今に始まったことではない。
本日から1週間、1日に複数回更新します!
(8時、12時、17時、20時目安です!)
完全新作ですので、ぜひお楽しみいただければと思います!
応援のほどよろしくお願いいたします!
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__最後に彼の瞳に映ったのはいつだろう。
私、シエナは教室の隅でそんなことを思った。
視線の先には、婚約者のカイウスがいる。
彼は私の視線に気づくことなく、自身を囲んでいる令嬢たちと笑顔で談笑していた。
私とカイウスは随分前から婚約関係にある。
幼馴染で、お互いの身分を考えても両家とも異論はなかったと思う。
2年前、家業である貿易のために両親が乗った船が事故で沈むまでは。
幸いにもこのディートヘルム学園に入学することが決まっていたため、今は遺産を元に学業に専念できている。
それでも学園を卒業したら1人で家業を継ぐか、もしくはすぐに嫁がなければならないだろう。
カイウスにとっても私という存在が邪魔になったのだと思う。
私の両親の葬式を最後に彼とはまともに会話をすることは無くなった。
(……もう、帰ろう)
今日もまた、カイウスと会話することなく学園を後にした。
他の学生は馬車で迎えが来るが、私は徒歩で帰る。
歩いて帰れない距離ではないし、何よりも遺産を出来るだけ使いたくはなかった。
金銭的な問題で使用人は次の就職先を与えた上で解雇した。
今頃、友人の屋敷で働いていることだろう。
(今日の晩ご飯、何にしようかな)
料理人もいないため自炊をしているのだが、どうにも自分用だと作る気になれない。
(昨日は一応食事を取ったし、今日ぐらいは食べなくていいかな)
生きる気力というか、そういったものが湧いてこないのだ。
両親を亡くし、婚約者には見向きもされない。
手元に残ったのは遺産だけ。
(…全部捨てて逃げ出したいな)
見た目だけは立派な我が家の門を押し開けながら私は小さくため息を吐いた。
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プロローグ部分なので短いですが、どんどん更新しますのでお楽しみに!