竜の国
ちょっと長めです
『それではわたしのことから…名乗りが遅くなりましたが改めて。この地を治めている竜、ミスティラと言います…フフ名乗ったのなんて何百年ぶりでしょう』
何百年!それは光栄であります
『まずは…ここがどのような国か、ですね』
話を聴くためにとりあえず腰を落ち着けた
『今わたしたちがいるこの大陸…名をドラコヴェリオ大陸…竜が治める地です』
「ドラコヴェリオ…竜が治める…」
この大陸はとても広いらしく、地域によって寒冷地から砂漠まであるらしい。東西南北の概念もちゃんとありその辺りは元の世界の地理の知識が役に立った。現在地は大陸の中心近くで一番穏やかな気候…温帯にちかい場所らしい
聞いたことも口にしたこともない単語を聞き、またすこし混乱しかけるがいきなり疑問が一つ浮かぶ
「治めているってのにあなた…ミスティラが傷ついてるのが、この国の状況に関係しているんだな?」
当然の疑問だ。その前にも敬ってるとか祈られてるって友好的な交流まであるのに、傷ついているなんてことはよほどな事情があるからなのだろう
竜はコクリと頷く
『ええ…この大陸には大きく分けて3つの勢力があります。まず大陸の南側…一番大きなヒュームたちの治める王国。古くから竜を敬い、この大陸に暮らしてきたものたち』
ヒトとヒュームに違いはほとんどないみたいだ
知能が高く軍隊を持ち、魔法を扱う。目の色は灰色や青、茶らしいが髪の毛は銀髪から亜麻色や金髪に近いとのこと
『次にヒュームたちに対し竜は滅ぼすべきの考えをもつ種…大陸の北東に国を構える魔族たち…堕獣魔、と呼ばれています』
少しだけいやな予感がする
『体格はヒュームより逞しく、肌は灰色に近く赤い目を持ちます……そして黒色の髪を持つのです』
「それはまずい…ですよね」
『おそらくあなたがどちら側になろうとしても大変な思いをするでしょう…黒髪はオーグルである目印に、肌や目はヒュームである目印になってしまいます』
いきなりそれぞれの本丸に向かっても不審者扱いで最悪ころされるんじゃ…せめてヒュームに取り入らないと
そんなおれの気持ちはさておき竜は続ける
『先ほどまでわたしは彼らの襲撃にあっていました…じきにこの場所も見つかることでしょう』
「オーグルってのはそんなに強いのか?」
『本来のオーグルであれば力こそあれど、あしらうのは容易いのです…が100年ほど前から強力な魔力を有する個体が現れたのです』
そこに本来の力に加え数の暴力、か。いくら竜が強くても勝てないわけだ
『…今生きている竜はもともと隠れ住んでいたか、オーグルの領地外に住んでいるもの、極少数ですが特殊な立場をもつもの…だけになってしまったのです』
「事情はなんとなくわかった…この隠れ家も今は安全じゃないのか…」
『最後にこの大陸での出来事には関せず傍観しているものたち…聖森魔です。彼らはヒュームより古くからこの地に生き、争いを好まず自分たちに危害がないかぎりは相手と関係を持とうと考えない種族です』
おれの世界でいうエルフみたいな感じだな。やはり力は弱いが圧倒的な魔力で他の種族を寄せ付けないとのこと
…ヒト、オーク、エルフの3種族とは実に王道だな。他にも色んな種族はいるらしいが大陸のなかで国家を支配する力を持っているのはこの3種族のようだ
『次に竜の役目…この大陸には竜脈というその土地の魔力が集まる箇所があります。わたしたちが大陸の所々にある竜脈を正し、一定範囲の土地を治める役割を担っています』
「じゃあその竜脈が乱れたら…」
『その地は荒れ、土は痩せ生き物は住めなくなります』
だから竜が治める地、か。それならなぜオーグルたちは竜を滅ぼそうとする?自分たちが苦しくなるだけじゃないか。竜が生きてくために必要なのに滅ぼすなんて矛盾してる
『ことの始まりはおよそ100年ほど前。…その頃まではオーグルもヒューム程ではないにしろ竜を敬い、ともに生きていました。ですがある年大きな飢饉がオーグルの国を襲いました』
「魔力の高いオーグルが現れたのと同じ時期…その土地の竜が死んだ?」
『実ははっきりした経緯がわからないのです。いくら竜脈が乱れるにしても竜が死んでも10年は強く影響は出ないはずなのです。少なくともわたしたちは、大陸を守るために死ぬ前に子孫を遺さなければならない掟があります。死期が近づくとそれは卵となって現れるのですが、そのまま土地が荒れたということはその時間もなかったということ…』
「土地の荒れる10年くらい前にその竜に死ぬ以外になにかあった、と」
『ともあれ土地は荒れてしまいました。すると突然オーグルたちが「土地ガ荒レタノハ竜ガ我々ヲ滅ボソウトシテルカラダ!ワザト後継ギヲ作ラナカッタノダ!」とその他の竜を襲い始めたのです』
そんなんめちゃくちゃだ、逆恨みじゃないか。原因もはっきりしてないのに
『前は大陸全土にいた竜も一匹、また一匹と殺され…今では10頭くらいが隠れながら生きるばかり…なぜオーグルたちがここまで竜を恨んでしまったのか未だにわかりません…』
「そんな竜の親におれはなるわけか…責任重大だな」
『先ほども言ったとおりわたしの死期は近い…それが寿命にしろ外的要因にしろ、卵が産まれたというのは予言みたいなものなのです』
自分がもう死ぬかもしれない時に子供を託せるやつが現れりゃ即決するわな
「この辺りはミスティラが治めてるんだろう?死んでしまったらどうなる?」
『我が子が成長すれば引き継げるでしょう。わたしの魔力を継げばこの地の竜脈を管理できます。数年もたてば本能でわかるはずです』
ふむならば少なくとも数年の間おれが面倒みてやれば、この地が荒れるような問題は起こらないということだな。とりあえず安心した
『大まかなこの国のことは話せました…あとはあなたがその目で見ていくほうがよいでしょう』
「そういや見た目は仕方ないとして言葉は通じるのか?ミスティラとは念で話せてるみたいだが…」
『ヒュームの言語ならあなたはずっと話していますよ?それならばこの大陸どこでも問題ないでしょう』
無意識に話せていたのか。なら仕事したりも問題ないか、食いぶちに困りたくないしな…それじゃ一番大事な用事だ
これからも調子よく書けたら早めに投稿します。では