バンド名決めようぜ!
清坂正吾さま「ゴリラパーティー」参加作品です。
ジャカジャカとギターを弾き鳴らしていた手を止めて、ギター兼ボーカルの日野が俺の方に視線を向けた。
「バンド名さ、次の日曜までに考えといて? 俺ネーミングセンスないから無理なんよね」
無理──喉元まで出かかった言葉を、一旦押し込める。
せっかく、せっかくここまできたのだ。あと俺らに足りないものはバンド名だけ。
だから、ここで完璧な計画を崩すわけにはいかない。
「なんとかする」
日野はひらひらと手を振った。
「そんな気負わんでだいじょーぶよ。他のメンツにも考えてきてって声かけといたから」
それなら安心か。
……安心か?
俺は他のメンツを思い浮かべた。
俺──大江、ベース。飼い金魚にオオサンショウウオと名付けた経験あり。
日野、ボーカル兼ギター。自称ネーミングセンス皆無。
舞原、ギター。紅一点。厨二病を拗らせている。
西川、ドラム。なろう系の長文タイトルが好き。
……どいつもこいつも……。
「あぁ、適当に考えておく」
「よろしくなー」
俺の完璧な案を叩きつけなければ、このバンドは終焉る……!
それからというもの、俺は売れたバンドの名前をひたすら分析した。
「『HIRUSHIGOTO』……これはアルファベット系、『アサカラ』……これはカタカナ、『割と昼間でもありかも。』……これは長文系だな」
手元のルーズリーフにさらさらと書いて整理していく。
「エゴサをする時にはあまり一般的な名前じゃない方がいいのか。それこそ名詞は言語道断、と……」
整理と分析が終われば、次は考案だ。
「アルファベット、カタカナ、長文が多いなら、逆張りで漢字数文字がいいな」
ふとテレビを見ると、動物番組の特集でゴリラが映っていた。
「これだ。『極悧楽』、これしかない」
極める、怜悧な、楽しさを。
完璧だ、と思った。
俺はうきうきで案を提出した。
***
「我の右腕が、『それはナイわー』と申しておる」
我がバンドの紅一点、舞原が右腕の包帯を巻きながら言った。コイツは厨二病を拗らせているが、元がエセ厨二病なため、意味のわからない拗らせ方をしている。
「大江君、それはないよ。あまりにもダサすぎる」
こちらもイタい系の人間、西川がドラムスティックをくるくると回しながら言う。
俺はというと、自分の案へのダメ出しの数々に目を白黒させていた。
「どこがダメだというんだ? そういう君たちの案も出してくれ」
「僕の持ち込んだ案は『バンドを追放された俺、アイドルに見初められて作曲家になる』さ。こっちの方が百倍いいね」
即答したのは西川だ。
「バンドから追放されてるじゃねーか」
「欲望に塗れている……!」
日野がぼそっと呟き、舞原は眼帯を右手で押さえながら感想を述べた。
「我の案は、スカーレット・ナイトメア・ドラゴン! 緋色の悪魔のようなドラゴンのことだ」
ドラゴンのことだ、って言われてもなぁ。
「ダサい」
日野は至極真っ当な意見だ。
「じゃあどうしろっていうんだよ」
俺はイライラしていた。
素晴らしい案を貶されて拗ねていたとも言える。
「じゃあ、いいこと考えた」
日野は案を出さない代わりに、案をまとめるのは得意らしい。
***
「今日は僕たち、《スカーレット・ナイトメア・極悧楽、バンドを追放される》の初ライブに来ていただきありがとうございます!」
……俺、もうこのバンドやめたい。




