白、白、白
3、白、白、白
一体どうしたものか。
目の前のそびえるような「城」を目にして、中に入るのはためらわれた。困り果て、どうしてよいやらわからずに自分の両手を見下ろした。と、太陽の光に何かがきらめいた。
あの指輪だ。
自分ではめた憶えは無いが、確かにあのシルバーのリングだ。おばあさんは何と言っていたっけ。たしか、「指輪を唇にあてて、行きたい場所を思い浮かべればそこへ行ける」というようなことだった。
半信半疑でリングを唇にあてた。ゆっくりと目を閉じ、どこへ行こうとしているのか自分でもわからないまま、この「城」の中の一室を思い浮かべ、目を開いた。
ワォ!
今まで自分のことをドラマチックな人間だとは思っていなかったが、この一言以上にふさわしい言葉は思い浮かばなかった。
今、自分がいるのは思い浮かべた通りのーおかしな話だがなぜか懐かしささえ感じるー見たことがないはずの白い部屋だった。
部屋の中は白で埋め尽くされていた。白い壁に白い絨毯、白いカーテン、白い天蓋つきのベット、白い鏡台、白、白、白。
あまりの白の多さにめまいがする。
そして白いソファに座っているのは、これまた白いドレスを着た女性だった。