第九章:永遠の黄昏
五十歳を過ぎた瑠美は、もはや自分が何者であるかも忘却の彼方にあった。
彼女にあるのは、一真が与える食事、一真が選ぶ服、そして一真が夜ごとに与える、激しくも甘美な「存在の証明」だけだった。
「ママ、世界は僕たちのためにあるんだ」
一真は、瑠美を膝に乗せ、沈みゆく夕日を眺める。
瑠美は、一真の胸に顔を埋め、赤ん坊のように小さく頷いた。
康夫が望み、手に入れられなかった「完全なる所有」。
それを、彼の血を引く息子が、より洗練された、より残酷な形で完成させたのだ。
二人の影は、夕闇の中に溶け込み、一つの異形な怪物となって、永遠に続く静寂の中に消えていった。
海辺の家には、今日も波の音だけが空虚に響いている。
「ママ、今日は僕たちの『結婚記念日』だよ」
一真は瑠美のために、特注の純白のドレスを用意した。
それは、かつて康夫が瑠美に強いた「辱めるための衣装」とは対照的に、神聖なまでに美しい、最高級のシルクでできていた。
そして、そのドレスには、一真の好みに合わせて、随所に細い銀の鎖が編み込まれていた。
一真は優しく瑠美を抱き寄せ、彼女が着ていた薄い部屋着のボタンを、一つずつ丁寧に外し始めた。
指先が肌に触れるたび、瑠美の体は微かに震え、息が浅くなった。
彼は急がず、まるで大切な宝物を扱うように、肩から布を滑らせ、ゆっくりと服を脱がせていく。
露わになった白い肌に、唇を寄せ、首筋から鎖骨へ、優しいキスを散らした。
「ママは、僕だけの花嫁だよ……ずっと、僕のもの」
一真の指が、胸の膨らみを優しく撫で、頂を軽くつまむ。
瑠美は最初、ただ息を詰めて耐えていたが、次第に喉の奥から甘い吐息が漏れ始めた。
「あ…一真…」と、小さな声が零れる。
彼はさらに手を下げ、腰の曲線をなぞり、内腿を優しく開かせながら、敏感な部分に触れた。
指の動きは穏やかで、執拗に優しく、瑠美の体を徐々に熱く溶かしていく。
やがて、瑠美の唇から甘い喘ぎが途切れ途切れに溢れ出した。
「んっ…はあ…もっと…」
彼女の目は潤み、頰は赤く染まり、一真の胸にすがるように体を預けた。
一真は満足げに微笑み、彼女の体を十分に愛玩し、甘い声を十分に引き出したところで、ようやく純白のドレスを着させていく。
「とても素敵よ…一真」
瑠美は鏡の中に映る自分を見つめ、うっとりと呟いた。
彼女にとって、一真に賞賛されることだけが、自らの美しさを確認する唯一の手段だった。
一真は彼女の背後に回り、ドレスの背中のファスナーをゆっくりと引き上げ、首筋に深く、吸い付くような口づけを刻んだ。




