国へ向かうぞ。準備はよいかの?」

「はい!」

 こうして僕らは意外な形でグロリオーサ王国へと帰る事となったのだ。


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