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第五話 未熟な天敵

 それでは、時と場所をとんかつドン太の玄関(店の出入り口ではない)に誰かが来た所まで進めよう。

 「はーいどなた…」

オビツがインターフォンの映像を確認すると、白いキャップをかぶった棒人間と、少し背の低い棒人間が立っているのが見えた。

「悪いねえオビツ…鍵を持っていないんだ」

「入れないから早く開けて!!アイス溶けちゃうから!」

(「しまった…シンゴとユキトにアイスを買わせていたのをすっかり忘れていた…」)

 鍵を掛けたのはオビツである。彼はこういったことに関してはドジが多いのだ。


 「あーあ、やっぱり溶けてる…」ユキトはカップアイスの惨状を嘆いた。

 それもそのはず、この日の最高気温は32℃を記録している。

「シンゴ、冷やしてやれ」

「しょうがないねえ…」

シンゴは彼特有の気だるい口調で応答すると、買って来たカップアイスを手に乗せた。

「…『フローズンインパルス』」

わずかな沈黙の後、キイィィン、という音と共に、溶けていたカップアイスは一瞬にして凍結した。

「ありがとうシンゴ兄!」

そう言うと、ユキトはカップアイスをがつがつと食べ始めた。

「おいおい…腹壊すなよ?」

「スゴいなシンゴ、あの技はどういったメカニズムでカップアイスを凍らせたんだ?」オビツはこういった話には目がない。

「溶けたアイスを一瞬で過冷却状態にしてから高周波パルスを加えただぜぇ?」

「なるほど…」

オビツは(その必要はないにも関わらず)手帳にメモしている。

 「ごちそうさまー!!」

オビツとシンゴが会話しているうちに、もうユキトがアイスを食べ終えてしまった。

「早すぎやしないか?」

「もう一つ食うとか言ったらお前を凍結させるからね?」

「わかってるよもう食わないよお腹壊すの目に見えてるもん」

ユキトはそう言うと、近くの引き出しからニッパーを取りだし、二階の自分の部屋へと上っていった。

「またプラモか?」

「ああ、最近は戦闘機にハマってるよ」

「にしても早かったな。どうしたんだ?」

「…またマナに追いかけられたんだよ」

 マナは、この辺りでは有名な不良少女だ。かつて暴力団事務所の本拠地に単身潜入、一夜にして壊滅させたという武勇伝を持ち、『体術の申し子』の二つ名で恐れられている。かき氷をユキトに食べられた恨みを忘れず、彼を見つけるたびに殴りかかってくるため、最近ではシンゴの護衛無しではユキトは外に出られない。

「またあいつか…」

「大変なんだぜえ、今日なんかあろうことか釘バットなんか持ち出して…」

「食べ物の恨みは怖いんだな」

 ピンポーン…

 今度こそ来客である。

「はーいどなた…」モニターには、大暴れするマナの首根っこを猫の如く掴む黒髪の棒人間の姿があった。

「オビツー、マナ捕まえたけど手に負えなーい。懲らしめといてー」

「くそっ、放せこのっ、触んな!!」

(「あーあ、オガワさんがまた面倒なブツを…」)

 彼女はオガワ。オビツが唯一さん付けで呼ぶ隣人だ。いつでもどこでもハリセンを持っているという、少し変わった20才である。

「おーうオガワさん、ごぶさたしてますねえ」

「いやいやそりゃどーも」

「まあ上がって上がって、後はオビツが何とかしとくから」

「じゃあお言葉に甘えて」

「お、おいシンゴ!勝手に俺に押し付」

「よろしくねー」

「…」

「無責任な女だぜまったく」「…捕まえられたお前が言えたことじゃあねえだろ」

「んだとコラ!叩き潰すぞ!!」

「やれるもんなら、な」

「オラァァァァァァ!!」


 この後、アームキャノン無しのオビツの前に、マナがひれ伏すことになったのは言うまでもない。



続く

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