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ショートストーリーズ

ショートストーリー ひのもと八百万の神と仏の日常

作者: 遠部右喬

 生者達と少ーし位相のずれた世界。そこには、神や仏と呼ばれる尊い方々が暮らしている。


 いかに尊い方々といえ、彼等にも日常はある。常に天災を起こしたり衆生済度に奔走している訳ではない。ある会社のある部署……まあ、ア〇ソックやセ〇ムのような部署だと思っていただければいい、そのオフィスで、空海は上司である大黒天様に呼び止められた。


「今日から新人が入るからさ、空海君、暫く面倒見てやってよ」

「分かりました。珍しいですね、今時新人なんて」


 空海が入定する前の時代、人々にとって神や仏は身近なものだった。日々を彩るものや起こる様々な出来事に神や御仏の姿を見出し、感謝と恐れを抱くことに疑問を持つ者は居ない、そんな時代だった。しかし、時の流れは目まぐるしく、忙しなさは衆生から彼等の存在を薄れさせた。当然のように、神仏の仲間入りを果たす者は年々と減ってゆく。空海の務める会社でも、実に数百年ぶりの新人だった。


「まだ若いんだろうなぁ。大丈夫ですかね、私みたいなおじさんと、話が合うかなぁ」

「いや、結構年はいってるんだよ。何なら、君より年上よ?」

「あ、そうなんですね」


 それはそれで気を遣うやん……と思いつつ、空海は業務を熟すべく自分のデスクへ向かった。

 暫く事務処理に没頭していると、背後から声を掛けられた。慌てて立ち上がった空海の眼に、厳つい大黒天とその脇に立つ小柄な姿が映る。


「空海君、彼が朝話した新人の小鬼君」

「小鬼と申します。まだ右も左も分かりませんが、早く皆様のお力になれるよう頑張ります。よろしくお願い致します」


 小鬼は礼儀正しく頭を下げた。


「そんなに硬くならないで下さい。空海です、よろしくお願いします」

「取り合えず、今日はセキュリティシステムの使い方と報告書の作成を教えてあげて。後、名刺発注してあげてね。それじゃ、私は会議があるから、後は任せた!」


 片手を挙げ、大黒天はいそいそとオフィスを出て行く。心細そうに大黒天を見送る小鬼を安心させるように、空海は笑顔で話しかけた。


「まず、名刺を発注しちゃいましょうか。まだ自分のデスクは無いんですよね? 取り合えず、あっちの共用部のデスク使いましょう。今日は誰も使ってない筈だし」

「はい」


 空海の後を小鬼がぴょこぴょこと追う。空海は小柄な小鬼の為に、それなりの広さがあるオフィスを、なるべくゆっくりと移動した。

 フロアの奥の共用部は、案の定誰も使って居らず、空海は遠慮なくデスクのPCを立ち上げた。


「えーと、用紙は上質紙かマット紙が無難かな」

「会社名と部署、連絡先、肩書の他に何か書きますか?」

「フォントの希望はあります?」


 手際よく名刺の形式を決めていく空海の手が止まった。


「あの、済みません、小鬼……さん」


 PCの操作方法等をメモしていた小鬼も、手を止めた。


「『さん』付けはやめて下さい、先輩。呼び捨てで結構ですし、敬語もやめて下さい」

「あっそう? じゃあ、遠慮なく」


 とは言え、空海からすれば、いかに後輩であっても己より年嵩の相手を呼び捨てにすることには抵抗がある。少し迷って、結局「君」を付けることにした。


「小鬼君のフルネーム聞いてなかったんだけど」

「? 小鬼です」

「小鬼は通称か種族名でしょ? 姓と名を……」


 不思議そうな顔をしていた小鬼の眉が、次第に八の字になっていく。


「小鬼だと駄目でしょうか……?」

「駄目とかじゃなくて……今まで皆から何て呼ばれてたの?」


 小鬼の眉尻が増々下がる。


「千年以上、小鬼としか呼ばれてないです……」

(ええ? どんな状況? 家族も友達も居ないの? それにしたってだよ?)


