其ノ陸
屋敷に到着したとき、空は深い群青に染まっていた。
木々が揺らめく中、晴海に案内されて真矢と白俐は門を潜った。
夜風に冷たさを感じながら石畳を進む。
玄関に着くと、晴海が鍵を取り出して重厚な玄関扉を開ける。
屋敷の中に足を踏み入れると、微かに湿り気を帯びた空気が、まるで床下から這い上がってくるかのように二人の足元を包んでいく。
真矢は無言で辺りを見回した。
白俐はそっと真矢の袖を引き、小声で囁く。
「……微かに、邪気を感じます」
「……そうだね」
案内役の晴海は平然とした様子だった。邪気を全く感じていないようである。
二階へと続く階段を上るにつれ、邪気は一層濃く、肌にまとわりつくようになっていく。
晴海は廊下の突き当たりを指差した。
「お嬢様の部屋は、こちらです」
真矢は振り返り、晴海に穏やかな声で告げた。
「申し訳ありませんが、外で待っていていただけますか?危険な目に遭うかもしれませんから」
「……分かりました」
晴海が頷くと、真矢と白俐は刀袋から刀を取り出す。
そして、もう一つ晴海に頼み事をする。
「あと、しばらくの間、僕らの刀袋を預かっていただけますか?」
「はい」
晴海は丁寧に受け取った。
真矢は刀を腰に差し、白俐は薙刀の柄をぎゅっと握り締める。
それを見て、真矢は一度だけ頷き、扉に手をかけた。
そして、ギィ……ときしむ音と共に扉を開ける。




