第三章:崩壊と、新たな支配
翌日。康夫の喜寿を祝う会場には、親族やビジネス関係者が詰めかけていた。
康夫は壇上で、いかに自分が家族を愛し、導いてきたかを演説していた。
「私の人生の最大の功績は、この素晴らしい家族です。修くん、瑠美さん、そして一真…」
その時、会場の照明が落ち、巨大なスクリーンに映像が映し出された。
最初は家族の思い出の写真。しかし、数秒後、映像はノイズと共に切り替わった。
そこには、暗い寝室で、泣き崩れる瑠美を組み敷き、卑劣な言葉を投げかける康夫の姿が鮮明に映っていた。
「君の体は、もう修のものではない…私の動画一つで、あいつの人生は終わるんだぞ」
会場は静まり返り、やがて悲鳴に近いざわめきが起きた。
康夫は顔を真っ赤に染め、絶叫した。
「消せ! 誰だ、こんな悪質な細工をしたのは!」
しかし、映像は止まらない。
康夫が瑠美を「調教」し、一真が自分の子であることを誇示する音声までが、スピーカーから響き渡る。
瑠美はその場に膝をつき、顔を覆った。
修は、震える手で瑠美の肩を抱いた。
それは十四年前、出張先から戻った時にすべきだった、唯一の行動だった。
「お義父さん。もう、終わりです」
修の声は、驚くほど静かだった。
康夫は崩れ落ちるように椅子に座り込んだ。
彼の社会的地位、名誉、そして最も執着していた瑠美への支配権。
すべてが、一瞬にして灰に帰した。




