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第二王子の次男は諸国を巡る  作者: すみませばみを
第二章:獣人の国編
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族長代表とアマーゴの養殖

 「朝ですよ~おきてくださ~い」アマイアさんのおっとりとした声で目が覚める。

 布団の具合が良くて朝までぐっすりだったな。意外と布団もいいな。

「おはようございます」

「は~い。おはようございます。十五分後に朝食ですからね~お風呂場で顔洗って準備してください」

 僕はアマイアさんにはと答えると顔を洗いに風呂場に向かう。

 風呂場には手や顔を洗う洗面台があってそこで顔を洗う。

「あら、ティム。おはよう」

 振り向くとリリアが眠そうな顔でこちらを見ているが、パジャマ姿なのだが少し小さめだったのか胸と先端部分がこれでもか! というくらいに強調されている。

 思わず食い入って見てしまいそうになるが何とか耐えた。

「お、おはよう」そう言うと僕は素早く顔を洗うと客間に戻った。

 リリアは寝るときは下着は付けない派なのかもしれないな……。


 朝食はパンと目玉焼きとベーコンとサラダとスープだった。

 これが獣人の国の標準的な朝食らしい。

 朝食が終わるとガストンさんの案内で僕らは族長代表に会いに行くことになった。

 公共区に族長館と呼ばれる各種族の族長が集まっている場所があり、そこに族長代表もいるらしい。


 ガストンさんの家を出た僕らは大通りの方に向かっていく。

「あれに乗っていくぞ」とガストンさんが指さした方を見ると丁度、大きい馬車のような物がこちらに向かってきている所だった。

「あれが町での移動手段で最新式の魔法馬車だ。デコイホースが無くて馬車自体が動くんだ。二十五人くらいなら余裕で乗れるぞ」

 この国では皆これに乗って移動しているらしい。

 町の中を右回りと左回りで走っているそうで、一定のポイントに馬車が停車する場所があってそこで乗り降りするそうだ。

 前後左右にウェスタンドアが設けられており、後ろから入って前から出るルールでお金もいらないらしい。

 車内に椅子は無く、乗客は床からコの字型に生えた鉄パイプに掴まり立っている。


「さあ、乗るぞ」ガストンさんがそう言いながら後ろから乗り込む。

 僕らもガストンさんに倣い後ろから車内に乗り込んだ。

 魔法馬車は乗客を乗り降りさせながら中々のスピードで進む。

「これは歩くより大分早いですね」僕がそうガストンさんにしゃべりかけると、

「だろー! ドワーフの技術の中ではこれが一番役に立ってるんじゃないかと思うぜ」

「これ町の外の移動で使えないんですか?」

「どうなんだろうな~難しいことはわからんが鳥獣人や鼠獣人に聞いたらわかるかもな。あいつら頭いいし」

 大人数を一気に運べるからいいとおもうんだがなぁ。何か問題があるんだろうな。


「さあ! そろそろ族長館だぞ」

 馬車が速度を落とし族長館の近くで止まると、ガストンさんやマリナが慣れた様子で前のウェスタンドアから下車したので僕らもそれに続いた。

 乗るときは後ろからで、降りるときは前から出るのがルールだそうだ。



 ここが族長館か、結構大きい高さも高く屋根が尖った山のように鋭い。

 入り口はドアが無く楕円形を半分にして縦にしたような形状だ。

 入り口には熊獣人の衛兵が左右に立っている。

「これはガストン様、お連れの方は?」

「ああ、こいつらはヒューマンの国の王子とエルフの国の元巫女だ。族長代表に用があるから連れてきた」

 ちょっと! いきなり身分を言っちゃうとびっくりしちゃうんじゃ?

