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ミスティラ

今日も2本です

 旅人らしい格好になりついでにオーグルの一体から大振りなナイフ…鉈と言ったが正しいか、を頂戴する

 サバイバルをするのにはナイフ一本あるだけで出来ることが飛躍的に増える。草木の除去、獲物の解体…勿論戦いにも。なにしろ安心感が違う

 すぐに町に向かうとはいえ、こういう最低限の装備は大事だと思う。オーグルの死骸にもなんとか慣れ、他に使えそうなものはないかと踏み出したその時


『! 危ないっ!』


 ゴオゥッ!という音と強大な熱を持った炎の玉がおれに迫る。間一髪でミスティラが間に入り、おれの身代わりにその炎を受ける


「ミスティラ!?」


『大丈夫、です。強力な炎玉フレイムボール…どうやら本命の後続隊がいたようです…』


 森の奥からこちらに向かってくる複数の気配がする。10体じゃきかない…その倍はいそうだ。

 またも奥から炎玉がくる。だが今度はミスティラの吐き出した火球が相殺する。さらに連続で放ち、奥のオーグルに直撃させた


『今までにも何度か襲撃はありましたが今回は本気でわたしを仕留めにきているようですね…』


「一旦逃げるか?」


『一緒に逃げてもオーグルの魔術使いが多ければヨシヤとクルクスを守りきれません…それにこの翼では飛ぶのは無理そうです』


 よくみれば翼の片方に大きく穴が…!オーグルたちの叫び声が近づいてきている。このままでは囲まれてしまうっどうする…どうする…!


『ヨシヤ…最後まで面倒を見きれず申し訳ございません…わたしがここでおとりになります』


「だけどそれは!」


『わたしの未来は全てあなたとその子に託せました…いつ死んでももう悔いがないのなら、今あなたたちを生かし逃がすのがわたしの役目でしょう』


言わせたくなかった。だがそれ以外の選択が今のおれにはなかった


「すまな…いや、ありがとう…この子は…クーは責任を持って育てさせてもらう」


 ミスティラは嬉しそうに頷いた


『こちらこそ…短い間でしたがあなたには大きく救われました…ここからオーグルたちがくるのとは反対方向、南に向かうと湖があります。あの一番高い山を目印に行けば大丈夫です。そこまで行けばヒュームの領土に入るのでオーグルたちも追っては来ないでしょう』


『クルルル…?』


ミスティラの気配が変わり不安になったのかクーが顔をだす


『あなたも元気に…ヨシヤに迷惑をかけるんじゃありませんよ…』


 そうミスティラはクーの頭をそっと舐める。クーはよくわかってないのか嬉しそうだ


『さぁ行って…!』


 もうオーグルの姿がチラチラと見えている。急がなければ…もう言葉はいらなかった。最後におれは深く礼をし、湖に向かうため走って森の中に入っていった






『卵がうまれてからこのような日がくるのは覚悟していましたが…』


 ミスティラ自身、【竜が卵を産むのは死が近いから】というのはあまり信じたくなかった。普通に子育てをし、自然に衰え次代に受け継いでく…そんな未来を思い浮かべていた

 だが卵を産んだ直後からオーグルの襲撃を度々受けるようになり、遂に今日隠れ家の近くまで攻められ怪我を負った。このままでは子供を育てるどころでは…そんな切羽つまったところで奇妙なヒュームに出会った

 彼は別の世界からきたという。なるほど知っているヒュームとは魂の質が違うし、なによりヒュームと話したの自体が一体いつぶりだろうか

 また彼の魔力の量や質は普通のヒュームを遥かに凌駕するものだった。彼の魔力がなければ…彼女の魔力も大部分を消耗していたために今日中に孵化させるのは無理だっただろう。そしてクルクス…少しやんちゃなようだがヨシヤをしっかり信頼し、ヨシヤがあの子を見る目はとても優しいものだった

 これなら安心して任せることが出来ると心に決めた瞬間にこのような事態になるとは…運命とは良くできているものだと感心すら覚える

 オーグルの群れが迫る、先の襲撃より強い魔力を備えている者も多い…仮にわたしが逃げればあっという間にヨシヤたちは捕まってしまうだろう

 …一匹でも多くのオーグルを倒す。それがあの子たちに出来るわたしの最後の役目…ミスティラは残った魔力を焔に変え、オーグルの群れに解き放っていった

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