 気まずくなった空気を払拭するように、空海は努めて明るい声で、


「取り合えず発注は後にして、下書きだけ作っておこっか、名前の所は仮名にしてさ。後で大黒天様と相談しよ。仮名の希望ある?」

「あ、じゃあ、『小鬼 踏まれ之介』でお願いします」


 明らかにほっとした様子の小鬼が、はきはきと答えた。


「…………うん。まあ、性癖はそれぞれだし……うん……」


 微妙な表情になった空海に気付いていないのか、小鬼は誇らしげに胸を張る。


「私、長らく多聞天様に踏んで頂いてまして、そのお陰でちょっと悟りを開けたんで、こちらを紹介して貰えることになったんです。ですから、初心を忘れない為にと思いまして」


 そういうことかと納得いった空海は、本人の希望通りの名をPCに入力してやった。小鬼も再びメモを取る作業に戻る。

 空海は名刺のテンプレート作成画面を保存すると、今度はセキュリティシステムを立ち上げた。簡単な操作説明と、報告書作成についての説明をざっと終えた空海は、小鬼を休憩スペースに誘った。

 空海は給湯器で白湯を二杯入れ、一つを小鬼に手渡した。


「小鬼君は、多聞天様の身内ってことか……って、あれ? 今朝多聞天様を見かけたけど、まだ小鬼を踏んでらっしゃったような……?」


 空海の疑問に、小鬼がもじもじと答えた。


「私の後輩を紹介したんです。お恥ずかしながら、やんちゃな後輩が多くて。私自身はここ十年程、多聞天様のお宅で、住み込みの付き人みたいなことをさせて頂いてました」

「あ、そうなんだ。へぇ、じゃあ小鬼君、若い頃はブイブイ言わせてたんだ。って言うか、後輩から名前呼ばれたりしてなかったの?」

「勘弁して下さい。正直、黒歴史です。名前は、まあ『センパイ』とか『そこの奴』とか、お互い適当に呼んでました。それより、空海先輩こそ、お若い頃は結構鳴らしてたって伺ってますよ」

「え、私なんて全然さ」

「でも、衆生救済の為に入定なんて、まさに命がけの覚悟の形じゃないですか」


 向けられた尊敬の眼差しに、空海は苦笑いした。


「言うて、即身仏って、国や時代によっては自殺だからね? 弟子達なんて、自殺幇助で捕まっちゃう」

「世知辛いですね……」


 小鬼に呟きに、空海は遠い目をした。


「その世知辛さを救おうと即身仏になったんだけどねぇ」


 なんとなくしんみりしてしまった空気を払拭するように、空海は明るい声を出した。


「それにしても、小鬼君は真面目だよね。一所懸命メモ取ったりしてさ。そういう所、イイね!」

「あ、ありがとうございます」


 小鬼が顔を赤らめた。


「いずれ優秀な仏弟子として、名を馳せることになるんじゃない? そしたら、ヘッドハンティングされるかもよー。他の教義、興味ある?」

「とんでもないです! ここで学ぶことが沢山ありますから」


 ぶんぶんと首を振る小鬼に、空海は微笑んだ。


「でも、もし本当にそうなったら、遠慮しなくていいんだからね。書類提出だけちゃんとしてくれれば、ウチ、副業OKだし。小鬼君が納得いくように、悟りを開くことが大事なんだからさ。ここだけの話、そういうの結構あるんだよ」

「そうなんですか」

「うん。私も声かけられたことあるよ。『地蔵警備』とか『スサノオセキュリティ』とか」


 小鬼が目を輝かせた。


「凄い、超大手じゃないですか。しかも、仏教業界だけじゃなくて神道からも声掛けられるなんて、やっぱりエリートなんですね。え、もしかして先輩、転職を考えてるんですか?」


