聞いてない!!!!
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教室に戻るとそこにアザリアはいなかった。
私の机の上には鞄が置いてあるのだが肝心のアザリアがいない。
そういえば、妖精と追いかけっこをしていてどれぐらい経ったんだ?
教室から中庭までそんな距離はない。
なのにアザリアが来てくれなかった理由が分からない。
「…いつの間にか依存気味だったのかな」
昨日あんなことがあったのだからできれば傍に居て欲しかったのだが、何かあったのだろうか。
「皆さん、席についてください」
教室に入って来た担任の先生の言葉ではっとなり、すぐに座る。
ある程度静かになったものの、やはりどこか浮ついた雰囲気が漂っている。
その雰囲気に改めて疑問を持ったところで担任が改めて口を開いた。
「ごきげんよう、皆様」
「「「ごきげんよう、先生」」」
「今日はホームルームの前に1点お話があります。実は入学当時から籍はあるものの親御さんのご都合で休学されていた学生さんがいたのですが、ついに本日から復学することになりました。さらに、このクラスに入るということで皆さんに紹介したいと思います」
皆は待ってましたとばかりに声を上げた。
皆が浮ついていた原因はコレだったのか。
休学していた学生がいたことも、その学生が今日から復学することも知らなかったのだが、たしかに浮足立って仕方ないだろう。
なぜならこの学園は滅多に転入生や復学生がいない。
理由は単純で、親元で暮らしている貴族が多いから。
「では入ってきてください」
担任の声に皆が期待の眼差しを扉に向けた。
私もそれにつられるように扉に視線を向ける。
「失礼いたします」
現れた人物に、私は目を見開くことになった。
そこに居たのはこの学園の制服に身を包んだアザリアだった。
胸元が膨らんだ上に普段よりも背が縮み、極めつけには女子学生用の制服を身に付けている。
ここでは女性として通すのだろうか。
教室中がざわめき、私は絶句した。
そんな中、担任は1人冷静に言葉を発した。
「では自己紹介をお願いします」
「はい」
そんな短い返事でアザリアはゆっくりと教卓の前に立つと、私たちの方に身体を向けた。
「本日からこのクラスでお世話になります、アザリア・ジグバルドと申します。よろしくお願いいたします」
深々と頭を下げるアザリアはただただ美しい。
見慣れた猫の耳も尻尾も、カラスの羽もない。
誰が見たって人間と疑わないだろう。
そもそも、なぜアザリアが皆に見えているのだろうか。
どうして復学生なんて…。
教室のいたるところで感嘆のため息が聞こえる。
それほどまでにアザリアは美しかった。
当のアザリアはというと笑顔のまま担任に視線を送っている。
「ではアザリアさん、窓際の1番後ろのあの空いている席に座ってください」
「はい」
返事をするとすぐに歩き出したアザリアは私の後ろの席に座った。
私はあまりの衝撃に後ろを振り向くことも、言葉を発することもできない。
そんな私の様子には気が付かず、アザリアは嬉しそうに笑った。
「改めまして本日からよろしくお願いしますね」
「……あとでしっかり話し合おうか」
唯一発せた私のか細い声にもアザリアは笑顔で元気よく返事をしたのだった。