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薄雪草を抱く  作者: 紀野光
菊理媛神

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菊理媛神1

 初回の授業といえど、県内トップの高校。どの教科も容赦がなかった。一日目からクタクタ。放課後、一年生は期待に胸膨らませて部活見学に向かった。そんな中、春香は真っすぐ家に帰る。高校でも春香は部活には参加しないだろう。


 新品のブレザーは硬い。故に着心地は悪い。さらに合成皮革のローファーもまだ足に馴染んでいない。足の痛みを我慢して電車から降りて慣れた道を歩く。


 春香は早速スニーカーに変えようかとすでに悩み終わっていた。そして荷物は重く、ボストンバック型のスクールバックも肩に食い込む。これもリュックに変えようと思う。


 春香が憧れた、ちょっと前の女子高校生の姿は来週にはいなくなることが確定した。月曜日からは現代風の高校生になる。


 左手首の腕時計は正確に時を刻む。入学祝いに腕時計を買ってあげると言われたが春香はすでに持っているからと断った。ダルダルだったメタルバンドは時計屋に持ち込んで、春香の手首に合うように調節してもらった。


 四月になって暖かくなった。柔らかい春の風が春香を撫でる。


 何度もお世話になった、あのこじんまりした神社は春香の通学路の一部になった。


 中学三年生になってからは受験勉強で、合格してからは入学準備と入学前課題で忙しくて、高天原を最後に訪れてから一年以上経つ。だから高校生活に慣れたら遊びに行こうと春香は計画している。


 皆、久しぶりに会ったら必ず喜んでくれる。特に天照大御神は受験戦争について知りたがっていて、春香の経験談を楽しみにしていると約束していた。

 

 春香は足の痛みが限界に近く、早く解放されたくて無理をしてでも早歩きをする。

 

 神社の横を通る。

 

 子どもがすすり泣く声が聞こえた。春香は立ち止まる。視線を落とすと細い鳥居の横で長袖半ズボンの子どもがうずくまって泣いていた。

 

 春香は近寄って膝をついて目線の高さを同じにした。


「どうしたの?」


 優しく話しかける。子どもは顔を上げない。


「お母さんとお父さんは?」


 子どもは下を向いたまま首を横に振る。その反応を見て春香は子どもの手を握る。


「じゃあ、お姉ちゃんと一緒に探しに行こうか。ねっ?」


 春香は子どもの手を引っ張って立たせて、ハンカチとティッシュでぐしょぐしょの顔を拭いてあげた。そして安心させるために笑顔を作る。


「よし、出発だー!」


 春香は子どもと手を繋いで、歩いてきた道を引き返した。


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