第二章:反逆の狼煙
その夜、修が書斎で一人、酒を煽っていると、一真が入ってきた。
「パパ。いつまで、この茶番を続けるの」
修は答えられなかった。
息子に真実を知られている。
その恐怖が彼を支配した。
しかし、一真が口にしたのは、予想だにしない言葉だった。
「パパがじいじを殺せないなら、僕がやるよ。あの男は、ママを壊し、パパの尊厳を奪った。そして、僕という『間違い』をこの世に産み落とした」
一真の瞳には、康夫から受け継いだ冷酷な知性と、修から受け継いだ(と信じたい)瑠美への深い愛が同居していた。
「一真、やめろ…。あの男を敵に回せば、俺たちの居場所はなくなるんだ」
「居場所? こんな地獄、いらないよ」
一真は修の机に、一枚のSDカードを置いた。
「じいじが隠し持っていた、ママへの脅迫動画のバックアップ。それと、最近僕が隠し撮りした、じいじとママの『密会』の映像。全部入ってる」
「これを…どうするつもりだ」
「明日、じいじの喜寿を祝う親戚の集まりがあるよね。そこで、特大のスクリーンで流してあげる。秋山家の『絆』を、みんなに見せてあげようよ」
修は戦慄した。
それは、康夫が長年かけて築き上げた城を、土台から爆破するに等しい行為だった。
しかし、同時に、心の奥底で眠っていた「男」としての怒りが、暗く燃え上がるのを感じた。




