流される人生
エヴァの奴隷になった俺は、エヴァの馬車に乗り王城へ向かった。
王城はさすがとしか言えない、中世の城をイメージしてくれたら分かると思う。
王城前には大きな門、そして門番が2名、門を潜ると広大な庭、中央には池みたいなものがいり馬車は更に奥へと進んでいき城の前に着いた。
城の中に入るとメイドやら執事やらたくさんのお出迎えがあり、そのままエヴァの部屋まで案内された。
エヴァの部屋はかなり広く、この部屋だけでマンション1室分あるんじゃないかと思えるほどだ。そして部屋の中央には大きなベッドがあり、部屋の角には化粧台、タンスなどが置かれていた。
広い部屋に落ち着かずにいると、コンコン、「失礼します」とメイドが3名入ってきた。手には男物の服があり、そのままこちらに向かってきた。
「大塚様、服のご用意ができました。こちらにお着替え下さい。」
メイドの一人が服を渡してきた。
しかし、なぜこのメイドは、奴隷である俺に敬語を使うのか?不思議に思い、
「奴隷の俺に敬語はダメじゃないの?」
素直に聞いてみた。
「ベル王国の法律では、人間族の奴隷を禁止しております。それは、いかに王族でも破ることはできません、なので我々にとって大塚様は、姫様のお客様になります。」
(なるほど、確かに人間族の奴隷を禁止しているとは聞いたが・・・まぁこれ以上の質問はエヴァに聞くとしよう。)
「わかった。とりあえずこの服を着ればいいんだよね?」
「はい、後程、姫様もこちらの部屋においでになられますので、どうかお寛ぎ下さい。」
寛げといわれてもなぁ
この10年間、俺が住んでいたのはワンルームのアパート、実家も平屋で大きくはない、なのでこれだけ広いとどこにいればいいかわかっらなくなる。
とりあえず着替えることに。
メイド達が持ってきた服は、いわゆる執事がよく着ているような服、あきらかに大きいような気がしたが着てみると、自分の体の大きさに合わせ変化した。(こうゆうのはお決まりなんだよな)
着替え終わり待つこと15分ほどで扉がノックされる。
返事をし入ってくるエヴァを迎えた。
「よく似合っておるな、その服。」
「ありがとうございます。」
「お、ちゃんとした言葉使いができるではないか。」
「もちろんでございます。」
当たり前だ。
実は、言葉使いを注意され、直さなければ飯抜き、と言われたのだから直すに決まっている。
言葉使いに気を付けておけば、うまい飯にありつける。そのぐらいのことならいくらでもしてやる。
弁当屋を10年やり客の接客ばかりやっていたのだ。言葉使いに関して苦痛、嫌気などおこるはずもない。
「おぬしのことは、何と呼ぼうか。」
「姫様の好きなように呼んでいただければ。」
「馬鹿」
「おい!!」
とっさに言葉がでてしまった。
とゆうか、いきなり人の呼び名を’馬鹿’などとつけるやつがあるか!!
さすがにそれはないということで。謝りつつも呼び名を訂正することに。
「申し訳ございません。’馬鹿’はちょっと・・・そのまま名前で’博文’とお呼び下さい。」
「なんじゃ、ダメなのか。まあよい。ならば童のことも’エヴァ’でよい。」
「いえ、姫様のことを名前で、しかも呼捨てなどできません。」
「堅苦しいの、いいのじゃ博文はここでは一応客人の扱いなので誰も咎めたりせん。」
「いえ、ですが・・」
「面倒くさいの、童がいいと言うのだ、そう呼べ。」
ほんとにいいのか?
俺も面倒くさくなってきたので了承することにした。
「それで、エヴァ様。お一つ聞いてもよろしいでしょうか。」
「様・・・まあよいか。なんじゃ。」
「なぜ私を奴隷として買ったのです。あそこには法律上で奴隷にしても問題ないエルフ達がいましたが、なぜ人間族の私なのですか。」
疑問をぶつけてみた。
なぜ?
