第十二章:絶望の果ての誘惑
一真は小春の背後から蛇のようにまとわりつき、その耳元で甘く、しかし猛毒を含んだ声で囁いた。
彼の息が小春の肌に触れ、彼女の体を震わせる。
「姉さん、よく見てごらん。君が必死に守りたかったはずのあの男…清廉潔白を装っていた恋人は、僕が提示した数千万円の小切手を見た瞬間、犬のように尾を振ったよ。
君が抱えていた秘密、そのすべてを彼は一滴残らず売り払ったんだ。それだけじゃない。君を救うと豪語していたあのトレーナーも、最初から僕が配置した飼い犬に過ぎない。
…この広い世界で、君を愛し、守る味方なんて誰一人としていない。君は最初から、僕の掌という箱庭の中で、滑稽に踊らされていただけなんだよ」
その言葉は、小春が数年間、血を吐くような思いで積み上げてきた正義と努力の結晶を、一瞬で無価値な瓦礫へと変えた。
彼女の心は、激しく揺さぶられ、過去の記憶がフラッシュバックする。
あの恋人との甘い時間、トレーナーとの厳しい訓練…すべてが偽りだったのか。
膝の力が抜け、小春は床に崩れ落ちる。
視界が歪み、信じていた世界が音を立てて崩落していく。
彼女の矜持は、一真という巨大な悪意にとって、退屈を凌ぐための「安っぽい玩具」でしかなかったのだ。
「どうして…こんなことに…私は何のために戦ってきたの…?」
小春の心は、深い絶望に染まり、涙が止まらなかった。
一真は、絶望に打ちひしがれる小春の髪を無慈悲に掴み上げると、強引にその顔を上向かせた。
彼の目は、姉の苦痛を味わうように輝いていた。
「酷い顔だ…。でも、その絶望している顔が一番美しいよ」
一真は、小春の頬を伝う涙を這わせるように舌で舐め取った。
塩辛い液体の味をじっくりと堪能しながら、空いた手を彼女のブラウスの隙間へと滑り込ませる。
小春の体は、拒否しようとするが、弟の指の感触に震えてしまう。
心の中では、怒りと恥辱が渦巻いていた。
「一真…こんなこと…絶対許さない…でも、体が…」
乱暴にボタンが弾け飛び、露わになった柔らかな膨らみを、彼は逃がさないよう強く鷲掴みにした。
震える先端を指先で執拗に摘み、逃げ場を奪うように捻り上げる。
「ひっ…、あ…っ!」
小春の口から、拒絶とは裏腹に甘く湿った喘ぎが漏れた。
脳が拒絶を叫んでいても、一真の熟練した指先に愛撫される身体は、裏切り者のように熱を帯び、無意識に彼の指を求めてくねる。
その屈辱的な反応に、小春の瞳にさらなる絶望の色が濃くなった。
「体が…勝手に…こんなの、私じゃない…」
彼女の心は、自己嫌悪で満ちていた。
「ママを見てごらん。彼女は不幸に見えるかい?」
一真が促す視線の先、テラスでは瑠美が穏やかな笑みを浮かべて紅茶を口に運んでいた。
かつては小春と同じように苦悩していたはずの彼女は、今や一真から与えられる快楽と安寧だけを糧に、すべての思考を放棄した美しい人形へと成り果てている。
小春は、母の姿を見て、心が凍りついた。
あの強い母が、こんなに変わってしまうなんて…。
「お母さん…どうして…そんな顔で…」
「君ももう、疲れただろう。正義や自立なんていう、実体のない重荷を背負って泥の中を這いずり回るのは。僕にすべてを委ねれば、もう何も考えなくていい。君の犯した罪も、裏切った恋人の醜い記憶も、僕がすべて飲み込んで、この世から消してあげる。…ほら、ここもこんなに僕を欲しがっているじゃないか」
一真の言葉に呼応するように、彼の手はスカートの下へと潜り込んだ。
薄い布地を割り、熱く湿りきった秘部へと直接触れる。
執拗に、かつ繊細に。
花弁を割り、中心にある最も敏感な芽を、指の腹で円を描くように追い詰めていく。
一真の心は、姉の陥落を予感し、興奮で高鳴っていた。
「もう、やめ…て、一真…、家族なのに…」
小春の声は、弱々しく懇願するが、体は正反対の反応を示す。
「口では嫌がっても、身体は正直だ。…愛おしいよ、姉さん」
一真は冷ややかに、そして悦びに満ちた目で、腰を浮かせて悦楽に翻弄される小春を見下ろした。
指が入り込むたび、卑猥な粘着音が静まり返った部屋に響き渡る。
小春の理性の糸が、ぷつりと音を立てて切れるのは、もう時間の問題だった。
彼女の心は、抵抗を諦めかけ、甘い闇に落ちていく予感に包まれていた。