 空海は笑って首を振った。


「ないない。ただ、この業界は広いようで狭いから、結局、皆顔見知りみたいになっちゃうってだけ」


 なるほどなぁと呟きつつ、些細な雑談もメモを取る小鬼を、空海は微笑まし気に見守る。小鬼が何か思いついたように、メモから顔を上げた。


「そう言えば、お地蔵様が警備会社をやってらっしゃるのって、何だか意外ですよね」

「え、そう?」


 小鬼は胸の前で両手を合わせ、うっとりした眼をした。


「いつも穏やかで、確か、賽の河原で子供達を救ったりなさってるんですよね? 大昔ですが、優しく諭していただいたことがあります。皆さん心が広くていらっしゃるけど、お地蔵様って特にほんわかした雰囲気じゃないですか」

「確かに。でも、お地蔵様、賽の神なんかも兼任してらっしゃるよ? 警備のプロフェッショナルじゃん」

「あ、そうか。でも、不思議ですよね。賽の神は神様ですもんね」

「うん、神道……っていうか、自治体の警備員っていうか。まあ、つまり」

「あ、ヘッドハンティング!」

「そういうこと。ね、結構あるって言ったじゃん? で、お地蔵様名義で、警備会社立ち上げたってワケ」


 小鬼は「お地蔵様名義かぁ……」と呟き、首を傾げた。恐らく、まだ日本の複雑な神仏事情に明るくないのだろう。一度に説明することは難しく、空海はウーンと唸った。


「そうだ、テレビは観たことある?」

「あ、はい。多聞天様がこれでも観とけって。『アン〇ンマン』とか『ドラ〇もん』とか」

「そんな児童向けアニメばっかチョイスされてたの!?」

「『笑〇』とか『サ〇エさん』も観てました」

「日曜の家族団欒じゃん」


 多聞天様の意外な過保護ぶりを知ってしまった空海は、微妙な顔になった。


「そっか……じゃあ、時代劇は観たことないか……」

「あ、観たことあります、ブ、ブルーレイ? っていうんでしょうか、『水戸〇門』、『遠山の〇さん』ですよね! 色々代替わりしても、やっぱり初代〇門様が至高っていうか。遠野英〇郎観ると、反射的に平身低頭しちゃいますよね。対して、〇さんは三代目の橋〇夫が……」


 小鬼が熱く語り出す。


「そこは二代目の中〇段四郎が……いや、役者については私も色々言いたいことがあるけど、それは後にしよう。兎に角、〇門様も〇さんも、市井での呼び名と実際の名は違えど本質は同じ、正義の心は変わらないじゃん? それと同じで、神様も仏様も、世を遍く照らす存在であることは変わりないっていうかさ」


 小鬼がうんうんと頷く。


「で、我が国は元々八百万の神々が御座したワケ。その後、ウチみたいな外資系の参入があって、吸収合併なんかを繰り返したんだ。そんな経緯もあって、この国では後発のウチなんかは、結構自由が利くのを売りにしてメンバー確保してったの」

「はー、成程。お恥ずかしい話ですが、私、この国に来た時には既に多聞天様に踏まれてましたんで、あまり詳しいことを知らないんです。こんなんじゃ駄目ですね。もしよろしければ、先輩のお時間が空く時に、色々教えて頂けないでしょうか?」

「イイよー。じゃあ、例えば、ウチの親会社だと……」

「空海君、くーうかーいくぅーん!」


 小鬼にレクチャーしようと口を開いた空海に被せる様に、オフィスの入り口から大黒天様の声が響いた。大黒天様は、周囲の視線に慌てて口を手で塞ぎ、きょろきょろと辺りを見回すと、休憩スペースで白湯を啜る空海に早足で近付いた。

