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第十章:小春の復讐
一方、家を追われた小春は、絶望の淵から這い上がり、一真を倒すための執念だけで生きていた。
彼女は正攻法では一真に勝てないことを悟り、ある特殊なルートを通じて、一真の投資スキームの脆弱性を探り続けていた。
「一真…あんたがママから奪った時間を、必ず返してもらうわ」
小春は、一真が最も信頼を置いていた若手トレーナーに接触し、彼を籠絡することに成功した。
一真は他人を信じないが、自分と同じ「傲慢な知性」を持つ人間には、わずかな隙を見せることがあった。
ある夜、一真が瑠美との晩餐を楽しんでいる最中、彼のプライベート・システムに異変が生じた。
画面に映し出されたのは、株価の大暴落でも、資産の流出でもなかった。
それは、かつて康夫が隠し持っていた、あの「アパートでの盗撮動画」と、一真自身が瑠美を支配している様子を記録した最新の映像が、世界中のSNSへと一斉に拡散され始めているという通知だった。
「何っ…!?」
一真の表情が初めて歪んだ。
彼は自分の支配が「閉じた世界」であることを前提にしていた。
しかし、小春はその閉じた世界の壁を、内部からではなく、世界という濁流を流し込むことで破壊したのだ。




