表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第壱話・想夢  作者: 黒猫。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/10

其ノ伍

三人は石畳の神楽坂を歩いていた。

先導する晴海がふと立ち止まり、後ろを歩く二人に声をかけた。


「……あの、以前から気になっていたのですが……お二人は、ご家族なのでしょうか?」


問いかけに、真矢は少し笑って答えた。


「その前に……僕ら自身のことを、少しお話しした方がいいかもしれませんね」


「僕ら自身のこと……?」


晴海は首を傾げた。

そして、真矢の隣にいる白俐は顔を上げ


「真矢様、よろしいのですか?」


と尋ねた。

それには理由があった。

真矢は元々、自分のことを進んで語りたがる性格ではない。周囲に心の内を明かすことは滅多にない。

だが、晴海は違った。

誠実で誰にでも礼儀正しく、椿のことを大切に思っている。

何より、真矢達のことを信じ、怪異退治屋の依頼をしてくれた。


「晴海さんになら、話してもいいかなと思ってね。僕らのことを話しても、きっと受け入れてくれる気がして」


真矢はそう穏やかな声で言った。


「真矢様がそう仰るのであれば」


真矢の言葉に、小さく頷いた。

三人は再び歩き出し、真矢は夜空を一瞥した後、自身のことについて話し始めた。


「少し、驚かれるかもしれませんが……僕は人と、かつて『妖怪』と呼ばれていた怪異の血を受け継ぐ『半妖』です」


晴海は思わず立ち止まって振り返り、驚いたように彼の顔を見つめた。


「半妖…物語の中でしか聞いたことがありませんでした。こんなにも身近にいたなんて…」


晴海はまたも驚いたが、真剣に白俐を見つめ、静かに頷いた。


「では、お二人は……」


「僕らが出会ったのは平安の世……何百年も昔です。僕は怪異退治をしながら旅をしていたのですが、ある里山で、多くの妖怪に囲まれた一人の少女を見つけました。……それが白俐でした」


「あのとき、命を狙われていた(わたくし)を、真矢様が助けてくださいました」


白俐の声には、誇りと敬意を感じられる。


(わたくし)のことを救って下さったこの方が人か(あやかし)かなど、気になりませんでした。ただ、一目で『この方にお仕えしたい』と思い、真矢様にお願いいたしました」


真矢は小さく苦笑する。


「白俐のような存在は……非常に稀です。人間と妖怪、どちらでもない半妖は双方から疎まれる存在。なので、妖怪が半妖に仕えるなんて、普通はありえないことないんですよ」


「ですが、真矢様が半妖であろうと、(わたくし)にとって『主』であることは変わりません」


白俐はそっと微笑みながら言った。

晴海は二人の言葉に、しばらく言葉を失っていた。

やがて、そっと口を開いた。


「……正直、驚きました。けれど、今のお話を聞いて……大切なお嬢様を託すなら、このお二人しかないと、改めて思いました」


その言葉に、真矢と白俐は軽く会釈をした。

そして、月明かりが差し込む坂道を、再び三人は歩いていく。

その先に待つのは、一人の少女と、彼女を蝕む『何か』である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