「そうでしたか。お通り下さい」

「マリナちゃんも大きくなったね~」

 なんて言いながらマリナの頭をなでたりしている。

 あれ? あんまり動じてないな、などと思っていると、

「ここはドワーフの王族が来たりもするからいちいち身分に驚いたりはしないぜ。

 まぁ熊獣人の気質もあるとおもうけどな」



 建物の中に入るとやはり天井がすごく高いそして両側にドアがいっぱい並んでいる。

 さらに奥に行くとガストンさんが一つのドアの前で立ち止まる。

「ここが族長代表の部屋だ」

「おーい、ルバートいるかー。ルバート」ドンドンとドアを叩く、

 ドアがスッと開くと「そんなに強くたたかないでください壊れます」

 とインコのような外見にくちばしと目の間に小さな眼鏡を掛けた鳥獣人が出てくる。

「おう! ルバートいるじゃねぇか。相変わらず細いな飯食ってんのか! ガッハッハ!」

「鳥獣人ではこの体型が標準ですし、ご飯もちゃんと食べてます。ところで何か用事が?」

「いけねぇ! お客さんを連れて来たぜ! うちのマリナが世話になった王子だ」

「あぁ親書の方ですね。どうぞお入りください」

 そう言われ僕らは室内に案内される。


「今お茶を出しましょう」

 そう言うと人数分の紅茶を淹れてくれる。

「初めまして、僕はグロリオーサ王国第二王子の次男ティム・カタプレイト・グロリオーサと申します」

「私はエルフの国の元巫女リリア・クリベリルと申します。」

「私は坊ちゃまの御付のアルフレッド、お気軽に爺やとお呼びください」

「これはこれはご丁寧に、私はエレファランドの族長代表をしておりますルバート・バトランドと申します。まぁ族長代表と言っても族長たちの尻拭い役ですがね」ハハッと乾いた笑いがこぼれる。

「ルバートにはいつも世話になってるぜ!」エッヘンとばかりにガストンさんが胸を張る。

「お! マリナちゃんも久しぶりだね。大きくなったねぇ~」

 ルバートさんが目を細めてマリナの頭をなでている。

「久しぶり……」


「ところでガストンさん、この間のあなたが酔っ払って酒場の備品を壊した件の始末書がまだ提出されていませんが?」

「あ、あぁ、あれな! 明日には提出するぜ」

「あれあれ? 昨日が提出期限ですが? さらにあなたが損害賠償額の計算ができないから代わりに計算してくれと懇願されたので、代わりに計算しましたが? まだできていない? 明日提出?」

「今すぐ提出するぜ!」とガストンさんは慌てて部屋を出て行った。


「まったくやる事が山積みなのに余計なことを増やしてばっかりで……ブツブツ」

 や、やばいルバートさんが闇落ちしそうだ。

「ル、ルバートさん僕の国の王からの親書です。ご確認よろしくお願いいたします」

「ハッ! 親書ですか。ああそうでしたね。はい親書確かに受け取りましたよ。では早速中を拝見……。なるほど、返事はまた後日でもいいですか?明日は奉納音楽祭がありますので……」

「はい、もちろんです。明日は僕たちも見学させてもらう予定です」

「そうですか、是非見て行ってくださいね」


「ところでこの後はどうされる予定ですか? もしよろしければ町をご案内しますが」

「本当ですか? ぜひぜひよろしくお願いします」

「わかりました」ルバートさんはそう言うと懐から通信石を取り出し誰かと話している。

「……では今からよろしく頼む」通信が終わったようだ。


「我が国の農業と畜産を管理している代表者達を呼びました。さすがに私一人で全てを管理するのは難しいので、農業や畜産に関しては管理する代表者が何名かいます。その中でも特にその二人が色々詳しいのでその者に案内させます」

