やっぱりダンさんは男前
「おれはこの子を育て、守ることを誓いました。ただ個人で強くなるには限界があります…だからギルドに入り、少しずつでも実力をつけていきたいのです。そのために許されるなら…この町に住みたいと思っています」
素直に今の気持ちをぶつけてみる。モルド町長は腕を組みおれを見ている
「…ふふ…はっはっはっは!」
え?なに?突然の大爆笑にこちらが焦る
「おもしれぇ!竜を守る騎士かっ…ダン、おもしれぇ小僧を連れてきたなぁ!」
「あんたならそう言うと思っとったぜ」
「気に入ったぞ小僧、この町に住ませてやらぁ…住民登録証を出してやろう。髪のこたぁ気にすんな、町にゃもう見たかもしれんが獣人も混血もいる。ここはそういった差別のない町なんだ。ただ竜はあまり表にゃあ出せんなぁ」
気に入ってもらえましたか。が、やっぱ竜は不味いと…宿屋住まいじゃ色々不便だろうし
「それなんだがな」
ダンさんが待ってましたと言わんばかりに話しだす
「俺様がここに住んどった頃の家があるだろう?そこをヨシヤにやろうと思っとる」
ええ!?ダンさんはどこまでおれによくしてくれるんですか!もう1日1回祈ったほうがいい気がしてきた
「ああ…あの家か…あそこなら町外れだし都合がええな。しかしええんか?」
「ああ、もうほとんど使ってねぇし。今じゃ物置にしかなってねぇしな。住所も森の方で問題ねぇ、有効に使えるならそうすべきだろ?どうだヨシヤ?」
「どうだもなにも…断る理由がどこにもありませんよ!」
これ以上ない物件といえる。クーも家の中なら自由に出来るし、飯だっておれはいくらか作れる。独り暮らし舐めるなよ
「よしなら決まりだな…一度見に行くか」
「行ってこい。落ち着いたらまたここにきな、住民登録証を準備しといてやらぁ。住所はあの家にしとくからな」
早速見に行くことに。モルド町長には礼を言ってひとまず屋敷を後にする。家は住宅街や商店街からも離れた場所にあるらしい
「もともと静かな場所が好きなのもあってな」
「じゃあ今の仕事は色々と都合が良かったんですね」
家を建てたはいいが、周りの輩が騒がしくてほとんど使わず、手入れだけはして物置状態だったそうだ。とは言うものの、その荷物もほとんどないから、実質は空き家だ
周りには他の建物が全然ない。だが浮いたところがないのは、囲まれた木々に絶妙に溶け込んだ造りのおかげだろう。石造りのそれは、30年も前の建物には見えない。落ち着いたクリーム色に近く、まさかの2階建だ
広さも四人家族でも暮らせそうな…ダンさんのサイズに合わせたからか。1階には大きめなキッチン…釜戸が備えてある。なんとシャワーとトイレがある、この町の基準からするとかなりいい設備だとのこと
2階は大きな部屋が2つ、いい寝室にできそうだ。採光もしっかりしてあるし、優良過ぎるくらいの物件だ
「本当にここに住んでいいんですか」
「そうさなぁ…少し目標があったほうがええか」
ただでってのは、いくらなんでもむしがよすぎる。ここまで良くして貰っちゃあなにかお返ししなければ
「……よし。詳細はギルドに行ってからだが月に一度、おまえさんに依頼を出そう。報酬はこの家1ヶ月の居住権+報償金でどうだ」
妥当だろう。お金までくれるならありがたい。それに依頼はおれの鍛練にもなるだろう
「ぜひ、それでお願いします」
「なら決まりだ。んじゃちゃっちゃとギルドに登録しにいくかぁっ」
バシッとおれの肩を叩くダンさん、いかにもご機嫌だ。ひとまず家をあとにして、再び大通りへ向かう
粋なオヤジには憧れます