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薄雪草を抱く  作者: 紀野光
黄泉津大神

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黄泉津大神7

記憶。

 

晴れた日。丘の上。大勢の元友人たちに向けて演説している。

 

このわからず屋ども。

 

頭の中は怨恨でいっぱいになり、罵詈雑言がグルグル回る。

 

背中から、冷たいものが貫いて、それが高天原中を襲った。その光景を見て、異常に高揚感に満たされた。


意識が消えていくとき、私は私を奪い取られて、新たな私を与えられた。


想起。


いつからだろうか。友人たちを恐怖の対象として見るようになったのは。


もう覚えていない。


震えが止まらない。


誰も彼もが憤っている。神も人も、私を責める。


私はただ…——。


天之御中主神に全てを終わらせたいと言った。


認めてもらえなかった。


私が大鳥居の下で天之御中主神を見つけた時は、ただの記録に過ぎなかった。姿かたちは持っておらず、そこに在るだけの神力だった。


自我が宿る前の天之御中主神ならば、私を解放してくれただろうか。


回想。


天照大御神に会った。最古の神の一柱。


巫女をぞろぞろと引き連れて、澄んだ顔をしながらも、今日も疲れた目をしている。その空虚な瞳は、悠久の「無」を物語っていた。


人を使役しながら、人を見ようとしない神。


天照大御神は私を見ると私のもとまで寄ってきた。そして頭から威圧するような態度で、私への不満を捲し立てた。


私は、天照大御神の笑った顔を、久しく見ていない。


追憶。


あの人が黄泉送りにされた。私が見ていない隙に。


あの人は悪くない。全て私、私が悪い。始めたのは私なのだから。私がなんとかする。必ず。


何度そう言っても、発端への執拗な追及は止まらなかった。


あの人は最期、私を憎んだだろうか。


胸のあたりが、絞られているかのように締め付けられて痛い。


懐古。


暖かい。陽だまりの中、人間と隣に座って話している。


最近、ようやく笑うようになった。人相とは、こんなにも様変わりするものなのかと思った。


伊邪那美命様は、お優しく、そしてお美しい。貴方様のために働けて、傍にいられて嬉しい。


人間はそう言った。


初めての感情。


私もあなたの笑顔が、喜ぶ顔を見られるのなら……。


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