表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界初の堕落した魔王になってやる  作者: チョビ髭
ベル王国反乱編
12/62

心を砕く

 目を開けるジハード。

 目の前の光景は、顔をメイルで隠す騎士が右手を犠牲にジハードを殺す筈の剣を止めていた。

 グロークは目を見開き驚いている、

 

 「貴様、騎士の分際で裏切る気か!!」


 顔の表情が分からない騎士があざけ笑うような声をだし。

 「騎士団すべてがお前の言いなりだと思うなよ」

 

 ジハードを助けた騎士がメイルを取り外すとその場にいた貴族、騎士の一部が驚きの表情を見せる。 

 騎士団団長、ステファン・ブラウンだったのだ。


 捕えられているはずの団長がなぜ? ここにいるほぼ全ての人が驚くのは当たり前だが。

 

 ジハードも同じだ。呆けた顔をしながら開いた口が塞がらない。そうしているとジハードに近づくもう一人の騎士がメイルを外しながら近づいてくる。またも驚く事となった。

 副団長(団長の側近)、グレン・アントロール。彼も囚われの身となっていると聞いたはずなのだが目の前に現れた。


 グロークは驚くがすぐに騎士達に「殺せ」と命令するが騎士の数名がグローク達に剣を向ける。


 そう騎士団の数名がまだエヴァに忠誠を誓い、この反乱を中から壊すことを決意していたのだ。そのことはジハードさえ知らなかった。

 するとちょうどランドが牢からあわてて戻ってくる。


 「グローク様、ステファン達が・・・」


 牢に向かったランドはステファン達が牢にいない事を知るや急いで戻って言葉の途中で絶句した。

 まさにステファンとグレンがグロークに剣を向けているのを見たから。いやそれだけではない。数名の騎士達もグロークに剣を向けている。意味が分からなかった。


 「ランド、掌握し損なったな」

 

 グロークから怒りの声が放たれた。

 騎士団の掌握はランドの仕事だったが、数名の騎士が掌握しきれていなかった事実に怒りをあらわに顔を歪ませる。

 ランドはその声に脅えてしまって声が出ない。


 「まぁ良い。相手は数名しかおらぬ。全員殺せるな」


 ランドは大きく首を頷かせる。


 「ではすぐに殺せ」


 ランドはすぐに腰から剣を抜く、そして騎士達に叫んだ。


 「反逆者共を殺せ!!!」


 他の騎士達がステファン達に切りかかる。


 貴族会議室は広い、それもかなりの大きさだ。人が百人入っても余りあるほどに。

 ステファン達は切りかかってくる騎士を何とか広い部屋をうまく使い避けている。数は向こうが有利。しかし実力はそこまで劣っていないと。部屋の広さをうまく使えばどうにか・・・


 ステファン達は広い部屋をうまく使い一人ずつ何とか倒していく。しかしジリ貧だ。圧倒的な数の暴力、切っても減らない敵、しかも扉から敵がどんどん湧いてくる。


 ランドは確実に勝てると確信した。そして笑みを浮かべる。


 「グローク様、後は時間の問題かと」

 「うむ。そうだな。」

 「はい。ですのでグローク様は姫様のお相手をされては? 護衛には私が付きますので」

 「まぁこの状況ならお主がおらんでも良いか。ならエヴァの元へ参るか」

 

 グロークはジハードを横目に見ると笑みを零しながら。


 「ではジハードよ、私は妻の元へ行くとしよう。地獄でこちらを眺めるとよい」


 グロークは笑い声を上げながら部屋から出て行った。


 ジハードは何も出来ないまま、グロークが部屋から出ていくのを眺めるしかなかった。ステファンに自身の事は良いからグロークを追えとも言いかけたが・・・とてもそんな状況ではなかった。自分を守りながら戦うステファン達。いくら騎士団団長と副団長がいようとも戦況はどんどん悪くなる。


 グレンはこの状況ではジハードを逃がす事は出来ても勝つ事はできない。正面から戦ったら軽く負けると、ここまではできたが敵の数が多すぎた。


 ステファン達はグロークが城の警護を捨てここに全騎士を配置するとは考えていなかった。なのでジハードが殺されそうになる寸前まで行動ができないでいたのだ。


 グレンは考えるが突破口が見つからない、何処にも光が射す道筋が見えないでいた。いや道筋があるにはあるのだが、それは仲間の騎士と自分の命を捨てる行為だった。自分の命ならいくらでも捨てられる、しかし仲間の騎士達に一緒に死んでくれなど頼めないでいた。するとステファンが叫ぶ、そして仲間の騎士達も。