 なんかちょっと大事になったな。軽く案内してもらえればよかったんだが……。


「お待たせしました!」鳥獣人と鼠獣人が入ってきた。

「はじめまして私はハリソンと申します」「僕はマシューでちゅ」とあいさつしてくれる。

 ハリソンさんはカラスタイプの獣人でマシューさんはハムスタータイプの獣人だ。

 こちらも自己紹介を済ませると、案内時は王子の身分は隠すようにお願いする。

「そうでちゅね大事になってはだめでちゅからね」

 この語尾を聞いていると獣人の国に来たな~って感じがするな。

 意外とにゃーとかわんとか言う人いないからな。


「それでは早速参りましょうか。ティムさんはどこから見たいとかありますか?」

 ハリソンさんがそう言ってくれるが特に思い浮かばない。

「では研究中のアマーゴの養殖場なんかいかがでちゅか?」

 ほほう! アマーゴの養殖か! なるほど! アマーゴを養殖するという発想はなかったな。

 養殖に成功したらいつでも好きな時にアマーゴが食べられるな。

「近年、肉や野菜もいいが新鮮な魚が食べたいとの要望が多くなっておりまちて、特に人気のアマーゴを養殖で育てられないかと最近研究を始めましたでちゅ」

「大変興味がありますぞ! 是非見学したいです」横から爺やが食い気味にそう言った。

 爺やはアマーゴの話になると手が付けられないな。と苦笑する。


「今のところあまりうまくいってないでちゅが、最新の研究でちゅので見学する価値はあると思いまちゅ」

 僕もアマーゴに関しての知識はそこそこあるつもりだから仕組みを理解できれば、意外と僕の国でもできるかもしれないな。

「決まりですな! さぁ早速向かいましょう!」爺やに加えマリナもさあさあと手招きしている。

「ふふふ、お二人ともアマーゴに目が無いんですから」

 そういうリリアも耳がピコピコしている。


 ハリソンさんとマシューさんの案内で町の北の養殖池にやってきた。

「ここでちゅ、ため池の一部を使い流れができるように水路を作って養殖池にしていまちゅ、始めは元気に泳いでいるんでちゅが、放流したアマーゴが弱って死んだり、壁に激突して死んでしまう事案が多発しておりまちゅ、病気なのか、水が合わないのか、餌が合わないのか現在原因を解明中でちゅ」


 ふむふむ、水の流れはちゃんとあるな、温度は少し冷たい程度だ。これはぎりぎり二十度以下だな。

 それにここは少し騒がしいな、養殖池の横の施設が道場か何かになっているようで少し騒がしい。


「マシューさん二、三質問よろしいですか?」

「ティムさんどうぞでちゅ」

「アマーゴの養殖池の温度管理はどうしてますか?あと餌は何をやっていますか? アマーゴは成魚を捕まえてきて育てていますか?」


「温度はできるだけ冷たい水を使ってまちゅが管理まではしていないでちゅ、エサは小麦粉に乾燥させた川虫を混ぜてこねたものをあげてまちゅ、アマーゴは川から成魚を捕まえてきて入れてまちゅ」


「なるほど……わかりました。まず水ですが二十度を超えてはいけません、冷たい湧水や、井戸があればその水を使った方がよいでしょう。あまり冷やしすぎてもいけませんが、二十度以上にならないように管理した方がいいでしょう。餌についてはそれでもかまいませんが、成魚を入れるのはやめた方がいいです。成魚は人工の餌をあまり食べません。稚魚から人工の餌に慣らしていると成魚になっても人口の餌を食べるので稚魚をいれるほうがいいでしょう」


「周りの環境も悪いですね。アマーゴは音に敏感な魚なので、あまり周囲が騒々しいとストレスが溜まってしまいますので、静かな場所に養殖池を移した方がいいでしょう」

「おお~なるほど早速、飼育環境を見直しまちゅ」

「ティムさんはアマーゴの研究でもしてたんでちゅか?」

「昔、興味があって色々調べたり飼ってたりしてたので」

「なるほどでちゅ! アマーゴの養殖が成功したら真っ先にお知らせしまちゅ」

「僕も国に帰ったら研究してみます」

 研究はしていたが養殖という発想はなかったからな。

 グロリオーサ王国の場合、養殖しなくてもその辺の川で簡単に取れるしな。

 しかし安定供給という面では養殖した方がいいのは間違いないな。

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