表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薄雪草を抱く  作者: 紀野光
黄泉津大神

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/48

黄泉津大神9

「わかった」


 天之御中主神は大きく息を吸う。


「『天之御中主神』は『黄泉津大神』を解放する」


 天之御中主神がそう宣言すると鏡が輝きはじめ、その光に照らされた黄泉津大神が霧散していく。キラキラした湯気のようなものを身体から出して、黄泉津大神の姿が徐々に透明になって消えていく。


「天之御中主神。最後に頼みごとをしていいでしょうか」


「僕にできることならいいよ」


「この子たちも解放してあげてください」


 黄泉津大神は近くにいた元人間を撫でた。


「わかった。約束する」


 天之御中主神の強い応答に黄泉津大神が少し安心したような表情になった。そしてごめんなさいとありがとうを言い残して完全に消えてしまった。


 黄泉津大神の支配から解放された元人間たちが一人二人と頭を掻きむしり苦しみ始めたと思ったら、春香たちに襲い掛かってきた。


「少し時間がかかるけど、君たちも解放してあげる。絶対に」


 天之御中主神が春香の手を引き、天照大御神が祥子をおんぶする。


「帰るよ」


 遠くから光が照らす。月明かりの様に柔らかい。その方向へ全員で急ぐ。瘴気で視界が悪いが一度通った道。はっきりとした導もある。


 途中途中で天照大御神が光を放ち、元人間たちの目を眩ませる。それでもいくらかの個体はずっと追いかけてくる。


 ラストスパート。急な上り坂を必死に登る。


 日の光の下に出た。


 背後で轟音がした。春香は振り返る。


 黄泉の国の入り口が大岩で塞がれた。それはかつて石長比売と紹介されたものだった。


 月読命が幾人かの神を引き連れて駆け寄ってくる。


「やっぱり君に頼んで正解だったよ」


 天之御中主神が肩で呼吸をする。


「あの人たちは? 閉じ込めちゃうの?」


 黄泉津大神に毒された、元々は人間だった人たち。春香の質問に天之御中主神が答える。


「一人ずつ、時間はかかるけど、黄泉の国の穢れを祓って逝かせてあげる。今すぐには難しいから待ってもらうことになるけど」


 天照大御神の背中から降ろされた祥子はぐったりとしたまま。春香はもう一度祥子の手を握って菊理媛神の神力を流すが全く変化が起きない。春香は焦る。


その様子を見た天之御中主神が春香を止めた。


「もうだめだ」


「でもっ」


「それに、祥子さんがここで再び目を覚ましたとして、喜んでくれるかな」


「それは…」


「だから君の言うとおりにするよ」


「私の?」


「そう。家族の元に逝かせてあげる。人間の、祥子さんの思いをわかっていなかった。君が言うまでわからなかった」


 天之御中主神が高天原と現世を繋ぐ門を開く。


「現世に帰してあげよう。それで逝くことができる。場所は、祥子さん家族のお墓がいいかな?」


 春香に質問する。


「うん。いいと思う」


 頷く。


「祥子、お疲れ様」


 天照大御神が声を掛ける。


「さようなら」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