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第三話 タクミは反抗期

 とんかつドン太の二階にある、一つの部屋。天井の照明器具は取り外され、曇った窓には厚手の遮光カーテン。床は最新のゲームソフトのパッケージで埋め尽くされ足の踏み場もない。

 そんな真っ暗な部屋の中でPCをいじっているのは、オビツと同じく、ドンジャモールの義子、タクミである。

 オビツより二つ年下のタクミの他にも、カオル、シンゴ、ユキトがいて、それぞれ一つ下、三つ下、四つ下だ。

 なぜドンジャモールが五人もの子供達と養子縁組みをしたのか。それは彼らが「インフィニタス」だからである。

 棒人間の特性上、DNAがある特定の組み合わせになることによって、一千万人に一人程度の確率で、特殊な能力を持った子供が生まれることがある。それがインフィニタスである。彼ら五人は、その能力ゆえにインフィニタスがまだ差別や迫害を受けることが多かった頃に引き取られたのだ。もっとも、最近のオビツの活躍でインフィニタスへの人々の考え方は変化しつつある。

 しかし、人々は一つ、大きな誤解をしている。人々は皆、「オビツが強いのは、彼がインフィニタスで、何かしらの能力でも使っているのだろう」と考えている。だが、オビツは今までの依頼で、一度も能力を使ったことがない。なぜなら彼の能力は、――

 非常に危険な能力だからである。

 オビツの目は固く閉ざされている。これが能力覚醒のキーである。目を開くと能力が覚醒してしまうため、生物が生命活動を行う際に生じる「バイオエナジー」(通称BE)を額から発射、跳ね返ってくる時の波形で周囲の状況を把握する訓練を、オビツは彼の師匠と共に行った。

 …話がだいぶそれてしまった。タクミの話に戻ろう。

 タクミはいつも黒いキャップをかぶっている。本人が言うに、「寝癖がつきやすいから」だそうだ。

 「おいタクミィ…」

 ギクッ、と、タクミは肩をすくめた。後ろから聞こえたのは、明らかに怒りに震えるオビツの声だ。

「俺がバウンティハンターになった理由…忘れたとは言わせんぞ?」

そう、タクミはオビツが稼いで来た賞金でゲームソフトを買ってしまったのだ。オビツの右腕にはすでにアームキャノンが装備されている。普通の人間、いや棒人間であれば、この時点ですでに負けを確信する。

 しかし、タクミのプライドがそれを許さない。戦わずして負けを認める者を彼は断じて許さない。

「うるせぇ!!『ボルテックレクタングル』!!」

彼は左右の手を合わせ、それを垂直方向に大きく開いた。すると、二つの手の間に、文字通り高圧電流の長方形が現れ、そこから高圧電流の弾、すなわち雷弾が凄まじい速度で乱射された。 だが、オビツはそれをいとも簡単に避け、あっという間に間を詰めると、アームキャノンの銃口でタクミを強く殴りつけた。

 タクミは殴られた痛みと床に叩きつけられた衝撃とを受け、気絶してしまった。玄関のチャイムが鳴ったのは、そのほんの数秒後だった。

 「おっと来客だ」

オビツは踵を返し、動かないタクミと自分のアームキャノンを置いて階段を駆け降りていった。



続く

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