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第23話:董卓軍の壁 ~華雄、黒沙との激突~

第23話:董卓軍の壁 ~華雄、黒沙との激突~


呂布の常識外れの武勇により、董卓軍は洛陽での市街戦で予想外の苦戦を強いられていた。多くの兵士が呂布の手にかかり倒れていく。董卓は自身の兵力が、呂布ただ一人にここまで翻弄されることに激怒していた。彼の顔は、怒りで真っ赤になっていた。


董卓軍の将軍たちが、呂布の前に立ちはだかった。それは、呂布という圧倒的な力に対する、董卓の最後の抵抗だった。その中でも、特に目を引く二人の男がいた。一人は、西涼の猛将、華雄。巨体と怪力を持つ男で、大刀を振るえば大地が割れるかのようだった。彼の体からは、闘争心と、荒々しい気迫が放たれていた。彼の纏う革鎧の匂い、汗の匂い。まるで野獣のような匂いだった。


そしてもう一人。黒い鎧に身を包んだ、かつて並州で呂布と刃を交えたこともある男、黒沙。彼は董卓の配下となっており、その武勇は並州時代よりもさらに磨きがかかっていた。彼の目は、呂布に対する深い敵意と、並州での敗北の屈辱を宿していた。彼は、並州での敗北の雪辱を果たす機会を狙っていたのだ。彼の纏う空気は、冷たく、そして不気味だった。黒い金属の手触りを想像するだけで、冷たさが伝わってきた。それは、復讐の匂いだった。


華雄が最初に呂布に挑んだ。彼の巨体が、呂布目掛けて突進する。地面が揺れる。大刀が空気を引き裂く音を立てて振り下ろされる。その一撃は、岩をも砕くかのようだった。刃から放たれる冷たい光。呂布は赤兎馬を巧みに操り、その一撃を避けた。方天戟と大刀がぶつかり合う、凄まじい金属音が響き渡る。火花が散り、地面が陥没する。火花の熱が顔を焼く。


華雄の力は強大だった。彼の腕力は、並州の熊にも匹敵するだろう。しかし、呂布の技はさらに上をいった。赤兎馬のスピードと、呂布の並外れた体術、そして方天戟の変幻自在な動き。呂布は華雄の猛攻を捌き、反撃の機会を窺う。二人の間に、激しい武の応酬が繰り広げられる。洛陽の街路が、二人の英雄の戦場となった。周囲の建物は、彼らの放つ気迫によって震えているかのようだった。瓦礫の匂い、そして血の匂い。炎上する街の熱も、肌を焼く。


華雄が猛攻を仕掛けている最中、黒沙が機会を捉え、呂布の側面から奇襲をかけた。黒沙の剣は、呂布の隙を狙うように、素早く、そして正確だった。彼は、並州での呂布の戦い方、そして彼の癖をよく知っていた。剣先から放たれる、鋭い殺意。


呂布は、華雄の攻撃を捌きながら、黒沙の奇襲にも対応しなければならなかった。二対一の状況は、赤兎馬を得た呂布をもってしても容易ではなかった。華雄の力強い攻撃と、黒沙の狡猾な剣技。二人の連携は、呂布を追い詰めていく。呂布の鎧に、新たな傷が増える。金属が削れる音が響く。息遣いが荒くなる。赤兎馬も、二人の敵に囲まれ、警戒の色を見せ始めた。荒い息遣い。馬の肌からは、熱と汗の匂いがした。


その時、張遼が駆けつけた。彼は、呂布の危機を察知し、華雄の前に立ちはだかった。「華雄! お前の相手はこの張文遠だ!」張遼の声は、冷静ながらも力強かった。彼の剣が、華雄の大刀とぶつかり合う。凄まじい金属音。張遼と華雄の間で、激しい戦いが始まった。剣と大刀がぶつかり合う音、二人の武人の気迫がぶつかり合う空気。彼らの纏う匂いもぶつかり合う。


高順と厳続率いる陥陣営も、董卓軍の兵士たちを食い止めながら、呂布の元へ近づこうとしていた。彼らの鎧の金属が擦れる音、統率の取れた足音。彼らは、主君のために、必死に道を切り開いていた。彼らの顔は血に染まっていたが、目は決意に燃えていた。彼らの纏う空気は、死を恐れぬ覚悟の匂いがした。彼らの鎧の手触りも、血で滑りやすくなっていた。


呂布は、張遼が華雄を食い止めてくれたおかげで、黒沙と一対一で対峙することができた。黒沙の目は、並州時代からの因縁を晴らそうという、強い憎悪に燃えていた。彼の纏う空気は、以前よりもさらに暗く、冷たくなっていた。それは、凍えるような冷気だった。


「呂布! あの時の借りを返してもらうぞ!」黒沙の声は、低い唸り声のようだった。その声は、憎悪に染まっていた。


「黒沙か。董卓の犬に成り下がったか」呂布の声には、侮蔑の色が混じっていた。


二人の間には、洛陽の喧騒の中でも、張り詰めた静寂が訪れた。剣と戟。因縁の対決が、今、洛陽の街中で始まったのだ。互いの息遣い、皮膚に当たる風の感触、そしてかすかな殺意の匂い。それは、血戦の予感させる匂いだった。呂布の心臓が、静かに、しかし力強く脈打つのを感じた。炎上する洛陽の熱波が、二人の顔を焼く。董卓軍の壁として立ちはだかる華雄と黒沙。呂布は、父と娘たちと共に洛陽を脱出するため、この壁を打ち破らねばならなかった。そして、彼らの背後には、彼が助けたいと願う女性、貂蝉がいるかもしれなかった。

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