 大黒天様は空海に顔を寄せ囁いた。


「今度、本社から視察が来ることになってたじゃない? その後の講演会の会場とかって、もう手配済みなんだよね?」

「ああ、はい。レンタルスペースとその後の食事会、宿泊施設も確保済みです。報告書は提出した筈ですけど……」


 大黒天様は遠い目で「ダヨネー」と呟いた。空海は嫌な予感を覚えつつ、努めて冷静に尋ねた。


「どうしたんですか?」

「人数増って、今から可能かな? 出来れば明日までに。経理の毘沙門天君に、早く見積もりくれって言われてて……」

「……へ? え、あ、具体的にはどれ位……」

「百尊」

「ふぁっ?」


 大黒天様は合掌し、頭を下げた。


「申し訳ない! さっき気が付いたんだけど、この前空海君に渡した資料さ、決定稿じゃなくて、人数とか最終調整前のやつだったんだ」


 昇天に昇天を重ねかけた空海が正気に戻った。


「分かりました。会場の収容人数に関しては、そもそも特大ホールしか空いてなかったんで、問題ないと思います。席次と食事の手配、宿泊施設、移動用瑞雲の方、調整してみます。最新の資料下さい」

「資料、これね。本当に御免!」


 大きな体を縮め、ぺこぺこと頭を下げる上司の姿に、空海は苦笑した。


「もー、今度奢って下さいよ。あ、カレー以外でお願いします。大黒様の奢り、いっつもカレーじゃないですか」

「奢る! なんでも奢っちゃう!」

「その言葉、忘れないで下さいよ。小鬼君にも手伝って貰おうかな。大黒天様、小鬼君にも奢りありですよね?」

「勿論。お酒でもなんでも、好きな物御馳走するよ」

「それじゃ、御馳走の為にも頑張ろっか」

「は、はい!」


 大黒天様はあからさまにほっとした顔で、再びせかせかとオフィスを出て行った。

 足早に去っていく上司を見送りながら、小鬼が訊ねた。


「あの、視察っていつあるんですか?」

「……一週間後」

「ふぁっ?」


 先程の空海と同じような声が小鬼の口から洩れた。何か言いた気な小鬼に、空海が首を振った。


「何とかしないといけないことは、何とかなるまで頑張る。これが会社という組織じゃよ……なんてね。まあ、誰だってミス位するし、今回はまだゆとりがある方だよ。視察なんて、前日にお偉いさんが突然決めることだってあるんだしさ」


 空海と小鬼は共用スペースに移動した。小鬼をPC前に座らせ、自分のデスクから必要な書類や必要データの入ったメモリを取って来ると、小鬼の隣のPCをカタカタといじり出した。


「ちょっと待ってて。結局何方がいらっしゃるのか、確認するから」

「はい」


 空海はPC画面と資料を交互に眺め、チェックを入れたりカタカタとキーボードを叩いたりしていたが、暫くすると顔を上げ、安堵の息を吐き、小鬼の前のPCにも同じ画面を出してやった。


「ふー、助かった。増えた人数のわりに、お偉いさんはそんなにメンツが変わってない……これなら何とかなるかもな。小鬼君は移動用瑞雲の会社に連絡してくれる? 瑞雲会社の連絡先はここ。私の名前で人数変更の依頼ですって言ってくれれば通じるから。瑞雲のグレードは……」


 必要台数が確保出来ない場合の更なる連絡先、返答期限、料金、その他、思いつく限りなるべく細かく小鬼に指示を出し、空海自身もあちこちに連絡を入れ始めた。小鬼は、初めての仕事に四苦八苦しつつ指示をこなし、時折、分からないことを空海に尋ねる。出来る限り簡潔に答えた空海は、また自分の仕事に戻る。それを繰り返し、いつの間にか、かなりの時間が過ぎていた。

 一段落つけた空海は、詰めていた息を吐き伸びをした。小鬼の進捗を確認すると、そちらも一段落ついたところだったので、揃って一息入れることにした。再び休憩スペースに移動し、空海は白湯を飲みながら小鬼を労った。


