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バレルの町長

2本です!

 「長んとこに行くまでにいろいろあるからな。食いたいもんがあったら言いな」


 食いたいもの…目移りしちまってなんとも悩ましい

 塩胡椒の匂いが香ばしい串焼き、チーズと厚切り肉をパンで挟んだバーガーみたいなもの。あっ魚のフライがある!魚も捨てがたい…そういえばちょっと試してみるかな…


(クー?聞こえたら見つからないように顔だして)


 念話だ。今更だがおれとクーには魔力の繋がりがあるのだ。まだクーの言うことがわからなくても、おれの言うことは伝わるはずだ

 モゾッとクーが耳の下あたりに顔を出す。よし成功だ、これだけ人がいればおれを気にする人もいないだろう


(何か気になる食べ物はある?)


 竜も舌舐めずりするんだな…興奮してるのが魔力の繋がりなくてもわかるよ…

 クーがある方向を意識しているのが伝わった。あれかチーズと肉のバーガーみたいなやつだ。なだめてもう少し待つように伝えなんとか隠す


「あれにします。クーも食べてみたいようなので」


「おう、じゃちょっと待ってろ」


 ダンさんはすぐに3つ買ってきた。人気のない裏通りに向かい、受け取った紙包みを開ける

 素朴な白パンに切れ込みをいれ具材を挟んでいるようだ。具は厚切りの脂身のない赤身のあぶり肉がたっぷり2枚、胡椒が効いた刺激的な香りだ。肉と肉の間にはチェダーチーズに似た濃い黄色のチーズ、それらの具の奥には生のハーブがしっかり入っていて、ほのかな苦味と爽やかな薫りで最後までさっぱり食べられる。バーガーってよりボリュームのあるサンドイッチのほうが正しいかな

 クーにもおれが持って食べさせてあげるのだが…がっつきすぎだ。よく噛まずに飲み込んでいるのかゴクンゴクンいってる…ちょっとだけ離す


「もう少しゆっくり食べなさい…逃げないから」


「キュルルル…」


 その声は不満か。前足をカリカリしないで!肩が痛いっ!そのうちまた買ってあげるから、と言い聞かせる。渋々と、初めよりはいくらか大人しく食べ出す…今はこれでいいか


「随分そいつが気に入ったようだなぁ」


「気に入ったのはいいんですけどね…躾するのが一苦労ですよ」


 しかしおれもこいつは気に入った。ここに住むならたまに食べてもいいな。値段は一つ銅貨4枚…400円?くらいかな。このボリュームなら満足だ

 うまかった。さて長に会いにいかなきゃな


「さぁて用事を済まさにゃ…ん?お、ええとこに!おぅいこっちだモルド!」


 ダンさんが通りに向かって声をだす。すると一人のおじいさん…じいさん?頭髪も寂しく残った毛も白髪だし、シワの深い顔はダンさんよりはるか年上だろう。だが…姿勢が妙にいい、これはまだいい。元気なんだろう。なんでノースリーブで両腕が引き締まった金属のような筋肉してるんですかねぇ…この世界の年配の方々は、みなさん歴戦の猛者なんですか?


「あー?ダンじゃねぇか。おめぇこないだ来たばっかじゃねぇか」


「ちょいと用事ができてよ…あまり公にできねぇことなんだ。どっか話せるとこはないか?」


「…その小僧っ子が関係してんのか。しゃあねぇなウチまでこいや」


 モルド、と呼ばれたじいさんはのっしのっしと大通りに向かっていく。…まさかあの人が?


「あのじじいがこの町の長、モルド町長だ」


うわー…いや、うわー…しかでないわ


「やっぱり元冒険者なんです?」


「半分現役だ。町長だしな…有事の際はってやつだ」


 戦えるのか。すげぇな町長、確かにリーダーコボルトくらいなら一睨みで殺せそうだもん 

 急ぎ長についていく。南北に通る大通りの真ん中あたり、一際大きな屋敷が町長宅のようだ。ダンさんの小屋にもあった紋章が門にあった。屋敷内にメイド|(皆美人)が何人もいて、そのうちの一人に速やかに客室に案内され、人払いをしてくれた

 しばらく待つとモルド町長がやってくる


「おぅ待たせたな。今屋敷中のやつらを追っ払ったとこだ。そんで?わしに話してぇこったぁなんだ」


「まずはそうだな…おいあれを見せてやんな」


 うなずいて懐からあの鱗を出す。モルド町長は固まり、恐る恐る鱗を手に取りおれを見る


「…この目で拝める日がくるたぁ思わなんだぜ…小僧おめぇなにもんだ?」


「おれはヨシヤと言います。実は記憶を失って森で倒れていたところを白き賢竜に助けてもらいました…おれには竜と話せる力があるそうで、あるものと一緒にその鱗を信頼の証として貰ったんです」


 2度目である説明をする。モルド町長は真剣に話を聴いてくれている


「竜と話せるヒュームか。あるものってのぁなんだ」


 ダンさんに目配せするとコクリと頷く。あの時と同じように外套を外し、髪も露にする。一瞬黒髪をみてピクリと眉が動くが、クーを見て目が見開いた 


「お、おい、おめえ、そりゃ竜じゃねぇかっ!」


「この子はクルクス…白き賢竜の子です。この子を託された直後にオーグルたちに襲われ、逃げていたところダンさんの小屋にたどり着き、この町に連れてきて頂きました」


「託されただぁ?白き賢竜様はどうした!?」


「…囮になってくれて…そうすることしか出来ず…」


 何度思いだしても、つらい記憶だ


「…はぁ…こいつぁとんでもねぇ話だ…」


「ヨシヤの言うことは間違いないだろう。このクルクス様はようなついとる…モルド、あんたも竜の鱗のことはよく知っとるだろ」


 ダンさんは優しくフォローしてくれている


「知っとるわぃ…で?それだけ大事なことを話して、なにしてぇってんだ」


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