わざわざ法律を破り奴隷にしなくてもここには人間のメイド、執事など世話をしてくれる人がいるのにだ。
わざわざ俺を、しかも法律を無視してまで買う必要性はないのだ。
ただし、もしも俺のステータスの事を知っていれば別かもしれないが。
少し警戒する必要があるかもしれない。
「なぜか、そうじゃの・・・一目ぼれじゃ。」
開いた口がふさがらない。
いきなりなにを言い出すかと思えば
(一目ぼれだとぉぉ)
呆然としている俺を見ながら話しは続いた。
「確かに奴隷商には新しい奴隷を探しに行ったのじゃ。しかし博文を見た瞬間に心を射止められたのじゃ。そして童のそばに絶対にいてもらうと決めた。そして買い、それに承諾してくれたから、博文はもう童の物じゃ。」
(いやいや、いきなりの告白?少し最後のほうがおかしい気がするが・・・)
これはどう答えたらいいのか・・・拒否すればせっかくの飯、風呂が無くなる、しかし受け入れれば・・・ただのロリコンになってしまう気がする。
しかしまず断れるのか?そう思い直すと、なぜか無理な気がした。
俺はもともと流されやすい人間だった。むしろ流され続けた人生を送ってきた。
中学を行かなくなったのも、高校に行かなかったことも、すべて周りに流されてきたのだ。
ここである考えにいたった。
ここは異世界、知り合いいない、そもそもロリコンがあるのか分からない。てかエヴァは17歳、こちらでは成人、そう、大人なのだと。
俺は考えるのも面倒くさくなりまた流されながらの人生でいいかっと思った。なので・・・
「ありがとうございます。これからよろしくお願いします。」
素直にそう答えた。
「うむ、そうじゃ、博文に城内を案内してやろう。」
そうして2人で部屋を出て城内を案内しえもらうことになった。
かなり広い城内には、余裕で100人は入れるスペースの部屋?みたいな所や、数十人で食事がとれる場所、広いbar、広い(銭湯かと思えるぐらいの)風呂場、そして何室あるかもわからないぐらいの客室があった。
そんな感じで城内を案内してもらっていると、何やら声が聞こえてくる。
エヴァに声が聞こえてくるほうに案内してもらうと、広い庭で剣を振るう騎士達がいた。
きっと稽古や、訓練をしているのだろ。
剣をひたすら素振りするグループや、木刀みたいなもので戦うグループなどがいた。
「エヴァ様、あちらは?」
「彼らはベル王国の騎士等じゃ、毎日ここで鍛錬しておる。あとあの木のそばで腕を組んでおるのがベル王国騎士団団長のステファン・ブラウンじゃ、王国最強の騎士じゃな。」
なるほど、確かに一人だけ雰囲気が全然違う。しかしもう一人。
「あちらの短剣を2本持ちの方も強そうですね。」
「ようわかったの。」
エヴァが目を見開きこちらを見ている。
(え?まずかった?)
「多少の剣術の心得はございますので。」
そう言ってみたが、俺には鑑定があるのですぐに分かる。鑑定結果がこれだ。
ステファン・ブラウン
年齢・34
種族・人間
装備・オリハルコンの大剣、オリハルコンの鎧、スピードのブーツ
ステータス
レベル56
HP(体力) ・6000
MP(魔力) ・500
筋力(攻撃力)・5500
耐性(防御力)・4500
速さ(スピード)・1500
特殊スキル
感覚上昇
ステファンの見た目は、髪は短髪の黒、目は少し茶色だ。身長190センチはありそうで、身体つきも鎧の上からでも分かるぐらいゴツイ感じだ。
グレン・アントロール
年齢・25
種族・人間
装備・ミスリルの双剣・ミスリルのチェーンメイル・羽のブーツ
ステータス
レベル54
HP(体力) ・3500
MP(魔力) ・1500
筋力(攻撃力)・3500
耐性(防御力)・3000
速さ(スピード)・2500
特殊スキル
速度上昇
グレンの見た目は、髪は長くきれいな緑色、目も髪の毛に似たきれいな緑、身長は180センチ前後で俺より少し低いぐらいだろうか。身体つきは細くスタイルがいい、かなりのイケメンだ。
「ほう、剣術がつかえると。」
「多少でございますよ。」
「見てみたいな。」
これは嫌な流れになってきた。
エヴァがステファンを呼び紹介してきた。
「初めまして、ベル王国騎士団団長ステファン・ブラウンです。姫様のお客人だしたか、どうぞゆっくりと見て行って下さい。」
「初めまして、大塚博文です。ありがとうございます。」
「ステフ、博文は剣術ができるそうじゃよ。」
エヴァが爆弾を投下した。
やはり嫌な流れだ。
「そうでしたか、もしよかったら騎士団の者と模擬戦なんてどうでしょう。」
(やっぱりかぁぁあああ)
俺は丁重にお断りをっと思い口を開くがエヴァに邪魔される。
「いえ、おこと・・「よいじゃないか、博文戦ってみよ。」
(はぁ、やっぱり流されるしかないのか)
断ることを諦め流れにまかせ、なるようになるかっと投げやりに考えを決めた。