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薄雪草を抱く  作者: 紀野光
天照大御神

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天照大御神3

 春香は他にも中身が予想できる食べ物をもらっていくことにした。多分チョコレートと恐らくケーキともしかしてスナック。


 異国情緒多彩な宝の山から食べ物を探すのは労力を使ったけど、見たことのないものをたくさん見て触って、春香は久しぶりにわくわくした。


 目に入るモノ入るモノに手が伸びていく。幾何学模様の皿、花柄のコースター、陶器製の象の置物に木製のしゃれこうべ。

 

 他の神たちは春香に話しかけてこなかった。高天原では珍しい人間がいることを気にする素振りもない。見ず知らずの人間だからかそもそも興味がないのか天照大御神と同じようにここにいることに気づいていないだけなのか理由はわからない。

 

 誰にも認識されていないとしても春香はそこにいる。そこにいるから神たちの会話が聞こえてくる。皆口々に同じことを言う。天照大御神は変わったと。

 

 時間が経って神たちは続々と帰っていく。賑わっていた敷地も閑散となり、疎らに残っている神たちは談笑している。足の踏み場もなかった地面にはゆとりが生まれていた。

 

 周りを見回す春香は棚の上にある時計が触られた形跡がないまま丁寧に並べられているのを見つけた。


 春香は余り物たちを眺める。子どもが買ってもらうようなおもちゃから社会人が身に着けるような本格的なもの、そしてインテリア用の砂時計。


「やっぱり時計が残っちゃったか」


 いつの間にか隣に立っていた天照大御神は自分の腰に手を当てて春香に話しかける。


「皆さん時計は使わないんですね」


「うーん、疲れちゃってるから」


「たしかに。あんなにモノがたくさんあると、探すのも疲れちゃいますから。ほとんど帰っちゃいましたし」


 天照大御神は後ろを振り返って居残って駄弁っている神を見る。


「…そうだね」


 一瞬なんとも言えない表情になったがすぐに笑顔に戻って春香に勧める。


「でもまあ、まだまだたくさんあるから持ってって」


「いえ、もうたくさん貰いました」


 春香はお菓子で少し膨らんだサブバックを肩にかける。


「えー。それだけでいいのー?」


「これ以上は申し訳ないです」


「あたしも余ったら困るんだよね。置くところないし。だって私の家にまだ山ほどあるの」


 じゃーんと手に持っている雑貨を見せてくる。


「これとかどう? ブレスレットなんだけど。たしか南米で買ったやつでね、こわーい悪霊を祓ってくれるんだって」


 自分の腕につけてジャラジャラと鳴らす。


「これだけで大丈夫です」


 断ると天照は残念そうに腕から外して時計の横に置いた。


「じゃあ時計あげる。人間には必要でしょ」


 天照大御神は大人の女の人が身に着ける少し小さめのシルバーの腕時計を手渡してきた。


「こんな高価なもの貰えません」


「遠慮しないで。これ太陽光で動いてるの。エコでしょ。今日会った記念に、ね?」


 太陽の神の素直で屈託のない微笑は優しくて眩しくて、気づけば自分も笑っていた。


「じゃあ、行こうか」


「どこに?」


「はーちんに高天原を案内してって、さっきあーちゃんに頼まれたの」


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