幕間 実業家として
最近、俺は色んな物を作るようになった。
趣味や生活に必要と言うことも多分にあるが、それだけではない。
家族を養うぐらいなら、戦闘職でも何とかなるが。
今後子爵となるならば、もっと大きい物を背負う必要がある。
親父さんの意思であり、生き方であった、小作人や領民から搾取するのではなく、共生していくことを、踏襲、そして発展していきたい。
ならば、趣味で作るだけではなく、それが産業となるように鉱山経営を含めて、俺は実業家となるべきだ。
その、資源はやはり魔術だ。
風、火、土、水の4大属性魔術が全て中級に達して、それぞれの合成魔術あるいは連成魔術も使えるようになった。
風と火では、爆炎魔術。
火と土では、金属魔術。
風と水では、雷電魔術。
では、水と土では?
正解は有機魔術だった。
草や樹木を成長させることも可能だし。
油に樹脂系魔術もある。
無から有を創るのが魔術。
そうは言っても異次元空間から出すのだが、やはり軽い物より重い物を創造する方が格段に多く魔力を消費する。
それを踏まえて生産系魔術だ。金属系と有機系が役に立つ。
作るのは金属製品や樹脂製品だ。
金属製品は、鉄、銅、錫、アルミなど、大地に比較的多く含まれるものは、循環するのか、創り出すための魔力が比較的少ない。
金や白金も創ってみようとしたこともあったが、極端に魔力を多く必要だった。販売目的なら、夢幻晶や転移結晶を作った方が余程効率が良い。今後も余程のことがなければやりたくない。
創り出す他に、加工する魔術もあるが、単純に魔術だけで造るよりは、道具を使って、動力を供給する方が楽だ。
例えば、メガエラ王女に対抗するために、銅の細線を撚って造った綱は、純銅の塊をるつぼに入れて熱して溶かし、それを流し出しながら、上下左右からプレスして、直径1cm位の単線にする。
それを再度暖めながら、ダイスと呼ばれる線径より細い穴の明いた工具に無理矢理通して引き延ばすことを繰り返し、直径0,1mmの細線まで持って行く。
後は、専用のゴーレムを造って、編ませることで造った。
これはもちろん、元の世界の銅線の作り方を学んでいたから出来たことだ。
俺の今のところの夢というか、目標はモータと発電機を作ることだ。
難しいのは、銅線を電線の一種である巻線、つまりは絶縁層が薄いエナメル線を作ることだ。
絶縁層が比較的厚い、樹脂皮膜銅線はできる。絶縁被膜を極限まで薄くするには、ウレタンやポリアミドなど樹脂を塗り焼き付けなければならない。この辺のノウハウが無いので、今のところできていない。
後は電磁鋼板と呼ぶ、ケイ素を含んだ鉄板を作る必要がある。
それを多量に積層して鉄心を作るのだ。
これも基材までは出来るのだが、積んだときに隙間が出来ないように、肉厚を精密に一定とし。でこぼこがないように平滑にする必要がある。
さらにその両面に、絶縁層を極力薄く形成する必要がある。
これもできていない。
まあ何時か作ってやろうとは思って居るが。
あと金属製品は作りまくってるのにも関わらず、有機魔術、特に樹脂製品は意識して余り作らないようにしている。リサイクルが効かないからだ。ある例外がある。
ゴーレムは元の世界の超技術だろうが、ここではモータなどの電気機械の方ができない、矛盾の多い関係だ。
科学は、工学は、偉大だ!
とはいえ、電機製品は、魔石技術と魔術機械で代替できないことも無い。
ただ、動力の供給が、電気と違って容易ではない。
この世界の、文化水準を上げるには必要だろうが。
全て俺がやる必要は無いのだと、最近思い始めた。
よって最近は、趣味としては、工具、食器、鍋釜など現在の生活向上に直結する物を作っている。特に皿や器を錫で作るのが、楽しい。
まあ鉱山も鉱石をそのまま販売するより、精錬してインゴットにした方が高く売れるし、それをさらに錫製品した方がより付加価値が高くできる。
そういう職人を集め、ゆくゆく村人を育成すれば、村の産業とできるだろう。
そのために必要なのは、資本だ。
今のところ、我が家が使う分の蓄えはある。
しかし、村を富ますとなれば、話は別だ。
ならば、まずは、ゴーレムを造って動力となる紅夢幻晶や魔石を売りさばこう。
今の戦術はそれだ!
