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第二王子の次男は諸国を巡る  作者: すみませばみを
第三章:ドワーフの国編
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魔法勝負の決着

 炎の波を光の羽で受け止める。すごい圧だ! これが本気の『灼熱の波』か!

 ま、まずい。魔力がもう……い、意識が……。


 耐え切れずに僕の意識が一瞬飛んでしまった。

 魔力の供給が止まった光の羽は炎の波を往なし切れずに霧散してしまったようだ。

 その衝撃で僕は後方に弾き飛ばされ弾き飛ばされながら時間が止まったかのような不思議な感覚に支配されていた。



 くそ! もう少し防御魔法の鍛錬をしていればよかったな。

 そうしたら炎の波に負けることも無かっただろう。まぁ溶岩による被害は抑えられたし良しとするか。

 僕はだめだろうがリリア、マリナ、爺や、後は頼んだぞ!


 それにしても弾き飛ばされたのに衝撃が来ないな……ってこれ時間が止まっていないか……そんなことがあるのか?


「あるんだよ、ふふふ初めましてティム。いや初めましてでもないのかな……う~ん」

「だ、だれだ?」

「そんなに警戒しなくて大丈夫だよ。僕は次代の妖精王だよ。当代の妖精王はまだ現存しているから今は妖精王子ってとこかな。ティムと一緒さ」

「じ、次代の妖精王様ですか……? じ、実在したんですか……。どこにおられるんですか?」

 声は聞こえるがどこにも姿が見えない。

「ティムは律儀だな~敬語は不要さ、僕とティムの仲だしね。姿が見えないのはこの世界ではまだ受肉していないからさ。受肉するには色々面倒な条件があるからしないと思うけどね」


「ところでティムなぜ僕がここにいてティムに話しかけているかわかるかい?」

「う~ん、あ! あの球か」

「その通り! ティムがエルフの国でゲットした球は妖精王の卵と呼ばれるものだったのさ。一度あれが魔力を吸っただろう? あの時から実はティムが気が付かないうちに最大魔力の半分以上を常に吸っていたんだ。ティムには吸った残りが自分の最大魔力だと思わせるように細工してね」

 妖精の卵どころか妖精王の卵だったのか! それに魔力を常に吸われていただと! 全く分からなかった。


「ふふふ、おかげでこうやって卵から孵ることができたというわけでお礼を兼ねてティムを助けに来たのさ」

「とりあえず『炎の波』は消滅させておくよ。術者は相当悪さをしていたみたいだな~因果応報、自業自得、そんな結果しか待ってないからほっといても大丈夫だね」

「それじゃあティムまた会おう! あぁそれと急に魔力の最大量が増えるから制御に注意してね。魔力の質も上がってると思うし」

「ま! 待ってまだ聞きたいことが……」

「ふふふ、続きはまた会った時にしよう。ヒントはグロリオーサ王国の開かずの間にあるよ。それじゃあホントにまたね!」


 またね! と聞こえたと思ったら時が動き出したかのように感覚が戻る。

 気が付くと僕は僕は吹き飛ばされる前の位置に戻っていて、へたり込んでいた。

「な! なんだ急に僕の魔法が消滅した! そんな馬鹿な!」

 カスパルが驚愕している。そりゃあ急に魔法が消滅したら驚くよな……。

 驚いているカスパルの後ろから、僕が『往なす障壁』で往なした溶岩がカスパルの方に流れ込んできている。

 しかし溶岩の速度は遅いので余裕で逃げられるだろうな。



 カスパルが懐から赤い球を取り出しこちらに投げる。

「さすがに魔力がもう少ししかありませんので、今回は僕の負けでいいです。それは約束の起爆装置です。さすがの僕も一年も魔法が使えないのは困りますからね」

 魔法契約書は絶対だからな。今回の場合カスパルの負けと判定するだろうな。カスパルの魔法は全部防いでいるし、最後の『炎の波』を消滅させたのは僕じゃないけど……。


「それでは僕はこれで失礼しますね。溶岩に巻き込まれたらばかですからねぇ、ヌフフフフ」

 カスパルが立ち去ろうとすると、何者かに足をつかまれる。


「逃がすか~」「いまこそ」「お前には地獄の苦しみを味わわせてやる」「この機会をずっと待っていた」

 どこからともなく怨嗟の声が聞こえてくる。


「ば、馬鹿な、こんなことが、お前らなんだ? これは一体? 動けない」

 カスペルが動こうとじたばたしているが動けないようだ。

 これが次代の妖精王が言っていた因果応報ってやつか、薄っすらとだが僕にもカスパルの足にまとわりつく何かが見えている。


 カスパルは必至な形相で何かを払うように手を振っている。

 あ! バランスを崩して前のめりに倒れた。

 カスパルがじたばたしている間にも溶岩は容赦なく迫って行く。

 そしてついにカスパルが溶岩に巻き込まれる。

「ぎゃゃーーーあついあついあつい!」

 カスパルの断末魔の叫びがそこら中にこだまする。

 だが意識を失ったのか騒いでいたのは一瞬でカスパルが炎に包まれると断末魔の叫びは止んだ。

 壮絶な最期だった。まさに因果応報としか言いようがない。


「坊ちゃま、やりましたな。 ところで坊ちゃまが吹き飛ばされたと思ったら、元の位置に戻られていて『灼熱の波』も消えておりましたがあれは一体?」

 いつの間にか戻って来た爺やが声をかけてくる。

「その事については皆の前で話をしよう。僕も未だに信じられない」

「わかりました。とりあえず皆さんの元に戻りましょうか」



 裏門を抜けると拍手と共に皆に迎えられる。

「救国の英雄のお帰りじゃ! よくやったなティム殿! わしゃ感動したわい」

「ティム君よくやったわね。ありがとう」

「ティム王子! よくやってくれた! 他国の王子に任せるのに気が引けたが今はティム王子に任せてよかったとすら思えるよ。ティム王子じゃなきゃこの結果は無かっただろう」

「皆で掴み取った結果だと思います。皆さんの助力が無ければここまでうまくいかなかったと思います」

「はっはっはそれは謙遜しすぎだ! しかしティム王子の言う事にも一理あるな。皆の者ご苦労であった! 今宵はゆっくり休むがよい 明日は宴を開催する!」

「頑張った甲斐があったぜ!」「今日はもう一歩も動けん」「避難した家族にも国は無事だと伝えないとな」

 歓声とともにドワーフの魔法使い達のつぶやきも聞こえてくる。


「イーナ! 避難した者たちにも安全になったと知らせてやってくれ。それと宴の事もな!」

「はーい、通信石で知らせておきます」

「ティム王子達も疲れただろう。今日はもう城に戻って休むがよい」

「そうじゃの、ティム殿にはちと聞きたい事があったが明日にするわい」

「すいません。なんだかすごい眠くて……」

「坊ちゃま爺やが部屋までお連れ致します」

「済まんが頼ん……だ」

 それっきり僕の意識は途切れた。

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