魔王になる?決意と試練と覚悟?
まさかのOK発言でエヴァとの結婚(口約束ではあるが)を決めてしまったのだが、色々と複雑な事情があるようだった。
貴族会議での承諾(王や妃がいない為、貴族会議が設けられ国の政治などを決める場として設立されたみたいだ)などが必要らしく、婚姻もなかなかに面倒らしい。
しかも貴族の中にも王位を狙う輩もいるらしく、今はうまく押さえつけているみたいだがいつ反旗を覆すかわかったものじゃないと。その為に俺には王位に就くためにやらなくてはならない事が色々とあるみたいだ。
一番最初に言われたのが一番驚いた。
「博文よ、まずはそなたの名前をどうにかせんとな。」
なんと、王位に就くために名前さえも変えないといけないらしい。
30年慣れ親しんだ名前とおさらばってことだが、今さらそんな事はどうでもいいか、と諦め話を聞いた。
「そうじゃなぁ、マイク・タ〇ソン・ベルなんてどうじゃ。」
いやいや、それはまずいでしょ・・・・
パンチ一撃で地位を獲るか、ベルトじゃないんだから・・・かっこいいが俺では名前負けだ。
「その名前はすばらしいのですが、ご遠慮させてもらいます。」
「そうか、ん~名前を付けるのも難儀なものじゃの。そちの案はなにかないのか。」
しばらく考えた。これからその名前で人生を生きないといけない、後悔しない名前でないと。
そして口を開いた。
「バックス・ローレン。」
エヴァはしばらく考え込むと顔を上げ、満面の笑みで答えた。
「おっ、よい名ではないか。では博文、これからは、バックス・ローレン、そして貴族会議にて王位、婚約できたならば、バックス・ローレン・ベルと名を名乗るのじゃ。」
「かしこまりました。それで、私はこれからどのような行動をすることに?」
「まずは名声を稼ぐのじゃ。」
「名声と言われますと、戦争で功績をあげろということですか。」
「戦争もそうじゃな、もっともよいのは戦争での功績じゃ。しかしそれだけではダメじゃ。」
「それ以外といいますと、あとは人脈ですか。」
「そうじゃ、人脈は王にとって絶対不可欠なものじゃ、童が色々と紹介するのもいいが、自分で探し人脈を作ったほうがその人達はそなたに絶対の忠誠を捧げるであろう。」
戦争の功績はまだ何とかなりそうだが、人脈は大変そうだ。もともとこちらの知り合いなどいなく、(むしろ現実世界でも人脈など皆無だったかましれない・・・)どうすれば・・・面倒だな。
そもそも、王位に付いていいことあるのか?ただたんに忙しいだけでは?
それでは俺の異世界にきての理念”楽な生活”からかけ離れるのでは?と思った。
エヴァは何かを察したらしく俺にこう言った。
「王位に付けばすべてが思いのまま、食事、女、娯楽、様々なものが手に入るぞ。しかも王位に就いてしまえさえすれば、簡単な指示だけだしパーティー三昧の日々じゃ。」
エヴァはにやりと口の端を吊り上げそう言った。
なななな、なんと、それは”楽な生活”というより”輝かしい生活”ではないか。しかも婚約者の口から、”女”まで手に入ると、ハーレムを作りパーティー三昧、最高ではないか。
俺は異世界理念を”輝かしい生活”へと考えを変えた。
輝かしい生活、考えからするに”堕落した生活”だと他の人は思うだろう。
そうなればまず俺にでも簡単にできること。
そう、戦争だ。戦争で功績をあげるのだ。
かなり甘い考えの俺はさっそくエヴァに聞いた。
「では、私でも簡単にできそうな戦争での功績をあげたいと思いますので、いつ戦争を行うか教えてもらっても。」
「馬鹿をいうでない。そう戦争がほいほい起こってはたまらんわ。まだ半年は起きんじゃろ。」
どうやら頻繁に戦争は起こらないみたいだ。まぁ確かに戦争ばかりではどこの国ももたないだろう。
いきなり壁にぶちあったた俺にエヴァは
「とりあえずは騎士団に所属しその中で功績を徐々に上げてくのが得策じゃろうな。」
「騎士団というと先ほどのですか。」
「そうじゃ、騎士団というても戦争だけが騎士団の仕事ではない。町の近隣にでたモンスターを退治し町を守ることや要人の護衛など色々あるのじゃ。」
モンスター退治か、なんだか冒険者みたいで面白そうだ。
そんなことを考えていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。
そのノックに対しエヴァが返事をすると、メイドが部屋に入ってきて食事の準備ができたと伝えた。
ついに王宮の待ちに待った食事。
それは想像をはるかに超えた豪華な食事だった。そのほとんどが見たこともない食事なのだが、匂い、見た目、すべてがそそられる料理の数々、そんな食事を堪能しエヴァの部屋に戻った。
部屋に入ると、複数人のメイドが一列に並びお辞儀をして部屋から出て行った。