ゴーレムは、実質メシア教会の独占状態で、余り普及していない。
教団が売り渋って、価格が高止まりしているのと、動力して使う魔石の消費効率が悪く、いわゆるランニングコストが、人力の方がマシというのが世の中の認識だからだ。
これは、教会のゴーレムより出力が大きくするのと、純度の高い紅夢幻晶を相対的に安価に販売する。
販売に関する問題は、3つある。
1つ目は、売り出せば教団を敵に回すこと。これは避けられない。
2つめは、販路だ。まあ、ゼノン商会は当てにできるだろうか、それだけでは足りない。後は王国政府から制約が課せられることも考えられる。これには追加技術が必要だ。
3つめは、需要に耐えられるかと言う点だ。売れるかどうかはっきりしない段階で考えるの時期尚早ではあるが、逐次投入しているとまずいことになる場合がある。どこかの段階でしっかり立ち止まって考える必要がある。
技術面では、ゴーレムを軍事利用されることは、極力避けたい。
これは、シグマの好きにせよと言ってくれる、カーラさんからも言われていることだ。
少なくとも、俺が売る物には転用させないようにする仕組みを、盛り込んでおく必要がある。
その一つの答えが知能型による中間制御方式だ。
知能型は、俺が指揮権委譲したもの言うことしか聞かない。
それが、安全対策となる。
だが、その制御を破られてしまえば、集中する分、より危険となる。
なんらかの個人認証鍵が必要になるな。
販売方針的には、どのタイプのゴーレムを売っていくかと言う戦略が必要だ。
需要としては、労働力の代替や危険作業の代替用途だ。この世界の産業はどれも労働集約型だ。極一部が魔術で賄われているに過ぎない。旨く喚起すれば数としての需要は伸びそうだが、単価は余り高くできない。
後は、金持ち相手の嗜好品だ。メイドロイドが該当するだろう。こちらは数は望めないが、単価が高く利益率も期待できる。
製造面では、原価というよりは生産性だ。
一番楽に創れるのは、土属性魔術だけで賄えるストーンゴーレム。これにエネルギー変換器かつ制御器である夢幻晶に刻印して埋め込めばできあがりだ。後は別途エネルギー減である、魔石、夢幻晶や転移結晶などを与えれば駆動できる。
次に楽なのは、チーフと呼ぶ知能系1号が該当するメタルゴーレムだ。
最後というか、かなり面倒くさいのは、金属骨格に樹脂の肉や皮膚を被せる、ハイブリッドゴーレムだ。メイドとか、飛行型はこれで作っているが、正直量産するのは困難だ。
あとゴーレムがゴーレムをある程度造ることも可能で、ストーン製とメタル製まではできる。核となる夢幻晶の刻印が、自動化には相当の難問だ。よってそこは俺自身がやる必要がある。
伯爵に献上する、塩の生産現場で使うのはストーンゴーレムで、夢幻晶の刻印以外は
結構ぱぱっと造ることができた。
それから、ゴーレムは売り物つまり消費財という側面の他、俺が売るものを作るインフラとしての生産財という側面もある。
前に書いたように、ゴーレムを売るためには、動力としての夢幻晶を安価に作る必要がある。
最近は紫夢幻晶を動力とする製造装置を作り始めたので、第2品位の橙夢幻晶まではだいぶ楽になった。
この調子で、鉱山生産と歩調を合わせて生産性を上げていこう。
最後に、これらを回していくためには人的充実が不可欠だ。
俺には頼りになるハンスも居るが、全然足りていない。
実は、これが一番俺に足りていないのかも知れない。
できる限り、早急に何とかせねばな。
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