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アザリアの温かさ

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お願いいたします!


「はい、アザリアです。ただいま戻りました」


ということは、いま目を覆っているのはアザリアの手なのだろうか。

後ろから抱きしめられていることに安心してか、肩の力がどんどんと抜けていく。


「魔女様、もう終わりにしましょう。これ以上はいけません」

「でも……」

「大丈夫です。私がいますから」

「…うん」


アザリアがそう言うのなら、と魔術の発動を止める。

すると今まで感じていた熱が嘘のように引いていった。

目を覆っていた手が離れ、視界が鮮明になる。

呆然とした様子のカイウスは腰が抜けてしまったようで、情けなく床に座り込んでいるのがよく見えた。


「魔女様、どうしてこの人間がここいるのですか?」

「話したいことがある、って言われたから婚約破棄だと思って招いたの。でも全然違ってて…あれだけ浮気のようなことをしていたのだから婚約破棄の話に違いないって思いこんじゃった」

「そうでしたか。それは大変でしたね」


アザリアは私の頭を撫でると落ち着かせるように優しく抱きしめてくれた。

そのまま縋るように抱きしめ返すと背中を優しくポンポンと叩かれる。

先程まで無意識の内に張っていた緊張が解けていくのを感じる。


「お、お前なんだよ!!」


そんな空気を壊したのはやはりカイウスだった。

彼は床に座り込んだままギャアギャアと喚いている。


「魔女様、少々お待ちください」

「何するの」

「あの人間の記憶を消します。このまま婚約破棄を認めさせるのは難しいと思いますからやり方を改めましょう」

「……」

「明日以降、学園で絡まれるようになっては魔女様の精神的な負荷が高すぎます。だから記憶を消し、ある程度元の状態に戻したいのですがよろしいでしょうか?」

「……うん、そうだね。お願い。もう疲れちゃった」

「お任せください」


アザリアは立ち上がりカイウスに近づく。

猫の耳と尻尾、カラスの翼を同時に出現させた状態のアザリアの表情は私からは見えない。


「ひっ!く、来るな!!」


カイウスはアザリアから逃れるように後ずさるも、腰を抜かした状態ではすぐに捕まってしまった。

そのまま首根っこを掴まれたカイウスはアザリアに持ち上げられる。

そんなカイウスの目の前にアザリアは手をかざす。


「これ以上僕たちの魔女様を傷つけるなよ。これは警告だからな」


するとカイウスの目が虚ろになった。

気絶したかのようにダランと手足が垂れたまま、雑にソファーに投げられる。


「魔女様、終わりましたよ」


アザリアが振り返って私に声をかける。

恐る恐る近づくと完全に気を失っているようだ。


「これで記憶が無くなったの?」

「はい。学園で魔女様と会話をする場面から今までの記憶を抜かせていただきました」


アザリアの右手の上には宝石のような物が乗っている。

その中には白いモヤのようなものが渦を巻いていた。


「なにそ、」

「いただきます」

「は?」


全てを言い切る前にアザリアが躊躇なく宝石を口に放り込んだ。

そして数秒後、ゴクリと飲み込んだのが目に見えて分かった。


「な、何してるの!?」

「どんなことが起きたのか知りたかったのでいただきました」


ふむ、なんて言いながら何もないところを見つめるアザリア。

しばらくすると「なるほど」と呟いて私の方を向いた。


「これは酷いですね…。本当にお疲れ様でした」

「さっきの石を呑み込むと見えるの?」

「はい、記憶が詰まった石を呑み込むと記憶の追体験ができるのです。ですが気持ちの良いものではありませんので魔女様はお控えくださいね。…それにしても、魔女様がこんなにも苦しまれているというのにお傍に居れず本当に申し訳ありませんでした」

「そんなに謝らないで。私はアザリアが帰ってきてくれただけで嬉しいから」


素直に思っていることを伝えるとアザリアは嬉しそうに尻尾を揺らした。

表情だけでなく、体の一部でも喜びを表現してくれるのが可愛く仕方ない。


「それよりもカイウスをどうやって家まで送ろうかしら。馬車はあるんだけど馬がいないのよね…」

「そういうことでしたら僕が送りますよ」


アザリアはそう言うと軽くカイウスを担ぎ上げた。

そのまま窓を開けてカラスの翼で飛び立とうとするアザリアの服を思わず掴む。


「待って!!」

「魔女様…?」

「私も連れて行ってくれない?」

「ですがもう夜ですので外は冷えますよ。お体に触ります」

「暖かい格好してくるから!」

「そこまでおっしゃるのならば分かりました。お待ちしております」


必死にお願いする私の姿に折れたアザリアは苦笑しながらも了承してくれた。


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