「お疲れ様。初日から盛り沢山で悪いね」

「とんでもないです。私を教えながらご自分の仕事もされてる先輩の方が、よっぽど大変です。足を引っ張らないように、もっと頑張りますので、ご指導よろしくお願いします」


 その真面目な様を、空海は微笑まし気に見詰めた。小鬼は白湯を啜り、ほっと息を吐いた。


「それにしても、この部署でもこういう業務があるんですね」

「まあ、私はこの中じゃ下っ端だし、色々やるよ。とは言っても、今回は特別かな。以前、ちょっとだけ総務と営業にいたから、その流れでお鉢が回って来たんだ。流石に、普段はもっと警備部っぽい仕事してるって」

「そうなんですね。勉強になるなぁ」


 空海は、小鬼と自分の空になった湯呑を洗い場の小豆洗いに渡すと、大きく伸びをした。


「さーて、そろそろあちこちから返答が来るかな。もうひと踏ん張りしようか」

「はい」


 彼等が共用スペースに戻ると、予想通りあちこちから返答が来ていた。次々とそれらの処理をしていく空海の顔が次第に曇る。再びあちこちに連絡を入れるが、その返答はどこも芳しくないようだ。青ざめた空海に、小鬼は恐る恐る声を掛けた。


「あの、先輩、どうされたんですか?」

「信じられない。瑞雲も食事も、宿泊施設ですら百尊分確保出来たんだよ? なのに、会場の座席だけ確保出来ない!」

「え……」


 事前に予約したホールは広間に舞台があるだけの簡素な造りで、座席は無いがかなりの広さがあり、予定から百尊増えたところで問題は無い。席が必要なら、ホール利用申し込み時に座席をレンタルするか、持ち込みかを選べ、空海はレンタル契約を済ませていた。そのレンタル座席の余りがないのだという。


「会場の他のホールで席の利用が埋まっちゃって、二十席しか確保出来なかった。他の座席のレンタル会社にあたってみたけど、よりにもよって、その日はどこも余りがないって。私も、これ以上伝手がない……ああもう、何で皆、その日に限って『鳥居マニアの集い』だの『一日中読経でショー』だの開催してんの!」


 小鬼は無言で、剃髪した頭を抱える空海を見詰めた。気まずく淀む空気に、小鬼が意を決した。


「あの、自分のアイデアなんですが、聞いていただけますか?」



 視察当日、講演会会場。

 最もステージ近くに用意された八十席は、席というには異様だった。神仏が腰かけているのは、「物」ではなく「者」だった。


「小鬼君のお陰で座席は確保出来たけど、どうなの、コレ」


 小さく呟いた空海の隣で、小鬼も小声で答えた。


「本当ですよね。アイツ等のような未熟者が、徳の高い神仏の椅子になれるなんて、中々ない機会ですよ。羨ましい、代わって欲しいです」

「あ、そこ? 小鬼君的には、引っかかるのそこなんだ?」


 神仏の尻の下では、小鬼の後輩の鬼達が座席の役を担っていた。

 あの日小鬼の提案した、自分の後輩を座席にする、というアイデアは、思いの外大黒天様にすんなりと受け入れられた。無論、実際に座ることになる尊い方々からも異論は出ず、寧ろ、よくあることだとばかりに自然に小鬼に腰を下ろす姿に、ああ、これも神仏の御威光を示す一つの方法なのだなと、空海を脱力……感服させた。


「先輩」


 小鬼が囁く。


「何?」

「私もいつか本社の偉い方に座って頂けるよう、徳を積みます」

「徳を積んだら、踏まれる必要ないんじゃ……」

「頑張ります」

「……ソウダネ、応援シテルヨ」


 後輩のやる気に水を差さない為に、空海はそう呟くと、そっと小鬼から視線を逸らした。

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