表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薄雪草を抱く  作者: 紀野光
黄泉津大神

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/48

黄泉津大神8

……。


 黄泉津大神が膝から崩れ落ちる。


「私は…、あなたに……」


 黄泉津大神は震えている。


「私は、一体なにを…」


 天照大御神は起き上がって、黄泉津大神に語り掛ける。


「伊邪那美、ごめんなさい。あたしはあなたのこと、もう責めない。許してなんて言えないけど、謝らせて。本当にごめんなさい」


「……」


 天照大御神は焼き切れてしまった個体に触れてごめんねと呟く。


「私は、あの人を、笑顔に…」


 黄泉津大神は見回す。


「違う…。どうして」


「一旦休もう?」


 天照大御神は黄泉津大神に近づいて抱きしめる。


「辛かったよね。苦しかったよね」


 天照大御神の肌が爛れる。


「ごめんね。あの時、わかってあげられなくて」


 黄泉津大神はやめろと口では言うが、抵抗しない。


「ごめんね、あたしが間違ってた」


 天之御中主神が春香に手招きをする。菊理媛神の神力で祥子の魂を繋ぎ留めてほしいと頼む。


 祥子は棺桶に入れられたおばあちゃんと同じ表情をしている。死人の顔。


 助かるのか。春香は質問する。


 神力が全て抜かれている。とにかく応急処置を。天之御中主神が指示する。


 春香は祥子の手を取る。空気のように重さが無い。神力が抜けた魂だけの存在。


 祥子の手を握る。


 黄泉津大神が春香たちの行っていることを見て絶望する。五百年前と同じように。


「私はなんのために」


 天照大御神を突き放す。そして頭を抱える。


「私は、ただ…」


 黄泉津大神の神力が大きく揺らいで、元人間たちが支配から解放される。


 辛い。苦しい。助けて。帰りたい。それぞれがそれぞれの思いを口にする。


 ごめんなさいと主人が悔いる。


 天之御中主神が自分の体に手を突っ込む。血は出ない。


「君を『黄泉津大神』にしたのは、僕だ」


 体の中から、あの鏡を取り出した。


「君を、伊邪那美命だったときは縛りつけて、黄泉津大神に変えてから更に苦しめた。でも、僕も変わったんだ。感情っていうのがわかるようになってきた」


 天之御中主神の神器が輝く。


「今の君は、どうしたい? 今の僕は、君を否定しない」


 黄泉津大神は天之御中主神を見上げる。


「あの人のところに、行きたい」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