新たな出会い
国民に宣言してから一週間、俺は毎日エヴァ先生とジハード先生による勉強をしている。
歴史、礼儀、舞踏会のダンス・・・色々と王様の覚える事は多い。
そんな中、俺は暇を見つけはメイド達との団欒、騎士達の訓練、森にストレス発散とモンスター退治に出かけている。
メイドと言えば、初めてこの世界で会ったエルフのエレンさんと少女がいた。少しの間でかなり仲良くなれたと思う。
騎士団の訓練・・・むしろグレンと模擬戦ばかりしている。
グレンから鍛えてほしいと頼まれた為、一日一時間の模擬戦をしている。グレンのレベルは前と変わらず五十四レベルなのだが、レベルだけが全てでは無い。
レベルとは単なる筋力などを上げるための物。自ら鍛え技を磨かなければ意味が無い。
たとえば、レベル一の二人がいるとする。一人は技術を磨き、もう一人は何もしないと。技術を磨いたレベル一のほうが圧倒的に強いのだ。むしろ何もしていない上のレベルの者にも勝てるだろう。
それに、この世界の人々にはレベルの概念はなく。むしろレベルを図れるのは ”鑑定” を持つ俺だけだと思う。
実際にグレン達にレベルの事について聞いてみたが、全く知らなかった。
森へは、ストレス発散に一時間程度行く。森へは城からスキルの飛行を使って行く為、森までは五分と掛からないで行けるのだが・・・度々、従者の誰かが付いてきた。たまには一人になりたいのだが。
森でのストレス発散と言っても目的もある。レベル上げだ。
俺が最後に自分を鑑定したときのレベルは二十五レベル、百レベルまでは、まだまだ先は長い。なので森でモンスターを狩りまくった。
(てか狩っても狩ってもモンスターっていなくならないんだよなぁ。)
そんな感じで何事もなく・・・いや何事も無い事は無かった。
俺の夜は毎日壮絶な戦いであった。
まず風呂。
前にも言ったが、俺は一人で風呂に入りたい。
しかし、エヴァは嫁として、従者は下僕として、俺の背中を流すと言って無理やり入ってくる。
全員の目を盗んで入っても・・・
全員が寝たことを確認しても・・・
俺がジハード達、貴族の風呂場に行っても入ってくる。迷惑を通り越し、もはや恐怖だ。
しかもその事があって、レイが女性と分かってしまった。
以外に早くばれた・・・。そのせいでグレンから小言を言われてしまったし。
これで終わりかと?
風呂だけではない!! 寝る時もだ!!!!!
寝る時は普通、エヴァと二人で寝るのだが、いつの間にか従者の誰かが布団に入り込んでくる。温める為だと・・・。エヴァと寝るのは婚約したからいいが。
なぜ従者が布団に入ってきて困るのか。確かに女性に、しかも美女達と寝れるのだから困る事無く、むしろ嬉しく思うと勘違いするかもしれないが・・・ベッドはそこまで大きくないのだ。いや普通に見たら、二人で寝るには大きいかもしれない。しかし、それが三人、四人と増えればどうなるか分かると思う。かなり窮屈なのだ。
しかも俺は男で性欲もある。でもこんな人数相手にしてしまったら、干からびてしまう。
一度、性欲が我慢できずに大変なことになったのだ・・・。
エヴァと終わればもう一人が・・・この後の説明は遠慮させてもらうが・・・。
とにかく夜は戦争だった。
そして一週間が過ぎ俺は一人で森に向かっている。そう、一人でだ。
従者の目を盗み、そそくさと城から飛行で飛び立っていったのだ。
そして森に着く。久しぶりの一人行動。一週間と短く思うかもしれないが、体験するとかなり長く感じるのだ。
そんな久々の一人行動に気分がよくなりモンスターを次々と殲滅していく。
ゴブリンを炎の魔法で。
オーガを二対の刀で。
スケルトンを拳で。
俺は爽快にモンスターを倒し、ある程度時間が経つと鑑定で自分を見る・・・
しかしレベルは上がらない。ここにきて全くレベルが上がらなくなったのだ。
モンスターが弱すぎて経験値的な物が少ないのか・・・しかし従者は皆軽快にレベルが上がっているし。
考えている俺は、あることに気がついた。
そう、この世界に来る前の出来事を・・・
異世界のリンクをした時のレベルは二十レベル。この世界に来る前に白い部屋で四年間、俺はひたすらモンスターと戦っていた。(魔人となってからは三年だが)
従者の今まで戦ってきた数をはるかに超える戦い、しかも森に出てくるゴブリンなどの雑魚などではない。てことは・・・
魔人族とはレベルを上げるのに、かなりの経験値的な物を必要とするのでは? しかし一つレベルが上がると、増える能力値はかなり高い。そうゆうことか。
そうすると、この森に来ていたのは本当にただのストレス発散だけの意味か・・・
少し無駄な事をしていたと後悔して、時間的にも帰る頃なのでスキルの飛行を使おうと・・・
ヒューーーーー。ものすごい音が頭上から聞こえ俺にぶつかった。
目が覚める。
周りは木々が生い茂っている。
薄らとする意識の中で森にいる事が分かる。
「あれ? なんか音がして俺に・・・」
「ごめんなさいね。久しぶりに飛んだから加減が分からなくて」
あれ? この声だれ?
