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第16話:反董卓の狼煙 ~諸侯への呼びかけ~

第16話:反董卓の狼煙 ~諸侯への呼びかけ~


李儒からの誘惑を退け、丁原から赤兎馬を託された呂布。彼の「忠義」は試され、そして強固になった。丁原と呂布の父子の絆は、以前にも増して揺るぎないものとなった。しかし、帝都洛陽を覆う董卓の影は、日増しに濃くなっていた。董卓は、丁原と呂布の存在を危険視し、露骨な圧力をかけ始めた。朝議での丁原への嫌がらせ、丁原軍への物資供給の妨害、そして並州から連れてきた兵士たちへの挑発行為など、董卓の手は様々な形で伸びてきた。


丁原は、もはや董卓との共存は不可能だと悟った。漢臣として、民を苦しめる董卓の専横をこれ以上見過ごすことはできない。彼は、天下の諸侯に呼びかけ、共に董卓を討つことを決意した。それは、並州という辺境の一太守としては、非常に大胆な決断だった。


丁原は、洛陽の屋敷で陳宮と語り合った。「陳宮、どう見る? 今後、我々はどう動くべきか」丁原の声には、決意と同時に、重い責任感が滲んでいた。


陳宮は、冷静な分析を述べた。「董卓の力は絶大ですが、彼に従わぬ諸侯も各地におります。袁紹殿、袁術殿、曹操殿、公孫瓚殿、そして遠く江東の孫堅殿など……彼らも董卓の専横を苦々しく思っているはず。彼らに呼びかけ、力を合わせるのが、董卓を討つ唯一の道でしょう」


丁原は頷いた。「うむ、やはりそうか。ならば、陳宮、お前に檄文の作成を任せる。そして、信頼できる者を密使として、各地の諸侯に送ろう」丁原の目は、天下の情勢を見据えていた。彼の胸には、漢王朝への「忠」と、民を救うという「義」があった。


陳宮は筆を取り、檄文を書き始めた。彼の筆が紙の上を滑る音だけが、静かな部屋に響いた。檄文には、董卓の悪行を糾弾し、漢王朝の危機を訴え、共に立ち上がって董卓を討つべし、という熱い思いが込められた。それは、天下の「義」に訴えかける、魂のこもった文章だった。墨の匂い、紙の匂い。


呂布は、丁原と陳宮の傍らでその様子を見ていた。父が、天下を動かす大きな決断を下したこと。そして、陳宮がその知略で父を支えていること。呂布の心には、父への尊敬と、共に戦う仲間への信頼が満ちていた。彼は、自身にできることは、ただひたすらに強くなること、そして父の剣となることだと改めて誓った。赤兎馬の鬣を撫でる時の、温かい感触を思い出した。この馬と共に、父の「義」のために戦うのだ。


檄文が完成し、丁原は信頼できる部下たちを密使として、各地の諸侯の元へ送った。彼らは洛陽を密かに出発し、中原の荒野を駆けていった。彼らが無事、諸侯の元にたどり着き、協力を得られるか、それはまだ分からない。しかし、反董卓の狼煙は、並州から、そして洛陽から上げられたのだ。


この時期、呂布は洛陽の屋敷で、娘たちと共に過ごす時間も大切にしていた。乱世の緊張が続く中で、娘たちの存在は彼の心の安らぎだった。暁は静かに読書をし、飛燕は庭で木剣を振るい、華は屋敷の中を走り回っていた。彼女たちの無邪気な笑顔、元気な声、そして小さな手の温もり。それらは、李儒の誘惑を断ち切る力となった、彼の「義」の根源でもあった。


ある日、呂布は屋敷の庭園で、一人の女性を見かけた。その姿は、洛陽の華やかさの中でも、ひときわ目を引く美しさだった。彼女は庭の花を眺めていたが、その顔には、どこか深い悲しみの影が宿っていた。その女性は、かつて王允の屋敷で一度見かけた、貂蝉であった。

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