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全てを捨てて笑う覚悟


「私、完全な魔女になったら必要とされる?」

「今の魔女様でも十分必要とされますよ」

「……見放したりしない?」

「絶対に見放しません」


力強くそう断言される。

私は素直にアザリアの言葉を信じたいように思えた。

例え騙されているとしても、きっとこの話に乗ったことは後悔しないだろう。


「完全な魔女になるために力を貸してくれる?」

「もちろんです。魔女様が望むなら僕はなんだってします」


アザリアは強く頷いた。


「なら私、完全な魔女になるための訓練をしたい」

「本当ですか!?ありがとうございます、魔女様!!」


私の言葉にアザリアは跳ねながら喜んだ。

しかし、先に言わなければならないことがあるため、慌てて止める。


「待って!その前に条件があるの」

「条件、ですか?」

「せめて学園を卒業するまでは待ってほしいの。両親の遺産を使わせてもらってるからちゃんと卒業したい」

「学園というと魔女様が昼間にいた所ですよね?卒業までは何年ぐらいかかるのですか?」

「5年制で今2年生だからあと3年かな」

「そうですか。うーん……うん、問題ありませんよ。完全な魔女になるためには最低でも3年はかかるって言われていますし、寧ろちょうどいいぐらいです」


一瞬悩んだ様子だったが、何とか了承してくれた。

その事実に申し訳なくなる反面、ほっとした。


「ですがずっと魔術に向き合って3年と言われているので、学園に通いながらだともっと時間がかかるかもしれませんがよろしいですか?」

「うん。それは覚悟してる」

「そういうことでしたら、僕も魔女様のために頑張りますね」


アザリアはそう言い、私の前に跪くと私の手の甲にキスをしてきた。

その瞬間、左手の手首に鋭い熱を感じた。

慌てて袖を捲ると、そこには茨のツルのような模様が走っていた。


「な、なにこれ」

「魔女様の証です。これがあると皆が魔女様のことを守ってくれるようになりますよ」


アザリアはフードを脱ぐと軽く頭を振った。

先程は隙間から見えていた黒髪と金色の瞳が惜しげもなく晒される。

黒髪はボブカットではあるものの襟足だけを伸ばした髪型で、中性的な顔立ちに拍車をかけている。

そして、何よりも目を引くのはアザリアの頭の上に生えている猫の耳だ。


「猫の耳、」

「ああ、これのことですか?先ほどもお伝えしましたが、僕は猫とカラスの獣人ですので耳は動物寄りです」

「でもカラスの要素なくない?」

「実は僕、男性でも女性でもあるんです。ちなみに今は男性の姿です」


照れたように頬を掻くアザリアに首を傾げてしまう。

そういうものとして受け入れていいのだろうか。


「少し見ていてくださいね」


アザリアは一声かけると、ポンッという音と共に姿を変えた。

そこにはアザリアによく似た女性が立っている。

大きな変化と言えば、背中から生えた大きな翼と少し縮んだ身長だろうか。


「こちらは女性の姿になります。猫は男性寄りで、カラスは女性寄りと覚えてくださると分かりやすいかと思います」

「なるほどね。ちなみに一緒には出せないの?」

「出せはしますが…制御が難しいので意図的に分けるようにしています」


再び猫寄りの姿に戻ったアザリアは、私のそばに近寄ってくるとそのまま流れるように抱き着いてくる。

そしてくあっと欠伸をすると眠たそうに目を擦った。


「魔女様、今日はもう遅いですしそろそろ寝ませんか?」

「あ、もうそんな時間だったのね」


時計を見ればもうすぐ24時になるところだった。

たしかにいつもより夜更かしをしている。


ベッドに移動しようとした時、アザリアは先程までの饒舌っぷりからは想像できないほど急に言葉を詰まらせた。

それからクイっと私の袖を引くと控えめに口を開いた。


「あの、今日から一緒に寝てもよろしいでしょうか…?あと、で、できることなら僕もここに住みたい、です…」


予想外の申し出に思わず固まってしまう。

しかし悪意がなく、純粋に傍に居たいという意味を察したためすぐに頷いた。


「ふふっ、いいよ。そんなに遠慮しないで。何なら部屋も余ってるし、アザリアの部屋を作ろうか?」

「自室は不要です。むしろ魔女様とずっと一緒に居たいので部屋は一緒の方が嬉しいです」

「じゃあいっか」


そんな会話をしながらアザリアと一緒にベッドに入る。

誰かと同じベッドで眠るのなんて初めてで少し緊張したが、それ以上に嬉しさの方が強かった。

いつもは広くて寂しかったベッドが今日は狭くて温かい。


「おやすみなさい、魔女様」

「おやすみ、アザリア」



この日、私は魔女になることを決意した。



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