エヴァはそのままベッドにダイブしゴロゴロしている。
(姫様よ、そんなはしたなくていいのか。)
そう思っていると。
「バックス、風呂にでも入るか。」
一瞬、誰の名前を呼んでいるんだ、と思ったがそれが自分の新しい名前だと気が付き返事をした。
「かしこまりました。ではエヴァ様からお入り下さい。私はエヴァ様が出られた後に入ります。」
「なにを言うか、仮にも婚約したのじゃ、一緒に入るぞ。」
「いえいえ、さすがにそれは・・・」
このお姫様はまた訳の分からないことを言い出した。
仮に婚約したといっても、今日会ったばかりの男女が風呂を一緒に入るなどは常識外れである。
「ぬぅう、童の命令が聞けんのか。」
なぜかぐずりだしてしまい、しょうがなく一緒に入ることに。
風呂場までは、部屋の隅に扉がありそこを開けると洗面所(かなり豪華な洗面所)と呼ぶには恐れ多いほどの場所にでて、さらに奥の扉を開けると風呂場があった。
風呂場はさすが王宮の姫様専用の風呂だけあり、かなり広い。
ヒノキ風呂の大理石版みたいな感じだ。
風呂に感動・・・というよりも目の前にいるエヴァのプロポーションのよさに感動していた。
エヴァは風呂に行くと、すでに服を脱ぎタオルを体に巻いていた。
しかしタオルを巻いていてもその身体つきは露となってしまっていて、目のやり場に困ってしまう。
(17歳恐るべし。)
そんなバカなことを永遠と考えながら体を洗い流し風呂に浸かった。
エヴァはやはり大胆というか、常識なのかもしれないが、風呂に浸かる前にタオルを体から取っていた。もちろん俺の腰のタオルもエヴァによって取られてしまっている。
17歳とは思えない身体つき・・・弁当屋の時を思い出し、ひたすら客だった爺さん婆さんの事を思い出していた。男なら分かるだろう、そんなどうしようもない事を思い出さないとダメな状況を。
そんなどうしようもない事を考えている俺に対し、エヴァは貪るように俺の体を見ながら質問攻めだ。
「魔族といっても身体つきも人間と全く変わらんのじゃがそのようなものなのか。」
「そうですね。とりあえず風呂から出ませんか。」
「そもそも、魔族など聞いたこともないのじゃが、そんな種族本当にあるのか。」
「本当です。とりあえずすぐにでも風呂から出ませんか。」
「バックスは先の模擬戦で異常な強さを見せたが、人間よりも魔族のほうが身体能力が高いのか。」
「私以外の魔族を知りません、そもそも私以外に魔族がいるとも思えませんのでわかりかねます。それよりも風呂でませんか・・・・」
質問攻めで爺さん、婆さんの事が考えられずかなりピンチだ。
(頼む、爺さん、婆さん俺に力を分けてくれーーーー)どうしようもない事を心の中で叫んでいた。
「なんじゃ、こんないい女が隣で、しかも裸でいるのに勿体ないとは思わんのか。」
いやいや、それが大問題なんです。今日会ったばかりの女性の前で男の欲情した姿など見せられません。
(これは何かの試練なのか)
心の中で悲痛な叫び、しかしこのままではまずいと思い素直に言おう。
「これ以上エヴァ様のこの姿を見ていると押し倒してしまいそうなので。」
「なんじゃ、他の女と遊びたいと言っておった割に奥手なんじゃな。童は構わんよ。」
エヴァが笑いながら言ってきた。
すいません。耐えられませんでした。いただいてしまいました。
しかしエヴァは初めてだった・・・(さすがに結婚の覚悟を決めるしかないか・・・いや覚悟を決める前に流れで決まってしまっているのだけども。)
風呂から出た後(風呂の中で色々してしまった訳だが)エヴァから様を付けないようにと、敬語をやめ普通に親しく話すようにと言われた。
風呂から出た俺たちの姿は、バスローブに身を包んだ姿で、そのままベッドに座った。
「バックス、やはりお主に一目惚れしたのは正解じゃった。初めてであんなに良いとは、最初は痛いと聞いておったので少し心配しておったのじゃぞ。」
エヴァは初めてだった。
いいのかそれで!!とも思ったが止まらないものはしょうがない。流れでこうなってしまったのだ。
それともう一つ、俺は童貞ではなく、そこそこ経験人数は多かった。
(大半は素人ではないのだが・・・)
「それはよかった。それよりも、今日は色々あって疲れたからそろそろ寝ようか。」
そう言って布団の中に入ると、エヴァからキスをされ、「おやすみ、童の旦那様」と語尾にハートマークが付きそうな言葉を優しく囁かれ眠りに落ちた・・・嘘だ、またも襲ってしまった。
次の日の朝、異世界に召喚された初日にいきなりスッキリした幸運な俺は、小鳥の鳴き声を聞きながら目が覚める予定だったのだが、予定外の音で目が覚めた。
ドーーーーン、バコーーーン
キャーーー、ワーーーー
そんな何かが当たり壊れる音、叫び声だった。