 「グレン!!  ジハード様を連れてここから出ろ! ここは俺達が何としても道を作る。だからそこを突破して行け!!」

 「グレンさん行ってくれーー」

 「あのクソの野望を切り捨てて下さい」


 グレンは絶句した。自分が考えていて言えなかった考えを、団長、仲間の騎士達が叫んできた。しかしここは自分ではなく団長のほうが・・・そう考えている事を察したのかステファンが叫んだ。


 「若いお前が未来を掴め!! そしてあの男の元までジハード様をお連れしろ。命令だ!!」


 ステファン団長の思いを聞き届け、グレンは決心した。そして大声で「ジハード様をお連れし姫様を必ずやお助けします」そう叫んだ。


 グレンの叫びを聞くとステファンが仲間に叫んだ。


 「行くぞーー」


 おおおお。叫びながらグレン達の通る道を作る。一瞬だが隙間ができた。

 

 グレンは仲間が作ってくれた隙間をジハードを連れ走った。まるで命を燃やすかの如く。またジハードもだった。


 ステファン達が作ってくれた僅かな道、隙間を掻い潜り部屋から出ると本館まで必死に走った。最後の団長命令を守るために、あの男に会うために。


 ステファンが言ったあの男。グレンは誰の事を言っているのか分かっていた。

 ランドと模擬戦をし、圧倒的なまでの強さをしていた人物、バッカスだと。

 

 「ジハード様、バッカス殿はどちらに」


 グレンは前からくる敵を何とか倒しながら聞いた。しかし


 「今は森へとでておる。いつ戻ってくるか・・・」


 絶望的だった。

 ここまで出てきて希望の人物がいないと分かったからだ。

 しかし、絶望的なだけで絶望はしていない。いや、ここで諦めるわけにもいかなかった。団長、仲間が命を賭して逃がしてくれたのだ諦められる訳がない。

 

 「バッカス殿はいつも姫様の部屋においででしたよね」

 「そうだ」

 「では帰ってくる際も姫様の部屋に来るということですね」

 「無論そうだが・・・バッカス様が出られて約六時間ほど。戻っているかは・・・」


 戻る場所は分かった。 

 後は賭けるだけだ。


 本館への通路が見えてきた。

 後ろからは数多くの騎士達が追ってくる。

 しかし迷う事などない! 姫様の部屋まで・・・・


 グレンは通路である者を目にした・・・


  

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 エヴァの部屋で待機する俺達だが、城の様子が明らかにおかしかった。

 飯を出すメイドの様子も他にも色々だ。まず騎士の姿を見ていない。

 

 セレナが口を開く。


 「そういえば門にも騎士達の姿がありませんでした」

 「そういえばそうだな」

 

 俺は考える。

 朝、城を出る時にいた騎士達、しかし帰ってくるとその姿はなかった。

 城の中を警護する騎士までもいない。


 部屋で考え込んでいるが答えは分からないまま、特に部屋に居ないといけない理由もない為、部屋から出る事に。

 

 エヴァの部屋は城の本館五階に位置している。部屋から出ても人っ子一人いない。

 そのまま城の中を探索しながら下の階へと降りていく・・・四階・・・三階・・・

 

 三階へと降りてくると怒声がどこからか聞こえてくるような気がした。気のせいか? そう思ったりもしたのだが、聞こえてくるような気がした方向へと足を向ける。怒声が段々と大きく、気のせいではないと確信した。


 かなり嫌な予感がする。

 しかし行かないと状況が分からない。


 そんな事を考えていると、別館へ続く通路が見えてきた。

 何かが叫びながら走ってくる・・・

 

 驚き過ぎて目が点になる。

 騎士達が剣を振り回し此方に向かってくる。先頭にはグレンと、エヴァに最初に紹介された貴族のジハード。必死の表情で走ってくる・・・驚きから恐怖を感じてきた。


 そして俺の出した答えは最悪だった。もし状況が少しでも理解できていれば良かったのだが・・・

 しかしこの状況でだす答えは一つだ!! 逃走!! セレナに逃げる事を伝えた。

 

 俺達は後ろを向きそして走る。

 後ろからは怒声。


 おおおおおおお

 バッカス殿、お待ちください

 おおおおおおおお

 バッカス殿、助けて下さい

 おおおおおおおおお

 おおおおおおおおおお

 たすけてーーーーーーーー

 おおおおおおおおおおお

 博文さーーーーん


 怒声の中、何か聞こえる。助けて??

 俺は振り返ると、先頭で走る二人が今にも泣きそうな顔をしているのを見た。そして何か勘違いしていることに気がつき、二人の隣までペースを落とした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