表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
④断罪のゆりかご ~継承される地獄~  作者: MCdragon


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/16

第四章:地獄の継承

一ヶ月後。

康夫は脳梗塞で倒れ、言葉を失ったまま療養施設に送られた。

修の会社での地位も危うくなったが、彼は自ら辞職し、瑠美と一真を連れて、誰も知らない海辺の町へと移り住んだ。

ようやく手に入れた「静寂」。

瑠美は、康夫という呪縛から解き放たれ、少しずつ人間らしい感情を取り戻しているように見えた。

修もまた、十四年間の重荷を捨て、瑠美を本当の意味で守る決意を固めていた。

しかし、ある日の夕暮れ。

修は、リビングで本を読む一真の姿を見て、背筋が凍るような感覚を覚えた。

一真は、キッチンで夕食を作る瑠美の背中を、じっと見つめていた。

その視線は、かつて康夫が瑠美に向けていた、あの執拗で、所有欲に満ちた、昏い熱を帯びたものと全く同じだった。

一真は、修の視線に気づくと、薄く笑った。


「パパ、知ってる? じいじがいなくなっても、ママには支えが必要なんだ。パパみたいな、弱い男じゃなくて…もっと、ママを完全に理解できる存在が」


一真の手には、康夫から盗み出した、例のUSBメモリが握られていた。


「僕がじいじを消したのは、正義のためじゃない。ママを、僕だけのものにするためだよ」


修は気づいた。

康夫という怪物を倒したのは、正義の味方ではなく、さらに若く、さらに賢く、そしてさらに歪んだ、新しい怪物だったのだということを。


「ママ、お茶が入ったよ。僕が淹れた特別なハーブティー。…美味しいよ?」


一真の声が、優しく、残酷に部屋に響く。

瑠美は、その声に従順に振り向いた。

彼女の瞳には、かつて康夫に支配されていた時と同じ、抗えない運命を受け入れた影が宿っていた。

秋山家の地獄は、終わっていなかった。

それは形を変え、血の中に溶け込み、次の世代へと継承されていく。

窓の外、夕闇がすべてを飲み込んでいく。

家の中に灯った明かりは、新しい支配者が支配する、閉じられた世界の境界線だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