表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/65

第5話:洛陽へ ~三人の娘と旅立ち~

第5話:洛陽へ ~三人の娘と旅立ち~


丁原と呂布は、洛陽へ向かうことを決意した。並州に残す者たちへの手配を終え、旅の準備を進める。並州の兵の中から、丁原と呂布に付き従う精鋭が選ばれた。彼らは、呂布が最も信頼する張遼、高順、厳続といった将に率いられる。彼らの顔は、並州の冬風に晒され、精悍に引き締まっていた。陳宮は、洛陽での複雑な政局を鑑み、丁原に同行することを選んだ。彼の知略が、来るべき帝都での波乱を乗り切る鍵となるだろう。彼の目は、遠く帝都を見据えていた。


そして、呂布は三人の娘たちを、洛陽へ連れて行くことに決めた。並州に残しておくのは危険であり、また、彼女たちを自身の傍らから離したくないという、父としての深い思いがあった。娘たちも、父と共に新しい場所へ行けることに、幼い胸を高鳴らせていた。彼女たちの声は弾み、新しい冒険への期待を語っていた。


出発の日、九原の城門には、見送りの人々が集まっていた。丁原に代わって並州の留守を預かる者たち、そして、丁原と呂布を慕う並州の民や兵士たちだ。彼らは、并州を守ってくれた英雄たちの旅立ちに、不安と期待の入り混じった複雑な表情で見送っていた。並州の寒風が、彼らの顔を撫でていく。丁原の顔には、並州を離れることへの寂しさと、都へ向かう決意が入り混じっていた。呂布は、赤兎馬に跨り、並州の大地を振り返った。厳しい土地だったが、ここが彼の故郷であり、彼が守るべき全てがあった場所だ。土の匂い、冷たい空気、そして並州の民の顔。五感が捉える全てが、別れを告げているようだった。胸に、並州の土の感触が残っているかのようだった。


三人の娘たちは、並州を出ることに、不安よりも好奇心の方が大きかったようだ。暁は、これから見るであろう新しい場所や人々に、知的な興味を抱いていた。その瞳は輝いていた。飛燕は、父と共に旅をすること、そして新しい冒険が始まることに胸を躍らせていた。彼女の体からは、これから始まる旅への期待が溢れ出ていた。華は、ただただ父や姉たちの傍にいられることが嬉しく、旅の準備をする大人たちの間をちょこちょこと駆け回っていた。彼女の手は小さく、父の鎧に触れる度、その冷たい金属の手触りを感じていた。彼女たちの顔には、並州の子供らしい、素朴な可愛らしさがあった。


馬車が用意され、三姉妹はそれに乗り込んだ。座席の硬い感触、馬車の揺れ。呂布は赤兎馬に跨り、馬車の傍らを歩く。赤兎馬の毛並みは、朝日に照らされ、まるで燃えるように輝いていた。張遼、高順、厳続、陳宮といった主要な面々も、それぞれの馬に乗り、彼らに付き従う兵たちが列をなす。並州の騎馬隊、そして陥陣営といった精鋭たちだ。鎧の金属が太陽に反射して鈍く光る。彼らの行進する音は、遠くへ旅立つ決意を告げるように響いた。馬蹄の音が、並州の大地に残響する。


並州を出て、中原へと向かう旅が始まった。最初に見える風景は、並州の延長線上にある荒涼とした大地だった。しかし、南へ進むにつれて、風景は徐々に変化していく。山々が連なり、森が深くなる。川が流れ、以前よりも緑が多くなる。並州の土と枯れ草の匂いから、土と葉の匂いへと変わる。空気も、刺すような冷たさから、幾分か和らいでいく。肌に当たる風も、並州のそれよりは優しい。しかし、その風景の中にも、荒廃の兆しが見え隠れしていた。


道中、一行は戦乱の爪痕を目の当たりにする。焼かれた村、 見捨てられた田畑、逃げ惑う人々。中原は、董卓の専横、そして黄巾の乱以来の混乱により、疲弊しきっていた。道端には、飢えや病で倒れた人々の姿さえあった。彼らの痩せ細った体、虚ろな目。死の匂いが、風に乗って鼻を突く。それは、並州の貧困とは異なる、絶望的な匂いだった。


三姉妹は、馬車の中からこれらの光景を見ていた。最初はその凄惨さに言葉を失っていたが、旅が進むにつれて、その光景が日常であるかのように変わっていく。幼いながらも、彼女たちは乱世の厳しさ、そして民がどれほど苦しんでいるのかを肌で感じ取っていた。馬車の揺れ、外から聞こえる人々の話し声、そして時折耳にする悲鳴。旅の音は、不安と危険に満ちていた。馬車の硬い座席の感触、外の冷たい空気。


呂布は、馬上でこれらの光景を見て、拳を握りしめた。並州の貧困とは異なる、人為的な悪意がもたらす苦しみ。董卓という存在が、この大地にもたらしているもの。怒りが胸の奥底から湧き上がってくるのを感じた。彼は、自分が何のために戦うのか、何を守るべきなのか、改めて考えさせられた。娘たちを守るため。そして、このような苦しみから民を救うため。そのためには、さらに強くなければならないと、彼は心に誓った。


旅は続く。洛陽へ向かう道は長く、困難なものだった。しかし、呂布の胸には、父である丁原への忠義、娘たちを守るという決意、そして乱世を変えたいというかすかな希望が宿っていた。中原の荒野を、呂布と並州の精鋭たちは進んでいく。帝都洛陽を目指して。そこには、運命的な出会いと、さらなる激しい戦いが待ち受けていることを知らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