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魔女を怒らせるということ


「……え?」

「聞こえませんでしたか?婚約破棄の書類を出して、サインをしてください。今、本当に手持ちにないようでしたら控えが2階にありますので取ってきますよ」

「い、いや……待ってくれ」


カイウスは顔を真っ青にしながら私を見つめる。


「こんな傲慢な女よりもあなたのことだけを溺愛してくださる令嬢の方がいいでしょう?」

「シ、シエナはどうするんだ。俺と婚約破棄をしたら困るのはお前もだろう!」

「……ふふっ」


最後のあがきというようにカイウスは私を説得しようとする。

しかしその内容はあまりにも幼稚なものだった。

思わず笑い声が漏れる。

そんな私をカイウスは理解できないように見ていた。


「ふふふっ、申し訳ありません。……あなたは本当に何も見えていないのですね」

「……何?」

「もう終わりだと言っているのですよ。本当に私のことを愛しているというのならば、私を想ってここで終わりにしてくれませんか?」

「…俺がここで了承したら全て終わるんだろ?」

「そうですね」

「なら嫌だ」

「………あなたという人は本当に、」


全てを言わずにため息で濁した。


これは愛ではない。

ただの依存だ。

私が過去に送った愛を今でも抱き締めて依存しているだけ。

それは私からの愛でなくてもいいはずだ。



「やはり愛していたのは私だけだったのですね」



その瞬間、何かの糸が切れたのだろう。

怒りなのか、悲しみなのか、呆れなのか。

自分自身でも分からない内に左手首が異常なほど熱くなる。

今なら何でもできるのではないか、と思ってしまうほどの熱に口角が勝手に上がってしまう。



殺してしまえばいい。

魔術を使えば人間には何も分からない。

現に魔術で窓ガラスを割った時の証拠は何1つない。


自然と左手をカイウスに伸ばしていた。

なぜかやり方が分かる。


カイウスを殺せば全てが丸く収まる。

もう二度と、こんな不毛な時間を過ごさなくて良くなる。



ならば、殺してしまおう。



「魔女様」



魔力を魔術に変換しようとしたその時、誰かに目元を覆われて後ろから抱きしめられた。

その安心する優しい声に聞き覚えがあった。


「あざりあ…?」


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