ん? 頭の下がプニプニしてる。
困惑する状況の中、頭の下の感触に気がつく、そしてそのまま頭を後ろに倒すと。
エルフだ。かなりの美女のエルフに膝枕されていた。
俺は体を起こそうとするが・・・痛くて体が動かせない。
「ごめんなさい。あなた、私がぶつかってしまって死にかけていたの。一応回復の魔法は掛けたんだけど・・・瀕死の状態からを回避できるぐらいまでしか体力が回復してないの」
えっ・・・空から落ちてきたのってエルフなの!? しかも瀕死って!!
「とりあえず今は死ぬ危険は無いって事ですよね?」
「ええ。あっそうだ。私はセシル。一応ラカタ王国の四人の王の一人よ」
はぁぁぁぁぁぁぁあああ。どうゆう事!!?? なんでそんな人が俺の上に落ちてきたの??
俺にはセシルと名乗るエルフの言っている意味が分からなかった。頭の中は ? で埋め尽くされている。
そんな俺の状況を理解してか。
「今はとにかく休みなさい。その間にも回復の魔法を掛けておくから」
回復の魔法を掛けてくれるセシル。俺はその回復魔法を受けながら眠りについた。
目が覚める。どのぐらい寝たのだろう。空はすっかり暗くなり周りは闇に包まれていた。
しかし俺の頭の下の感触は眠りに就く前と変わらず気持ちがいい。
そんな馬鹿な事を考えていた。
「もう起きたのですか?」
セシルが俺の顔を覗き込んできた。
ドキッとした俺は反射的に体を起こし、セシルにお礼を言った。
「ありがとうございます。御蔭ですっかり良くなりました」
ん? てかこの人が原因でこうなったんだよね? まっいいっか。
「いいんですよ。ところで、あなたがバッカス陛下かしら」
「はい。陛下って言われても、なったばかりですけど」
未だに陛下と言われると照れてしまう。
「やっぱり。良かったわ。すぐにお会いできるとは思っていませんでしたので」
セレナさんは俺に会いにきたの? なんで??
「あのぉ、俺に会いにって・・・どうゆう意味でしょう?」
「そのままの意味ですよ。国王会議でも隠さずに言っていい事になったので言いますが。あなたは、この世界の人間ではないのでしょ」
「そうですね・・・って、えぇぇ、知ってるんですか??」
「やっぱり。確信は、私達にも無かったのですが」
これって気づかれてもいい事実なの??
俺は少し怖くなり質問した。
「そ、それで、ラカタ王国としてはどのような話が??」
「そんな脅えないで下さい。別に殺そうとかそうゆう話ではないですから」
とりあえずはホッとした。
俺がなぜホッとしたか。それは鑑定をすでにしていたからだ。
セシル・ラカタ
種族・エルフ(神の使い)
装備・神域の衣・復活の首飾り・神木の杖
ステータス
レベル120
HP(体力) ・50000
MP(魔力) ・80000
筋力(攻撃力)・32500
耐性(防御力)・32500
速さ(スピード)・30000
特殊スキル
自動魔法・魔力吸収・魔力半減・使用魔力半減
出鱈目だ。むしろレベルって百以上いくのかよ!! っとツッコミ入れそうになった。
もし彼女に攻撃の意志があれば今の俺では勝てない。むしろ魔王種になっても勝てるか分からない。スキルが魔法に偏っているが、どれも滅茶苦茶な物ばかり。
正直、この世界では俺が最強だと心の中では考えていたが・・・上には上がいる事に気がついた。
「とゆうか神の使者ってなんですか?」
俺は心の中で疑問に思った事を口に出してしまった。
「えっ、なんであなたが知っているの!?」
あっ、馬鹿! 俺なにを口走ってんだ。
「あっ・・・その・・・」
「まあ、隠す必要ないって会議で決まったからいいですけどね。くれぐれも、神の使いの事だけは、他の者には言わないで下さいね」
そりゃーセシルさんに言われたら誰にも言いませんとも。なので早くお帰り下さい。
俺は心の中でそう願った。いくら美人だからと言っても、出鱈目な強さを発揮されてはたまらない。
俺が心の叫びをしているとセシルさんから仰天発言。
「そうでした。しばらくお世話になりますね」
「えっ・・・」
「しばらくあなたの傍に就いて行動を共にしろ。それが会議で決まった事ですので。よろしくお願いしますね」
セシルさんは満面の笑みでよろしくしてきた。
そんな俺は、断るのも怖く、泣きそうな顔でよろしくした。
その後は、すっかり帰宅が遅くなっているので、急いで城に戻ることに。
セシルさんも飛行できるのですぐに帰ると伝えると・・・「分かりました・・・あっ、回復に魔力を使ってしまいましたので。できれば掴まっていいですか?」
嘘だ!! 魔力が無くなるはずがない。一番出鱈目なステータスは魔力なのだから。
しかしそんなこと言えるはずもないので、俺が抱えて飛行することになった。
飛行中は俺が手を放しても大丈夫なぐらいセシルさんは俺にがっちりと掴まっていた。
そんな中城が近づくにつれて、エヴァ達が怒っているよな? と予想しながら、重たい雰囲気で城に到着した。
城に帰った俺達を迎えてくれたのはエヴァだった。
顔は笑っている。しかし目元をピクピクさせて・・・確実に起こっている。
はぁぁぁ、説明するのがダルイなぁ。